ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

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リッカとタイチ

三年と半年後

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 あの模擬戦闘から三年と半年後、リッカとタイチは朝早くにフィラノの街の検問所前にいた。もちろん、この街を出てロアのアカデミーの入学試験を受けるためである。検問所前にはリッカとタイチの両親とヒイラギが見送りに来ているのだ。見送り組と向かい合っている二人の後ろには第二進化して天狼シリウスになったタイチの魔獣がいい子にお座りしている。神獣たちはその天狼シリウスの足元で前足にジャレついているのだが、天狼シリウスは嬉しそうに鼻を近づけて嬉しそうにしていた。

 「まさか本当に天狼シリウスにまでなるとはな……」
 「俺もリッカに言われたときはまさかと思っていたんですけど、現に天狼シリウスになっていますからね……」
 「兆候はあったからね。じゃ、父様母様、スミレさんもサイガさんも領主様も、行ってきますね。」
 「ああ、行っておいで。しっかり結果を残してくるんだよ。」
 「……行ってきます。ウル、頼んだぞ。」

 領主様からの言葉を受け取ったタイチは天狼シリウスへと声をかけた。リッカも続いて神獣たちを回収し、天狼シリウスの上に乗りこんでいる。余談だが、ウルフ大狼ハイウルフになる段階でタイチはウルフへ”ウル”という名をつけていた。リッカと一緒に過ごすようになって、ウルの存在が家族のようなものに変わったからだとタイチ自身感じているが、確かに名前がある方が親しみやすく家族のようであると思う。しかし名付けが安直なのはリッカと一緒というべきか、類は友を呼ぶというべきか……。

 「頑張ってこい、タイチ。」

 もんもんとしているところでウルに乗り込む前にタイチはサイガからそう言われた。予想もしていなかったサイガからの言葉にぽかんと、口を閉じれずにいると気恥ずかしかったのかサイガは耐えられないとばかりに頬を掻き、プイっとそっぽを向いた。そんな様子のサイガに見送り組のみんなが苦笑している。笑ってやらないでください……と心の中で思いつつも、タイチはサイガからの言葉に顔の緩みが収まらなかった。

 『タイチ、嬉しそう』
 『あら、それは言わないものですよ、白虎』
 『そうなの?』
 『人は、些細なことでも恥ずかしがってしまいますから。』
 「……そこ、こそこそ話し合わない。」

 白虎はここ三年の間に仮初の姿でいてもあまり知能が下がらなくなった。本来の姿でいるときはそうでもないのだが、封印の影響を受けて他の神獣たちも多少なりとも知能指数が下がる傾向にあったのだが、今では封印も身に馴染み、そこまで影響をうけなくなっている。が、リッカがどう頑張っても仮初の姿の時の神獣たちのお母さん呼びは治らなかった。もう諦めている。
 先のやり取りでわかったと思うのだが、リッカと長く一緒にいたタイチは黄龍とも会うことがあり、その流れで魔力感知能力を鍛えることができた。よって、タイチはすでに神獣たちとも言葉を交わせるレベルにまでなっているのだ。ここ三年のタイチの成長速度は半端じゃない。

 「やっぱり完全にもう理解できてるねー、よかったよかった。」
 「何がだよ。いや、言葉を理解できるのは嬉しくない訳でもないが……でも肝心のウルの言葉は雰囲気でしか分からないのがな……」
 「十分だよ十分。領主様もすごいって言ってたでしょ?」
 「けどリッカはウルの言葉も分かるんだろ?」
 「僕は積み重ねたものが違うから……そのうちタイチにもわかるようになるよ。」

 そう、何も成長したのはタイチだけではない。リッカもまた、魔力量の増加に伴い黄龍から指導を受け、ウルを含めた魔獣たちの言葉も理解できるようになっていたのだ。三年と半年前はタイチのように雰囲気でしか理解できなかったが。
 
 「ごめんねーウルくん、全部君に任せちゃって……」
 『大丈夫ですよ、俺は走るの好きですから。それよりリッカ様も落ちないように気を付けてくださいね。』
 「ん、ありがとう。シロくんたちの封印を移動のためだけに解けないからね……」
 『白虎様たちの魔力は今こそ抑えられていますが、封印がなければその存在を隠すことは難しいですからね。ほら、スピードを上げます。主様につかまってください。』
 「はーい。タイチ、スピード上げるって!ちょっと捕まらせてねー。」

 暢気にもそう言いながら前に座るタイチの服を掴むと、落ちないようにぎゅっと身を固めた。もちろん、タイチとリッカの間にはこれまた落ちないようにそこかしこにつかまっている神獣たちがいるのだが、今はそれは置いておく。
 ヤマトからロアは普通の馬車で丸5日はかかる。休憩を高頻度で入れれば山道も通ることになるので、1週間と数日は見積もることになるだろう。しかしウルには段差も傾斜も関係ない。このペースで行けば今日の夕方にはたどり着ける。何せ天狼シリウスになったウルの大きさは簡単に言えば座ってもタイチ二人分ほどはある。今のタイチの身長は百六十五センチであるから、座っても三メートル弱はあるということだ。白虎はそれよりも大きいが、今適切なのはウルの方である。
 そして、ウルも白虎たちのように身の大きさを自在に操れるように黄龍に指導してもらったため、どこにでも連れて行けるようになっていた。

 「なぁ、筆記はともかく実技はどういうのがあると思う?」
 「その年ごとに違うんでしょ?それに学科ごとにも違うみたいだし……っていっても僕らみたいにすでに契約が済んでいる人なんてあんまりいないと思うんだけど……どうするんだろ?」
 『ものによっては俺の出番もないってことだろ!?それはやだなー』
 「あったとしてもここ数年でアオくんの攻撃威力増してるんだから出番はないよ。いざというときに取っておいてね。」
 『えー!うー……今度こそ、俺の出番……』
 「アオくんは強いから、他の子たちに過剰なダメージを与えちゃうかもでしょ?力があるからこそ、時には我慢も必要なんだよ。」
 『俺が、強い……そっか、そうだな!我慢するよー。』

 単純というべきか、短絡的思考に朱雀も玄武も苦笑いをするしかなかった。白虎に至っては興味もなさそうである。何事にも興味を持っていそうな白虎だが、実は一番冷めていたりもするのだ。白虎の興味はいつも母親と慕うリッカだけである。

 「とりあえず、考えるのはその時で大丈夫だよ。タイチの知識量ならどうとでも対処できるからね。」
 「……脈絡もなくそういうことを言うのはやめろ。」
 「どういうこと?」
 「普段はそんなに褒めないくせに、気まぐれで褒めるところだよ!」

 怒っているのか照れているのか分からないトーンでそう言ったタイチにリッカはははっと声を上げて笑った。実に愉快である。


 

 
 
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