251 / 300
【完結】部屋とワセリンと鋏【甘め/鏡】
11*
しおりを挟む「は…っ、ぁ、…はふ、はぁ…ッ」
出してしまった今となっては、なんであんなに我慢してしまったのかよくわからない。荒い呼吸を落ち着けながら考える。
なんとなく、及川にイかされるのが、恥ずかしかったんだ。
ぼんやりとした思考のまま見上げると、嬉しそうに目を細めて俺を見下ろしている及川と目が合った。
「…気持ち良かったか?」
…良かったからイッたんだよ。
とは言えず、黙ったまま曖昧な表情で見返すと、ゆっくり顔が近づいて来て額にキスされた。それから頬、鼻先と続いて、最後に唇。
そのままちゅ、ちゅ、と柔らかく吸われて、啄むみたいな優しいキスに力が抜けていく。
こいつ、こんなこと興味ありませんみたいなシレッとした顔してるくせに、こんな甘やかすみたいなことするんだな…。
意外な一面を知って惚けていると、いいだけ俺の唇を甘やかしていた及川が動いた。
身体を起こして見せつけるみたいに舌を出して、手の平をべろりと舐める。
一瞬何をしているのかわからなくて首を傾げると、一言「にがい」と呟いた。
にがい、にがいって何が…
「……っ!!」
何が苦いのか、思い至った瞬間、火が出るんじゃないかってくらい顔が熱くなった。
「おっ!お、おまっ!おまっ!な、なな、なめっ!舐め…!!」
「ななめ?」
絶対わかって言ってるだろ!
面白そうに口の端を上げてとぼけて見せる姿に余計に羞恥心を煽られて、視界の隅がかぁっと赤く染まったような気がした。
こいつ!舐めた!俺が出したやつ…!!
頭の隅で「へぇ~苦いんだぁ~」とか現実逃避している俺がいる。
い、意味がわからない!何で舐める必要があったんだ!しかもキスして甘やかしてちょっとクールダウンさせてから!絶対わざとだろ!
「…!……!!」
全力で文句を言ってやりたいのに、言葉が出てこない。
だって、睨みつける及川は意地悪気に笑っていて、明らかにこの状況を楽しんでる。ここで俺が何か言おうもんなら、確実に会話のデッドボールが返ってくる。
結果、俺は恥ずかしすぎて涙すら滲んできた目線で及川をじっとりと見上げることしかできず、果ては及川の視線すら恥ずかしくて背けた顔を手繰り寄せた枕に埋めた。
「…さいていだ」
かろうじて一言呟くと、及川は「可愛いな」と囁いてクスクス笑いながら俺の頭を撫でた。
その手が耳を擽って、首筋をするすると撫でおろして胸を這い、脇腹をするりと下ってズボンに掛けられる。
反対の手が背中側に回ってぐっと力強く腰を持ち上げたかと思うと、あれよという間に太ももの半ばまで一気に脱がされて、そのまますぽんと足を抜かれてしまう。なんて早業…。
上半身は胸の上まではだけられて、下半身はまるっと脱がされて、しかも及川が足の間に居るせいで閉じて隠すこともできない。
しかもそれを、枕に顔を埋めているせいで見れないけど、確実に及川が見下ろしている。
自分の姿を想像して、全身から冷や汗が噴き出した。
頭隠して尻隠さずってのはまさに今の俺の状況だ。
そんなことを考えてしまって、余計に熱くなった身体を持て余して腰を捩ると、及川の手がするりと俺の隠せていない尻を撫でてから抱えるように膝の上に腰を乗せた。いよいよ全部曝け出してしまうみたいな体勢に羞恥心が募る。
少し身体を折るように圧迫されて、ベッドボードに手を伸ばす気配がした。
自分でやっといてなんだけど、見えないのが怖い。
恐る恐る枕を少しずらして様子を伺うと、及川は白いボトルの青い蓋を開けて、指を突っ込んで中身を掬い出していた。
53
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる