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素質
結末
しおりを挟む「な、なんなんだ、その魔獣は!」
「何って言われても、シロくんはシロくんだし。」
「白虎、とか言っていただろう!?それは魔獣ではなく神獣だ!」
気絶してしまった狼に気を使いながらもリッカへと言葉を投げかける。タイチが黄龍以外の神獣を知っていたことにも驚いたが、一番はその神獣を見ても恐れていないところにも驚いた。普通は神獣と聞いて尻込みするだろうに、予想外である。現に、広場周りで見ていた市民たちは白虎に驚いて腰が引けているようにも見えるのだ。
「……怖くないの?」
「神獣か?……正直、単体で出会えば分からないが、今はお前が契約しているんだろ?だったら怖くない。」
「卑怯、とか言わないんだ?」
「何が?さんざん馬鹿にした俺が今更卑怯だなんだなんて言ったら、それこそかっこ悪いだろ……」
呆れたように言うタイチだが、その表情にもう蔑みは含まれていない。馬鹿にはするし、相手を下には見るし、想定でものは語るし、リッカはどう考えてもタイチのことは好きになれない、と思っていたが実はそうではないのかもしれない。リッカの後ろに控えている白虎を見る目は、どう考えてもかっこいいものを見る男の子で、年相応に見える。
「……僕、君のこと誤解してたみたい。」
「……俺もだ。今まで、ごめん。」
「僕もごめんね、きつく言ったし。」
「いや、しょうがない。俺も、調子に乗っていた。」
えらく殊勝な態度で言うタイチはこれまでと全然違う人物のように思える。断然こちらの方が好ましいものだ。彼はおそらくただ素直なだけなのだ。何がどうなってああ捻くれてしまったのかは分からないが、間違いは認められるので根は真面目なのだろう。だからこそ、余計にあの態度がどこから来てしまったのか、気になるけど。
グルグルと喉を鳴らしている白虎の頭を撫でながら、リッカは考える。
「あの小虎が白虎だったってことは、他の奴らも神獣なのか?」
「ん?うん、まあそうだね。龍種のトカゲがアオくん、青龍で甲羅を持ってるのがゲンくん、玄武。この子がすーちゃんで、朱雀ね。」
「からかうのはやめてくれ、悪かったよ……」
「からかってないよ。その方が分かりやすいかなって。」
「はぁ……えっと、悪かったな、神獣たちも。」
首の後ろを恥ずかし気に掻きながら小さく頭を下げるタイチに、拍子抜けしたように神獣たちは優しく鳴いた。まさか自分たちにまで頭を下げるとは思わなかったのだ。以前の高圧的な態度を見ているから余計にその思いが強かった。案外子供らしい姿に張る意地もなくその場は取りあえず収めたというわけだ。別に全てを許したわけではない。
その様子を見ていたヒイラギは、安心したように笑った。
「勝者、リッカ!」
ヒイラギの宣言に、まだ白虎に対して驚いて怖がっているものもいるが、誰もがその結果に湧き上がった。が、しかしその結果に納得していないものもいるのだ。
意義あり、と大きな声でヒイラギの元に詰め寄り、リッカの後ろに控えている白虎を指さした。
「父さん……」
そう、サイガだった。自分の息子が負けるはずがないと、あんな小さい魔獣にやられるはずがないと、ヒイラギに訴えているのだ。ちらりと見たタイチは呆れたように額を片手で抑え、肩を落としているし、何故タイチがあのような高慢になってしまったのか、少し理解できた気がした。
「だいたい、あの魔獣こそ卑怯なのだ!まるで変化したようにも見えたがあれは白煙と同時に別の魔獣を用意したのだろう!?あんな大物とトウドウの子供が契約できるわけがないからな!」
「まだ言うか、サイガよ……」
「領主様!貴殿があの無能に力添えをしたのではないですか!?あのような大物は我らアズマ家にこそふさわしい!トウドウなんぞに与えてはなりませぬ!」
形容しがたい剣幕で訴えるサイガはある意味滑稽にも見えるが、市民たちは面白がって止めるそぶりも見せない。ヒイラギはどうにか抑えようと声をかけるが、聞く耳を持っていないようで次から次へと罵詈雑言が溢れる。耐えきれないとセイイチが広場中央に駆け付けようとするのを手で制し、リッカはまだ気絶しているウルフへ試験管に入っている薬品を与えた。きょとんとしているタイチに気付け薬だということを告げ、もうすぐ目覚めることを教えるとリッカはまだ喚ているサイガを視界に入れる。
「悪いな、リッカ……俺の父さんが、」
「謝らないで、タイチは悪くないでしょ?ちょっと話をつけてくるね。」
「ああ、ありがとう……」
『ま、この子はあの傲慢さに引っ張られていただけですからね。お母様、私が出ましょうか?』
「いや、僕がやるからいいよ。すーちゃんは手を出してこないかだけ見てて。」
サイガの訴えはついにリッカが契約した神獣たちにまで飛び火し、これ以上はリッカも黙っていられないと解札を破り、白虎をもとの小さな姿に戻すと四匹を連れてヒイラギたちのもとへ近づいた。
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