ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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第一章 はじまり

契約の儀

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 あれから四年。リッカは八つになり、契約の儀を迎えることとなった。両親もこの日を心待ちにしてくれていたのか朝からおめでとうの言葉と共にそわそわとしている。落ち着きがないとはまさにこのことである。
 リッカと言えば、白虎たちのことをいつ、どう伝えるかということで頭がいっぱいだった。

 「父様、母様、ありがとうございます。」
 「いーえ。リッカもこれで八歳、これからもっと大変になるだろうけど、頑張ってね。」
 「リッカは我がトウドウ家の誇りだ。今日の儀も楽しみにしている。」

 父と母にそう言われるが、曖昧な返事を返すことしかできない。なんといってもリッカは予め用意されている魔獣とではなく、神獣たちと契約を交わすのだから。
 ちらりと部屋の外を窓から覗き見れば、不安そうにこちらを見つめている四匹が目に入る。それを視線で制すと、リッカは心を決めたように小さく息をついた。今、言わなければ……

 「……契約の儀のことなんですが、」
 「どうした?何か問題でもあるのか?」
 「いえ、父様と母様、そして領主様に折り入ってお願いが。」
 「願い、とは?ここでは話せぬのか?リッカよ。」
 「はい。申し訳ありませんが、領主様も父様も母様も、僕にお付き合いお願いいたします。」

 そう告げたリッカの眼は真剣そのもので、他人がどうこう言えるものでも無かった。わかった、と領主が頷きリッカの両親にも視線を送る。許可をしてくれ、と言っているのだ。リッカがこうやって突拍子もないことを言うのはいつものこと。両親もそれについては諦めているようで、苦笑いしながらリッカの提案に乗ってくれた。

 「裏庭に。お見せしたいものがあるんです。」
 「裏庭、と……そこには何があるんだ?」
 「今は言えません。それに、見てもらった方が早いかと思います。」
 「ふむ……リッカ、裏庭はお前のテリトリーである森があるだろう?何か儀と関係があるのか?」
 「父様、今は言えません。」
 「セイイチさん、今はリッカに任せましょう?」

 母のフォローも受け、リッカ達四人は裏庭に到着した。合図をするまで出てきてはだめだと言っていたので、すでに白虎たちは隠れていてこちらからは見えない。

 「ここが、リッカのテリトリー……」
 「私たちもあまり足を踏み入れないんですけれど、まさかこうなっていたなんて……」
 「好きにしていいとは言ったがここまでとは、」

 裏庭、とは言えトウドウ家の裏庭はセイイチが言ったように森がありその森を裏庭としてトウドウ家が管理しているのだ。三年前、五歳の誕生日の時にリッカはこの森を強請った。両親もリッカのお願いが珍しく、すんなりと許可を出してくれたのだ。それ以来、神獣たちに手伝ってもらいながら小さな小屋を作り、道を整備し、草をむしったりしていたのだ。ちなみに、リッカが家の中にいる間、神獣たちは小さくなって小屋の中にいる。
 
 「道を作ったのはつい最近です。必要だと思ったので。」
 「にしてもこれはすごいな……一人でやったのか?」
 「いいえ。僕のこの身体じゃ上手く作れないことは、父様が一番分かっているでしょう?」
 「確かにな……」

 何故か普通の子たちよりも成長が遅いリッカ。黄龍から髪を切らないように言われ余計に成長が遅くなったように思える。その理由を聞いたことはないが、言い伝えで神獣様の言うことは聞きなさいと言われているのだ。断る理由もない。八歳の平均身長は男児で約百三十センチ程。しかしリッカは百二十センチでも微妙なほどなのである。
 そんなリッカに、小屋を建てることができるとは思えないのだろう。

 「一人でないとしたら、いったい誰と……?リッカのお友達?でも私リッカがお友達といるところ、見たことがないのだけれど……」
 「友達……ではありません。もっと近しい存在です。今から呼びますが、大きな声は出さないようにお願いしますね。」
 「わ、分かった。」
 「大きな声を出してしまうかもしれないようなものが出てくるのか……?」

 ぼそり、と呟かれた領主の言葉をリッカは聞かなかったことにして、小屋の方を見た。おそらく小屋の中にいるはずである。リッカは指笛を吹くと、いつも通りの音量で四匹を呼んだ。予想通り、というべきなのか、ドアからぴょこんと顔を覗かせ、ころころとしたぬいぐるみサイズの白虎たちが姿を現した。

 『まま、もういいの?』
 「ん、いいよ。お待たせ。」
 『かーさん遅い、待ちくたびれた……』
 「ごめんね、アオくん。あとで構ってあげるから。」
 『お母さん、この人たち?』
 「そう、僕の両親と領主様。」
 『びっくりしてるみたですね……まぁ、しょうがないと思いますけど……』
 
 出てきた白虎たちはわらわらとリッカに集まり、次々に言葉を交わす。他種族との会話もきるようになった彼らは何故かリッカのことを母と呼ぶようになった。最初は嫌がっていたリッカだったが、口足らずにママと言われてしまっては否定する気も起きなくなってしまった。
 黄龍からは笑われてしまったが、リッカとしては別にいいと思っている。が、いつかきっと矯正はするつもりでいる。
 あるていどもふもふとして振り返ると、両目を面白いほどに見開き唖然としている両親と領主が目に入った。あ、と思わず声を漏らす。

 「り、リッカ……その、獣たちは、まさか……」
 「うん。神獣の青龍、白虎、朱雀、玄武。こーちゃん……黄龍に任されたんです。」
 「黄龍様、だと!?いや、まさかとは思っていたが……」
 「じゃあリッカのお願いって、もしかして……」

 察しのいい母の言葉にうなずく。リッカのお願いは、今日の契約の儀でこの神獣四匹と契約させてもらうこと。とはいっても、これは黄龍の提案であり、神獣四匹も望んでいることなので、拒否権は無いに等しいのだが。

 「はい。今日の契約の儀は、この子達とさせてもらいたいと思って。」
 「しかし、神獣様と契約なんて聞いたことないぞ……」
 「それに、神獣様と契約したら、嫌でも目立ってしまうぞ?リッカは目立つことが嫌いだろう?」
 「いえ、そのために黄龍がこの子達に姿を小さくする術を教え込ませてくれたので。」
 「なるほど、今の姿は偽りの姿、ということか……」

 今の白虎たちは、到底神獣に見えないほどかわいらしく、もふもふとしている。それでも領主や両親が見抜けたのは、ずばぬけた魔力感知能力に加え、神獣たちが身近な存在であり、その気配に慣れているからだろう。だからこそ、その言葉もあやふやではあるが理解もできている。おそらく、三人以外の者や、全く知らないものから見れば、ただの小さな獣に見えるはずだ。

 「だめ……ですか?」

 こてりと首を傾げたリッカに父も母も弱い。領主ですら、言葉に詰まっている。しかし、この提案は黄龍が発端だったもの。先にも言ったが、拒否権はあってないようなものなのだ。

 「……いいだろう。しかし、条件を付けさせてくれ。」
 「条件、ですか?」
 「契約の際に封印の呪も一緒に行うこと、それが条件だ。」
 「封印の呪……」
 「いくら神獣様とはいえ、何もせずに人間の従魔にすることはできない。それに力も強大だ。制限をかけたいわけではないが、許してくれ。神獣様だから気づかれたときにパニックになる恐れがある。絶対にバレてはいけないという訳では無いが、文句をつけてくる者も多いだろうしな。それに、封印をかけることで常時魔力を使いながら姿を偽る必要もなくなる。」
 「それは……」

 仮にも相手は神獣。そんなことが許されるのかと思ったリッカだったが、それは突如現れた存在によって、解決することになった。黄龍である。しかも黄龍は本来の大きい姿で現れたのだ。驚かないはずがない。
 黄龍は地面に着地すると、リッカの顔に自身の顔を寄せ、頬擦りした。

 『よい、よい。封印の呪など、障害にはならぬ。こやつらをリッカと共に行かせることの方が大事さ。』
 「黄龍様!!??」
 「あらあら……大きいわねぇ……」
 「そういう問題じゃないだろう!?サクラは暢気すぎる!」
 『いつもリッカには世話になっておる。私からも、よろしくたのむよ。』

 まるで何もかもが黄龍の思いのままになっているようで、リッカは思わず遠くを見た。目の前では黄龍の言葉にうなずく領主がいる。ひとまず、許可が出たことにほっとしながら、リッカは腕の中の白虎たちを撫でた。
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