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二人
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しおりを挟む無いよりはある方が良いに決まってはいる…いるだろうが男でも出るものなのかと、シャツを引っ張り隙間の空いた首元から中を覗く。
「……って、なんで先輩の為にオレが乳の心配をしなきゃいけないんだっ」
投げるように置いた雑誌は当たりの物を巻き込みながら床に散乱するゴミの上へと落ちた。それを視線で追うと、ふと落ちたゴミの中にあるオレンジの塊を見つけた。
ぞくりとする悪寒と、まだ捨てていなかったのかと言う微かな怒りが沸いてくる。
司郎がフェネクスの物だと言ったソレ。
オレンジ色の携帯を持っている人間が周りにいたかを思い出そうとしたが、大体が黒などでそれ以外思い出す事が出来ない。
何かフェネクスの正体に繋がるものはないかとそろりとへし折られた携帯電話を摘まみ上げ、裏を見たり表返したりする。
傷はあるものの何も持ち主を語らないその残骸を諦めてゴミ袋に戻そうとした時、ふと思い立った。
「………」
充電池の蓋を開け、その裏を見る。
「……………先輩…と……?」
劣化し、殆ど見えなくなったそのプリクラは、前面に乗り出すようにしている司郎はまだ顔が分かったが、その後ろにいる人物は落書きもあるせいかその顔を確認する事は出来なかった。
「…すごく…仲良さそうだけど……」
女同士ならいざ知らず、男同士でプリクラを撮るものなのか葉人には分からなかった。
再び途切れてしまったフェネクスへの道に肩を落として体を丸める。
尋ねたい。
あの画像を撮っていたフェネクスならば知っているはずだった。
「…絶対に許さない」
するりとその言葉が出た事に葉人は気付かなかった。
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