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【完結】部屋とワセリンと鋏【甘め/鏡】
12*
しおりを挟む「なに…それ…」
見慣れないそれに不安が募って問いかけると、及川はボトルから半透明のクリームのようなものを指にとって俺に見せてきた。
「ワセリン。寝る前に塗っとくと手荒れ全然違うぞ」
へぇ。その手荒れのやつをお前は今からどこに塗るつもりなんだ。
半ば察して、改めて枕に顔を埋める。見てられない。
頭の上でくす、と笑う気配がして、開かれた膝の裏に手の平が差し込まれた。ぐっ、と押し開かれて腰が上がる。
それからすぐ、尻にぬるりと生暖かいぬめりを感じた。
「ぅ…」
何とも言えない違和感。
少し硬めの軟膏がぬるぬると縁に塗り広げられて、体温と馴染んで柔らかくなってきたそれを中に塗り込めるように及川の指が浅く出入りする。
っぷ、ちゅっ、と、吸い付くような濡れた音が断続的に漏れ聞こえるのが恥ずかしくて耳を塞ぐように一層強く枕に顔を埋めた。
少し入ってきては、くるりと一周掻き混ぜて、抜き去られる。
また新しいひと掬いを縁でぬるぬると温めて、緩んだぬめりを伴った指が中に入ってくる。
繰り返すごとに少しずつ少しずつ奥へと入り込んでくる指が中を擦る度に、ぞぞ…と言いようのない痺れが背筋を駆け上がった。
それは悪寒のように鳥肌が立つような感覚なのに、繰り返し繰り返し込み上げるのを感じている内に段々と快感に変わってくる。
「…っ、ぅ…ッ、んっ」
時折ぞくんっと強い痺れが走って、その時には腰が跳ねて甘い声が漏れた。
やがて、左程時間もかからないうちに及川の手の平が肌に触れる。1本とはいえ、すっかり根本まで中に入ってしまったらしい。
あの長い指が…全部入ってる…。
想像してしまうときゅぅ、と腹の奥が疼いて、それに合わせて締め付けるように中が蠕動した。
「はぅ…っ」
その動きで中にある指の存在感を一層感じて、ひくん、と性器が跳ねる。
いつの間にかすっかり勃起したそれは、鼓動に合わせて小さく跳ねながら及川の指を締め付けては先端からとろりとした透明な液体を零していた。
「はぁ…犬塚…。中、凄く熱い。ヒクヒクして締め付けてくる。…えろいな…」
熱っぽい囁きが耳に届いて羞恥心が込み上げる。
そんなこと言わなくていいんだよ…!!
枕に顔を埋めているせいで睨みつけることも文句を言うこともできない。せめてもの抗議のつもりで及川の腕をばしんと叩くと、その振動が腹に響いて思わず指を締め付けてしまった。
「んぅ…っ!」
ぞくんっと走り抜けるような快感に首筋まで痺れて膝が跳ねる。
墓穴を掘った俺の上でくすくすと笑い声を漏らしながら、及川が「お前馬鹿だろ」と楽し気に言うのが聞こえた。
うるさい。こんな状況で俺が冷静だったら困るのお前なくせに!
よくわからない文句を頭の中で言い募りながら腕に爪を立てると、及川はまだ笑みを含んだ声で「痛い」と零した。
支えていた膝を肩に預けて、自由になった手が爪を立てる俺の手を取る。
指先に唇が触れる感触がしたかと思うと、俺の羞恥心の砦になっていた枕がいきなり取り払われた。
「あっ」
「顔、見せろ」
眩しくて視界が眩んで顔はよく見えなかったけど、その意地悪気な声でどんな表情をしているのか、安易に想像できた。
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