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騙し騙して真実を
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しおりを挟むこうすればしゃがんでくれるんじゃないかって思っていたんだけどばっちりだったみたいだ。
「……あのさ、……その、先日のこと、なんだけど」
「うん?」
ギラギラとした赤い瞳孔にぼくは心当たりがあった。
この世の中には「ケーキ」と「フォーク」と呼ばれる人たちがいて、この赤い瞳孔は「フォーク」の特徴だ。「ケーキ」に対して興奮した時に、こうして「フォーク」の瞳は赤く光を反射するようになるんだよね。
「フォーク」は味覚を感じることができない人、フォーク症候群とかって呼ばれたりもして、原因はさまざま。
症状としては味覚を一切感じなくなることで、先天性の人は極々わずかで、ほとんどが原因不明の後天性だ。
そんな「フォーク」だけど、唯一感じることのできるものがあって、それが「ケーキ」って呼ばれる人の体。
すべての「ケーキ」がすべての「フォーク」にとって甘く感じるかってわけじゃないらしいんだけど……
かつては「フォーク」が「ケーキ」の人を襲って興奮している時の姿を見て、吸血鬼だって騒がれたらしいんだけど、播磨谷のこの赤い瞳を見ていたらなるほどって思えてきた。
目の前の播磨谷は百パーセント「フォーク」で、ぼくの血で興奮したって言うことはぼくは「ケーキ」だと言うことだ。
つまり……播磨谷はぼくを食べたがっているって意味だね。
海外では「フォーク」が「ケーキ」を食べた凶悪事件が起こったりしている。
だから「フォーク」の扱われ方は……あまりよくない。
「播磨谷、フォーク だよね?」
ぼくの言葉に真っ青になった播磨谷は言い訳を考えてかおろおろと辺りを見回し、けれどぼくが真剣な表情を作っているのを見て観念したのかぐっと唇を引き結んで頷いた。
やっぱり突きたくなるつむじが見えて、今度は誘惑に負けてつんと突いてしまう。
「怖がらせた上に、こんなことを頼むのは虫がいいって言うのはよくわかっているんだ! でも、カレー仲間として、できればこのことは黙っていてもらえな 」
「いいよ」
ぺろっと言った言葉に播磨谷はさっと眉間に皺を寄せた。
言いふらさないよって答えたのにどうして睨まれてしまうの……
「大丈夫だよ! ぼくフォークに理解あるから!」
慌てて言葉を続けたのに、播磨谷はどんどん顔色をどす黒くさせて、目も座っていって……めっちゃ怒っているって顔つきになってきている。
「なに? なんで怒ってるの?」
「ふざけんなよ! 何が理解してるだ! モグラの存在を知ってるからって、モグラのことに詳しくないように。フォーク症候群って言葉だけ知って理解してる気になんじゃねぇよ!」
そう播磨谷の怒声が響いた。
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