89 / 349
準備室
3
しおりを挟む「車の奴…化学の羽鳥だろ?あいつが葉をあんな風に縛ったり、体ん中にあんなもん入れた張本人か?」
「……威に関係ないよ…」
丁度鳴り出した着信の音に、わざとらしく威に背を向けて電話に出る。
『家にちゃんと入ったか?』
「今、入るところ…っ」
まだ自分を掴んでいる威の腕を力を込めて振り払うと、何か言おうとしている威を置いて玄関へと駆け込む。
「おぃ!葉っ!」
がしゃんっ…とけたたましい音を立てた玄関に、台所から慌てて母親が顔を覗かせる。
「どうしたの!?」
「ただいま、なんでもないよ」
そう返事をし、まだ通話中だった光彦に「家に入ったよ」と告げる。
『声が聞こえてだけど、何もなかったか?』
「うん…」
『……そうか』
携帯を切った葉人に、母が眉を寄せて近づいてきた。
「ねぇ、たけちゃんとケンカしたの?」
「え……どうして?」
「この土日、しょっちゅうたけちゃんが来たり、電話あったりしてたんだけど…」
困ったような顔でこちらを見る母に、葉人は指で少し…と示して見せた。
「ちょっとだけ」
「ほんとにちょっと?殴り合いしたんじゃない?」
母の指が、唇の端を指してるのに気づいてどきりとした。
「お…男だもん、そう言うときもあるよ」
「そう?」
「うん」
「たけちゃん、すごくおっきくなってたね、お母さんビックリしちゃった。小さい頃から空手とかしてたからかしらねぇ」
そう言い、納得したのか母は台所へ戻りかける。
「…風呂行ってくるよ」
そう声をかけて葉人は部屋へと入る。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
157
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる