僕のおじさんは☓☓でした

林 業

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レンは朝ご飯の匂いに釣られて起きる。
寝ぼけ眼で洗面所へと向かい、支度を整えていれば、キョウヘイが顔を出す。

「あ、おはようございます」

しばし静かな時間が流れる。

「お、おはよう。昨日、悪かった。中学生なのに頭なでたりして」
「大丈夫です」
正直久々に抱きしめられたのは正直恥ずかしさもあったが、懐かしさもあった。

「おーい。お前ら。片付かねぇからさっさと飯食ってくれ」

台所から声がして、返事を返して向かう。

ご飯を囲って早速食べる。
「ねぇねぇ。おじさん」
「んー」
「酔っ払いって飲んでたときのこと忘れるもんじゃないの」
「あぁ。覚えてるんだよ。飲まないようにしているけど酒自体は好きだからなぁ。キョーヘイ」
「ふぅん」
ちらりと振り返ればキョウヘイが不機嫌そうに見ている。


「おじさん。そんな観音寺さんも好きなんでしょ?」
「おうよ。可愛いよなぁ。普段のツンからのデレが所謂ギャップ萌えというか」
「男の人に可愛いって使っていいの?」
「レンは嫌か?」
「ちょっとね」
「そっか」
微笑む姿に何だろうと首を捻る。

ご飯を食べ終わり、
「行ってきまーす」
レンは笑顔で告げて出ていく。





レンは急ぎ家へと帰る。
誰にも見られないよう注意しながら、部屋へと急ぐ。
こっそり、迅速に。
部屋の襖に手をかける。
「おかえり。レン。早かったな」
声にビクつき、固まる

「う、うん。体調悪くて」
「そっか。じゃあ、なんかおかゆとか作ろうか?」
「へ、平気。食欲なくて。おじさん。お仕事平気なの?」
「今日休みなんだよ」
「そ、そっか。じゃあ僕休むから」
襖を開けて中へと入る。


鞄を置いて、ベッドに飛び込む。
ぐすぐすと鼻をすすり、声をこらえて涙を流す。
「れーん」
声に思わず口を覆う。
「食欲なくてもゼリーとか置いとくからな。食えよ」
「う、うん」
声を無理に返答を返す。
「後夕方前には一度出かけるから準備しとけよ」

無理だと毛布を被れば眠気が襲ってくる。



ドアが開く音に飛び起きる。
「さ、でかけるぞ」
満面の笑顔で帽子を被され、引きずるように連れていかれる。

来たのは病院。
「ちょっと見てもらっていい?」
「転んだんですか?」
「さぁ。レン。お話したくないらしいから言いたくなったらいいな。あ、でも診断書ほしいんでーす」
軽く受付嬢に告げるソウスケ。
「一緒に行く?それとも先生に一人で事情とか原因とかお話する?」
「一緒に来てくれる?」
「んっ」
満面の笑顔に、帽子で顔を隠す。



「あー、つまり、学校の、誰だっけ?さっとくん?に口で喧嘩売ってこられて反論したら暴力行為を受けた。と」
ぐずりと鼻を鳴らしながら頷く。
「先生と話しても僕が悪い言うし。だから学校早退してきた」
「やり返したのか?」
「一発だけ。顔、殴られて痛かったから頬殴ったら、倍になって返ってきた」
「ありゃま。殴るなら顔じゃなくて服が見えないところが」
「何教えとるんだ」
医者からの静止に、すんませんと頭を下げる。

「後は我慢したのか?一応確認するが殴ったのは一発。嘘じゃないな」
「うん。殴ってから、おじさん暴力だめって言ってたから」
こくりと頷く。
「目撃者はクラスメイトだけか?」
「うん。でも、佐藤君だから仕方がないって」
「佐藤君ねぇ。あぁ。もんぺ母か。面倒なんだよな」
「ごめんなさい」
「んー?悪口言われて怒らない子供がいるもんか。よっぽど感情制御が上手なんだよ。よしよし」
頭を撫でられ、必死に涙を拭う。
「できる限り本人同士で対処させたいんだけどなぁ。大人が出張ってくるなら俺も対応させてもらうとして。とりあえず、診断書もらって、帰るか。今後の対策練ろう。口の中切ってないそうけど、晩御飯はうどんとか消化にいいのにしとくか」
「うん。でも何?しんだん?」
「大人が出てきたときのためにあると便利なんだよ」
「ふぅん?」
「被害届は、お前も殴ったし、とりあえず相手待ちだな」
「謝りにいかないの?」
「謝ってもいいけど、学校側からの連絡ないしなぁ。学校の電話があってから考える」
「そっか」
病院を出てから会話を続ける。
「ちなみにどんな悪口だったんだ」
「ん。両親に捨てられたんだとか。おじさん。男同士で住んでてキモいとか。まともじゃないとか」
「ぐふっ」
「なんかごめん」
「いいんだ。ただ、レンに言われると、ちょっと思い出したくないこと思い出した。とりあえず言われたこと全部ノートに書き出しな。大体どれぐらいの時間に言われたとかな」
「うん。でもなんで?」
「こういうときは記憶が新しいうちにノートに書き留めとくといいぞ」
「なんで?」
「後で第三者が調べるとき楽なんだよ」
「ふぅん?」
よくわかっていないのか首を捻る。
窓の外を見たソウスケが窓を開けて声を出す。
「あ、きょーへい。乗ってくか?」
「乗る」
即答して乗り込んでくる。


「なんかあった?」
レンを見て覗き込んでくる。
「いろいろ」
「学校行きたくないなら俺の畑手伝ってくれ。時期的に雑草処理が大変なんだ」
「う、うん」
「学生ならまず勉強だろう」
「実習という名の勉強だ」
「だったらレポート書かせろ」
「真面目すぎ。な。レン君」
苦笑いを浮かべつつ二人を見る。

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