ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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まこと side

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「風邪? 寒い?」

 洸平はさっと自分のカーディガンを脱ぐと僕に被せてくる。

「僕が着ると先輩が寒いでしょ? 返します」
「風邪は万病の元だぞ?」

 カーディガンからも鼻がむずむずするような香水の匂いがして、落ち着かずに首を振った。
 藍我の匂い以外が傍にあるのって慣れなくて、できるなら脱いでしまいたいんだけど……でも、肌寒いって感じるのも確かだ。

「教室にジャケットも置いてあるし、いいよ。着てて」

 ボタンをはめられ、ぽんぽんと胸元を叩くように整えられると、いりませんって強く言えなくなってくる。
 これも先輩の思いやりなんだからって思ってそのまま教室へ向かった。

 先輩の服は大きくて手は袖から出ないくらいだから、なんだか服に食べられているような気分になってくる。

「お はよ」

 思わず言葉が尻すぼみになったのは、藍我の膝の上で桃路がジタバタと暴れているからだ。

「な、なに、やってんの⁉︎」
「あ! まこちゃん! ちょっと藍我にもういいって言ってよ!」

 ひぃん と泣き声で言われても、僕は二人の距離の近さに思考が停止してしまっててどうにもならない。

「もうちょっとで終わるって言ってるだろ」

 藍我は呆然としている僕に構わず、桃路を再び膝の上に引き戻して跳ねている後頭部の毛をいじり出す。
 ふわふわとした桃路の髪と格闘する藍我は僕の方を一切見なかった。

 僕は、藍我がそんな世話焼きだなんて知らない。

 僕の髪に寝癖がついてても「跳ねてる」って揶揄ってくるだけで直してくれたりはしない。
 ってか、それが友達の距離感だと思うしそれでいいって思ってた。

「もう! これ以上触らないで!」

 つんと言うと桃路は藍我を押し退けて僕にギュッとだ気ついてくる。

「昨日、鼻血大丈夫だった?」
「ぇ ぅん」

 桃路の指がちょいちょいと鼻先をかするとじんわりとした痛みが広がった。
 距離感のなさに流石に押し除けようとすると、ますますぎゅうぎゅうとしがみついてくるから困る!
 藍我に引っ付いてたから? 藍我と同じ香りがしてどきりと心臓が大きく跳ねた。

「あ! なんかいい匂いする! まこちゃんが使ってる香水?」

 桃路の腕の力は弱まらなくて、僕は蛇に締めつけられる獲物の気分だ。

「香水? まことはそんな洒落たもん使わねぇよ」

 ちょっとバカにしたような藍我の言葉に言い返したいけど、何も言えないのが現実だった。
 だって、ミルクの石鹸の香りが一番いいんだもん。

「このカーディガン、先輩から借りたものだから、それだよ」
「すっごく大きいもんね」

 桃路はカーディガンの袖を手に取るとぐぃーんと伸ばしながらふんふんと匂いを嗅ぐ。


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