貴公子、淫獄に堕つ

桃山夜舟

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宵祭

淫紋※

 魔斗羅教の奉納祭は、宵祭よいまつり本祭ほんまつり裏祭うらまつりの順に行われ、本祭は三夜にわたって開かれるとのことだった。

 神事における神子のつとめといえば、神楽や祈祷、もしくは憑座よりましである。

 憑座とは、神や物の怪を下ろされ、その声を語る者のことだ。
 真霧まきりも何度か見たことがあるが、陰陽師が伴った巫女に下りることもあれば、その場にいた女房に思いがけず憑いたこともあった。

 なんの修練もなく神楽や祈祷はこなせない。
 よって、こたびの役目は憑座に違いない。
 女房に憑くくらいなので、真霧にもできないことはないだろうが、ともかくもぼろを出さないよう気をつけなければ。

 この時は、ただそう思っていた。




 祭祀の前に湯浴みを済ませるべく、信徒の案内に従って湯殿に向かった。
 岩風呂にはこんこんと湧き出る湯がたたえられており、思いがけず温泉いでゆに浸かることができた。
   
 湯浴みのあとに着せつけられたのは肌の透けるうすぎぬ単衣ひとえのみだった。
 このような薄物一枚では心もとなかったが、神子の装束ですので、と有無を言わせず着せられてしまった。
 単衣は特別に清めたもので、ほかは一切身につけてはならないと言われたため、髪は結わずに背に垂らしたままだ。


 日没を待って案内されたのはがらんとした広間だった。
 灯りは絞られていて仄暗い。
 四隅に置かれた香炉で香が焚かれており、嗅いだことのない甘い香りが室内に満ちている。

 中央には膝くらいの高さに畳を重ねたしとねがしつらえられ、その傍らに浪月ろうげつが立っていた。
 後方には信徒たちが控えている。
 十数人はいるだろうか。
 共に来た武者たちも後列にいるようだ。

「これより宵祭の儀を始める。神子はこちらへ」

 浪月が朗々とした声で宣言し、軽く手を挙げて真霧を招いた。
 進み出た真霧に、信徒の一人が酒を満たした酒杯を差し出す。
 きつい酒だった。
 どうにか飲み干すと、一気に酔いが回ってしまい、視界がくらりと揺れた。
 褥に横たわるように言われたのは、正直ありがたかった。
 
 浪月が何やらじゅを唱え始めた。
 聞いたことのない文言だった。
 祝詞とも、真言とも違う不思議な言葉だ。
 低く囁くように紡がれる浪月の声を聞いているうちに、頭がぼんやりとし始める。
 
(それにこの甘い匂い……)

 香炉から漂う香りが甘過ぎて、嗅いでいるだけで頭の芯が痺れてくる。

 呪を唱え終えた浪月が、真霧の下腹の上に手をかざした。
 刹那、下腹が焼かれたように熱くなった。
 きゅうっと腹の奥が収縮し、どくどくと脈打ち始める。

「あ……っ、な、に……っ?」

 頭を起こし、驚きに目を見張る。
 薄い衣を透かして、臍の下に薄桃色の紋様が浮かび上がっているのが見える。
 幾重にも花びらを重ねた大輪の花から翼が生えたような、不思議な紋様だった。

「これは……」
「これは神子のしるしだ。はじめからこれほどはっきりと浮かび上がるとはな。そなたはよき神子となりそうだ」

 それは憑座としての資質があるということなのだろうか。
 資質がないと言われるよりはいいのだろうが、己の体に得体の知れない模様が現れた恐ろしさが先立つ。
 
 うろたえていた真霧は気付くのが遅れた。
 いつの間にか、信徒達に取り囲まれていたことに。

「……っ、な、なにを……っ」
「これより神子であるそなたの身を通して、我らが神に悦楽を捧げる。そなたが快楽を得れば得るほど、神子の徴は色濃くなっていくであろう」

 何を言われているのか、咄嗟には理解できなかった。
 神子の役目は憑座ではなかったのか?
 快楽を得る?
 それはどういう意味なのか────

 混乱する真霧の体の上を信徒達の手が一斉に這い回り始めた。
 驚き、逃れようと身をよじるが、頭上にいた男に押さえつけられてしまう。
 男が耳元で囁く。

「こちらに来た目的をお忘れか。逃げてはなりませんぞ」

 二人の武者のうちの一人だった。
 こんなことになるとは聞いていない──そう言おうとした瞬間、胸の上でひさげが傾けられ、先程飲まされた酒が勢いよく注がれる。 
 甘い香りの酒が、薄い衣を透かして肌を濡らしていく。

「……はぁ……」
 
 全身が熱くなり始めた。
 息が上がり、意識が濁っていく。

 力の抜けた真霧の体を、男たちの手がまさぐる。
 しなやかに伸びた四肢や、敏感な脇腹、柔らかな腋下まで酒を塗り込むようにいくつもの手が撫で回す。

「あ……っ」

 濡れた衣の上から両の胸の尖りを弾かれた途端、鋭い快感が身の内を駆け抜けた。
 真霧の反応に気をよくしたのか、男たちは執拗にそこをいじり始める。

「く…っ、んんっ」

 指の腹で緩急をつけてくりくりと転がされると、びりびりと痺れるような快感が生まれ、体中に広がっていく。
 女のように膨らみがあるわけでもなく、普段は意識したこともない場所だ。
 こんなところが、どうしてこんなにも感じるのか。
 色事に不慣れな真霧にわかるはずもない。

「ああっ」

 じゅっと音を立てて、衣越しに左の胸を吸われた。
 紗の衣の上からざらりと舌で舐め上げられると、甘い愉悦が込み上げてくる。

「ん、く、んん、ふう……んんっ」

 別の男がもう片方の胸に顔を伏せ、同じように嬲り始めた。

「あぁ──っ、あぁん……、ん、んぅっ」

 両方を同時に責められては、もう声を殺すこともできない。
 いじられているのは胸なのに、下腹がきゅうきゅうと疼いて腰がゆらめく。
 さんざんに舐めしゃぶられたところで、襟元が大きく広げられた。
 たっぷりと吸われたそこは、左右とも赤くしこり、淫らに勃ち上がっていた。

「あっ、やぁっ」

 背後にいた信徒たちが前方の男たちを押し退け、剥き出しの左右の胸にむしゃぶりついた。

「ひ……んっ、だ、めぇ……っ」

 敏感に育った胸粒を直接舐め吸われ、嬌声を上げた。
 直に感じる熱い舌や唾液の温度に、ぞくぞくと背筋が震える。

「あ、んっ、ふぅ……、ん、あぁっ」

 舌先で突かれたかと思うと押し潰され、軽く噛まれてはきつく吸われ、甘い喘ぎが止まらない。
 胸から生まれた官能は全身を巡り、足の間に溜まっていく。
 真霧は無意識に膝を擦り合わせていた。
 すると、それに気付いた男達が、真霧の帯をほどき、衣を大きく開いた。

「っ!、や、やめ……っ」

 はっとして膝を合わせようとしたが、抑えられてしまった。
 おお、と、どよめきが男達の間で起こる。
 使い込まれていない、果実のような桃色のそれは、すでに形を変え、先端から蜜をこぼしていた。

 だが、男たちがどよめいたのはそれが理由ではなかった。

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