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リッカとタイチ
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しおりを挟む「初めまして。ここクートベルアカデミーのアカデミー長をしているジル・クートと言う。よろしく頼む。」
リッカ達を出迎えてくれたのはニコリと微笑んでいる青年だった。アカデミー長にしては若い方ではないだろうか、前に一度だけ見かけたシークのアカデミー長はもっと年老いていたような気がする。応接室と思われるそこは広めの机を囲むように四つの一人座りのソファが置いてあった。
その内の二つをリッカとタイチは進められ、アカデミー長であるジルが相手と言う手前逆らうこともできずリッカ達は訝し気な顔をしながらも席に着くこととなった。
「……リッカ・トウドウです。」
「タイチ・アズマです。」
「ああ、存じている。いやあ……君たちの成績には驚かされた。……いったいどこでそんな知識を?」
「幼いころから本を嗜んでいたので。あとは、両親や先生の教えがよかったのもあるかと。」
リッカが両親、と口にした瞬間ジルは何かに気づいたようにハッとした。
「もしや君の父親はトウドウの麒麟児と呼ばれていたセイイチ・トウドウか!」
「……アカデミー長も父様を知っているんですね。」
「も、って……他に誰かいたのか?」
「カガチさんが知っているようでしたので……」
「ああ、彼らはシークのアカデミーでは有名なパーティだったからな、よく覚えている。うちのアカデミーも出し抜かれたものだ。」
「……アカデミー長はおいくつなんですか?」
まるで見ていたような、実際にその場で感じたような感想にリッカは思わず口に出した。見た目の年齢で考えるならそれはあり得ないこと。どう見てもジルはリッカの父であるセイイチよりも若く見えるのだ。不思議、というよりもどこか不気味であるジルをリッカは見つめた。
「……いくつに見える?」
「見た目と違うんでしょう?」
「そうだなあ……これを見るといい。すべてを察することができるだろう?」
「これ……?」
黙りこくっているタイチと共にジルが指している場所―耳―を見ると、その形は通常の人族の耳の形ではなく、長い耳がそこにあった。そう、まるでエルフのような――――。
「……森人族?」
「ああそうさ。森人族は長命……これでも二百年は生きているんだ。」
「に、にひゃく!?」
「驚くことかな?森人族は寿命では命を落とさない。だから、あり得ない話ではないよ。」
驚いたように声を上げるタイチへ今まで黙ってたノアが声をかけた。何を考えているか分からない瞳で見つめられタイチは居た堪れなくなりするりと視線を逸らす。その様子に気づいたリッカはノアにじっと視線を投げかけた。
「……もしかして、ノアさんも森人族なんですか?」
「……どうしてかな?」
「どう、とは?」
「どうしてそう思ったのかなって。」
「いや、なんとなくです。自分のことを言ってるみたいだったので。」
本当に何となくなのである。タイチに向かって森人族のことを言っている時、どことなく寂しそうな表情をしているような気がしたのだ。それに、森人族だとしたら人族には全く懐かないと言われている夜猫を従魔にできていても全く不思議ではない。そこも含めてリッカはその言葉を口にした。
「まあ、半分正解かな。」
「半分……?」
「僕は半森人族。森人族ではないんだ……森人族と人族の間に生まれた子供。聞いたことあるでしょ?」
「まあ知識程度に。実際に出会ったことはないですけど……。」
「……普通の反応だね。」
「普通じゃない反応なんてあるんですか?」
何でもないことのように言うリッカにノアは目をぱちくりとさせ、大きな声で笑った。そう、笑ったのだ。これにはさすがのリッカもぎょっとした顔になり、思わず膝にのせていた神獣たちをまとめた抱きしめて身を引いてしまった。大笑いなんてしないような者が急に大きな声で笑ったりしたら驚くものである。
「な、なに……?」
「いや、君はいい子だなと思って……。世の中には普通じゃない反応をする人間の方が多いというのに。」
『ままがいい子なのは当たり前でしょ!僕たちのままなんだから!』
「ふふっ……そうだね、魔獣だけでなく神聖なる獣にも好かれるんだもん。いい子じゃないわけないか。」
『まさか半森人族だとは思いませんでしたが、森人族の一族なら私たちが分かっても不思議ではありません。お母様、安心してください。お母様は鍛錬不足なんかではありませんよ。彼らにはどう頑張っても私たちの存在はバレてしまいます。』
「……どういうこと?」
ふん、と息をついた朱雀にリッカは首を傾げた。森人族の一族には神獣の存在が隠せないということがうまく理解に至っていないのだ。ぽかんとしている様子のリッカにノアは小さく笑うとその中の白虎の頭へ手を伸ばし、もふもふと撫で始めた。それを見ながらリッカは考え込み、ふととある書物の一節を思い出したのだ。
「森人族は神聖なる獣を崇拝している……」
「リッカくんに知らないことはないのかい?」
「ありますよ、たくさん。」
「そっか。話を戻すけどね、森人族は生まれながらに神聖なる獣を感知する能力に長けているんだ。どう隠されてもね。半森人族と言ってもそこはしっかり受け継いでいるんだよ。だからリッカくんの鍛錬不足なんかじゃないよ。」
「うっ……、なんでバレて……」
「だってさっきその子たちと話してたでしょ?それに、相当思い詰めてた顔してたから。それと、森人族は神聖なる獣を絶対に傷つけることができない。魂に刻まれているんだ……絶対に手を出してはいけないってね。だから僕がこの子達に手を出すことは絶対にないよ。」
だから安心して、と言わんばかりに神獣たちへ微笑みノアはすとんとソファへ腰を下ろした。どうやら満足したようである。リッカはそれを聞きふ、と息をついた。気が抜けてしまったのである。そしててそれと同時にどこかで停止させていた思考能力もいつものように戻ってきて途端に気づいてしまった。半森人族であるノアが神獣の存在に気づいたということは森人族であるジルも当然気づいているだろうということに。いや、そうやって気づかれてしまうことはもうしょうがないだろう。森人族には隠せないのだから。……問題は、そのキラキラしている目である。
「いやはや、この年になってこのように近くで神獣様を目にすることはなかったからな……ふぅむ、何とも美しい魔力だ……」
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