ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

文字の大きさ
32 / 91
リッカとタイチ

合否発表

しおりを挟む
 ノアたちが立ち去った後、リッカ達も時間になったためサクラの大樹の元を後にした。ぬしはリッカ達(主にリッカ)を快く送り出し絶対にまた会いに来ることを約束した。その後で筆記試験を受けた教室まで戻ってくると、すでに多くの受験生たちが戻ってきていた。
 
 「ありゃ、遅れた?」
 「いや、試験官の先生はまだみたいだから大丈夫だろ。」
 「そっか、じゃあいっか。」

 ここに移動するまでに考えていたことを消化できたのだろう、リッカはどこかすっきりした表情をしていた。今でも神獣たちに対してにこにこと微笑んでいるし、彼自身今どうこうできる問題でもないと見切りをつけたのだ。余計なことは考えないのがリッカの信条である。ノアのことが余計だとは思っていないが。
 リッカとタイチで今後のことを話し合っているうちに大きな広用紙を丸めたものを持った試験官の教師、筆記を見ていた先生が教室に入ってきた。

 「これより、合格者の張り出しを行います。」

 その空間が緊張で包まれたのをリッカは感じた。タイチからはそう感じないが、前後にいる受験生たちは手を合わせて祈りのポーズを取っている者もいた。
 前のブラックボードに《接着グルーイング》で広用紙をくっつけ、試験官の教師が名前を読み上げていく。名前を呼ばれ喜ぶものもいれば、いつ呼ばれるのか分からないという風に不安がっている者もいる。そんな中でリッカとタイチは残りの定員人数二人と言うところまで残ってしまっていた。

 「……呼ばれない。」
 「なんでだろ?まああと二枠あるし大丈夫だよ。」
 「暢気だなぁ、リッカは……。」
 「心配してもしょうがないでしょ?試験は終わってるんだし。」

 しかし、その二枠も別人の名前が呼ばれ試験官の先生は一息ついてしまった。
 あわや不合格、そうタイチが気を落としそうになった時、リッカが何かに気づき片眉を上げた。

 「あの広用紙に僕らの名前あるけど……。」
 「は?じゃあなんで呼ばれないんだ?」
 「さあ……なんかあるんじゃない?」

 そうリッカの予想した通り、試験官の教師はぐるりと教室内を見渡しリッカとタイチを見つけると、ちょいちょいと手招きで教室の前方に呼びつけた。何かがあるらしい。
 他の受験生たちもリッカとタイチの実力は実技で見て分かっているため、何故合格していないのか不思議でならなかったのだ。いつものように神獣たちを自分の定位置に乗せたリッカはタイチの動揺をもろともせずにさっさと前の方へ出てしまった。

 「リッカ・トウドウくんとタイチ・アズマくんですね?」
 「はい。……僕ら、名前載ってるみたいですけど何かあったんですか?」
 「それがですね……君たちの成績が規格外すぎて、改めて特待生としてアカデミーに入学してもらうことになりそうなんです。」
 「規格外って……そんな変な成績出したつもりないですけど。」
 「変というか、十二歳でその知識量は普通じゃないんですよ?他の先生方とも話し合った結果なんですけど、君たちを普通に入学させて授業を受けてもらうより、特待生コースを受けてもらった方が、君たちにとっても有意義だと思いまして。」
 「……そういうことですか。」

 確かに普通に入学してくる十二、十三歳の子はほとんど基礎知識のみで入学してくる。そんな中にリッカとタイチのようなすでに応用知識まで身に着けた生徒が入ってしまえばその成績に差が出てしまい授業の進行度にも差支えが出てくる。何より、二度も基礎を学ばなければいけなくなるリッカとタイチは時間の無駄でしかないと言えるだろう。

 「つきましては、君たち二人は事務室ではなく学長室に行ってもらいたいのです。私も詳しくは知らないのでお答えすることはできませんが、なんでもアカデミー長がお二人と顔を合わせたいと。」
 「だから僕らだけ別に……?」
 「ええ。それに、通常の合格枠ではなく特別枠としてお二人は合格していますからね。」
 「なるほど、納得しました。詳しくはアカデミー長に聞けということですね?」
 「はい。その方が、より納得した答えが得られるかと。」

 にこやかに返してきた試験官の教師にリッカも苦笑いをしながら相槌を返した。そんなリッカの様子を見て試験官の教師も頷き返すと、彼女はその場にいた受験生たちに向けて声を発した。

 「それでは、不合格になった方はこの後私の元へ、合格した方は事務室へ向かってください。事務室へは私の従魔が案内します。学長室は事務室の横にあるので、行けば分かりますからね。」

 そこまで言って、彼女は一度手を打ち解散の言葉を口にした。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転生美女は元おばあちゃん!同じ世界の愛し子に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!《『転生初日に~』スピンオフ》

ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。 私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。 そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。 早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯ 私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。 『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』 そのために私は⋯ 『地上に降りて冒険者になる!』 これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯ ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の可愛いくまの編みぐるみ、おばあちゃんこと凛さんの、天界にいる本体が主人公! が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。 また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。 こちらも、よろしくお願いします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

処理中です...