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【完結】頭が痛いと言ってくれ!【閲覧注意/催眠】
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文字数と日程調整のため、本日は2話更新してます。
「…さて、散々怖がらせておいて難だけど、「やれることは全部やった」わけじゃなかったみたいだ」
通夜みたいになってしまった空気を気にする風でもなく、佐倉さんが切り出した。
「さっきも言った通り、本来は信頼関係が必須の治療だ。どういうものかは後で掻い摘んで説明するけどね。だけど君は私のことを何も知らないし、得体のしれない読心術を使う恐ろしい男だと認識してしまった。そこでだ」
そこで一度言葉を切って、ちらりと江國課長に目線をやる。
俺はというと、佐倉さんの言葉を何とか追いつつも、ショックから立ち直れずにいた。
朝の話だ。確かにあの時俺は…。
しかも、それを江國課長に知られてしまった。
ただでさえ心配かけているっていうのに、そんな面倒なこと考えてしまうような部下を、課長はどう思うだろう。
「あぁ、心配しなくても、清音が君に悪感情を向ける事はないよ。絶対にだ」
また俺の心を読んで、佐倉さんが軽い調子で言った。その後、「だってこの男は」と続いた言葉を江國課長が「涼介!」と強く遮る。初めて聞くその慌てたような声に驚いて思わず振り返れば、課長はちょっとバツが悪そうに目を逸らして、それから泣きそうな顔をして俺の目を見た。
「…すまない。そんなに辛かったのに、気付いてやれなくて」
心底申し訳ないというような沈んだ声に、こちらこそ、申し訳なさが込み上げてくる。なんて返したらいいのかわからなくて黙り込んでしまったせいで気まずい沈黙が降りた所で、佐倉さんが「ほらね」と何でもないことみたいに言った。
この人は、どこまでわかってるんだろう。
「少女漫画は帰ってからやってくれるかな。それで話を戻すんだけど」
江國課長の視線が気になりつつも、佐倉さんに向き直る。佐倉さんは涼し気に微笑んだ口元にほんの少し意地悪っぽい色を浮かべて課長を見てから、にこりと俺に笑いかけた。
「君は随分清音のことを信頼してるみたいだから、その信頼を今回だけ私に預けてくれないかな。君が信頼する「江國課長が紹介した私」に、少し気を許して欲しい。「今より酷くなることはない」くらいのつもりで、気楽に試してみない?」
「…さて、散々怖がらせておいて難だけど、「やれることは全部やった」わけじゃなかったみたいだ」
通夜みたいになってしまった空気を気にする風でもなく、佐倉さんが切り出した。
「さっきも言った通り、本来は信頼関係が必須の治療だ。どういうものかは後で掻い摘んで説明するけどね。だけど君は私のことを何も知らないし、得体のしれない読心術を使う恐ろしい男だと認識してしまった。そこでだ」
そこで一度言葉を切って、ちらりと江國課長に目線をやる。
俺はというと、佐倉さんの言葉を何とか追いつつも、ショックから立ち直れずにいた。
朝の話だ。確かにあの時俺は…。
しかも、それを江國課長に知られてしまった。
ただでさえ心配かけているっていうのに、そんな面倒なこと考えてしまうような部下を、課長はどう思うだろう。
「あぁ、心配しなくても、清音が君に悪感情を向ける事はないよ。絶対にだ」
また俺の心を読んで、佐倉さんが軽い調子で言った。その後、「だってこの男は」と続いた言葉を江國課長が「涼介!」と強く遮る。初めて聞くその慌てたような声に驚いて思わず振り返れば、課長はちょっとバツが悪そうに目を逸らして、それから泣きそうな顔をして俺の目を見た。
「…すまない。そんなに辛かったのに、気付いてやれなくて」
心底申し訳ないというような沈んだ声に、こちらこそ、申し訳なさが込み上げてくる。なんて返したらいいのかわからなくて黙り込んでしまったせいで気まずい沈黙が降りた所で、佐倉さんが「ほらね」と何でもないことみたいに言った。
この人は、どこまでわかってるんだろう。
「少女漫画は帰ってからやってくれるかな。それで話を戻すんだけど」
江國課長の視線が気になりつつも、佐倉さんに向き直る。佐倉さんは涼し気に微笑んだ口元にほんの少し意地悪っぽい色を浮かべて課長を見てから、にこりと俺に笑いかけた。
「君は随分清音のことを信頼してるみたいだから、その信頼を今回だけ私に預けてくれないかな。君が信頼する「江國課長が紹介した私」に、少し気を許して欲しい。「今より酷くなることはない」くらいのつもりで、気楽に試してみない?」
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