ちっちゃい仲間とのんびりスケッチライフ!

ミドリノミコト

文字の大きさ
34 / 91
リッカとタイチ

しおりを挟む
 

 「初めまして。ここクートベルアカデミーのアカデミー長をしているジル・クートと言う。よろしく頼む。」

 リッカ達を出迎えてくれたのはニコリと微笑んでいる青年だった。アカデミー長にしては若い方ではないだろうか、前に一度だけ見かけたシークのアカデミー長はもっと年老いていたような気がする。応接室と思われるそこは広めの机を囲むように四つの一人座りのソファが置いてあった。
 その内の二つをリッカとタイチは進められ、アカデミー長であるジルが相手と言う手前逆らうこともできずリッカ達は訝し気な顔をしながらも席に着くこととなった。

 「……リッカ・トウドウです。」
 「タイチ・アズマです。」
 「ああ、存じている。いやあ……君たちの成績には驚かされた。……いったいどこでそんな知識を?」
 「幼いころから本を嗜んでいたので。あとは、両親や先生の教えがよかったのもあるかと。」
 
 リッカが両親、と口にした瞬間ジルは何かに気づいたようにハッとした。
 
 「もしや君の父親はトウドウの麒麟児と呼ばれていたセイイチ・トウドウか!」
 「……アカデミー長も父様を知っているんですね。」
 「も、って……他に誰かいたのか?」
 「カガチさんが知っているようでしたので……」
 「ああ、彼らはシークのアカデミーでは有名なパーティだったからな、よく覚えている。うちのアカデミーも出し抜かれたものだ。」
 「……アカデミー長はおいくつなんですか?」

 まるで見ていたような、実際にその場で感じたような感想にリッカは思わず口に出した。見た目の年齢で考えるならそれはあり得ないこと。どう見てもジルはリッカの父であるセイイチよりも若く見えるのだ。不思議、というよりもどこか不気味であるジルをリッカは見つめた。

 「……いくつに見える?」
 「見た目と違うんでしょう?」
 「そうだなあ……これを見るといい。すべてを察することができるだろう?」
 「これ……?」

 黙りこくっているタイチと共にジルが指している場所―耳―を見ると、その形は通常の人族の耳の形ではなく、長い耳がそこにあった。そう、まるでエルフのような――――。

 「……森人族エルフ?」
 「ああそうさ。森人族エルフは長命……これでも二百年は生きているんだ。」 
 「に、にひゃく!?」
 「驚くことかな?森人族エルフは寿命では命を落とさない。だから、あり得ない話ではないよ。」

 驚いたように声を上げるタイチへ今まで黙ってたノアが声をかけた。何を考えているか分からない瞳で見つめられタイチは居た堪れなくなりするりと視線を逸らす。その様子に気づいたリッカはノアにじっと視線を投げかけた。

 「……もしかして、ノアさんも森人族エルフなんですか?」
 「……どうしてかな?」
 「どう、とは?」
 「どうしてそう思ったのかなって。」
 「いや、なんとなくです。自分のことを言ってるみたいだったので。」

 本当に何となくなのである。タイチに向かって森人族エルフのことを言っている時、どことなく寂しそうな表情をしているような気がしたのだ。それに、森人族エルフだとしたら人族には全く懐かないと言われている夜猫ノワールキャットを従魔にできていても全く不思議ではない。そこも含めてリッカはその言葉を口にした。

 「まあ、半分正解かな。」
 「半分……?」
 「僕は半森人族ハーフエルフ森人族エルフではないんだ……森人族エルフと人族の間に生まれた子供。聞いたことあるでしょ?」
 「まあ知識程度に。実際に出会ったことはないですけど……。」
 「……普通の反応だね。」
 「普通じゃない反応なんてあるんですか?」

 何でもないことのように言うリッカにノアは目をぱちくりとさせ、大きな声で笑った。そう、笑ったのだ。これにはさすがのリッカもぎょっとした顔になり、思わず膝にのせていた神獣たちをまとめた抱きしめて身を引いてしまった。大笑いなんてしないような者が急に大きな声で笑ったりしたら驚くものである。

 「な、なに……?」
 「いや、君はいい子だなと思って……。世の中には普通じゃない反応をする人間の方が多いというのに。」
 『ままがいい子なのは当たり前でしょ!僕たちのままなんだから!』
 「ふふっ……そうだね、魔獣だけでなく神聖なる獣にも好かれるんだもん。いい子じゃないわけないか。」
 『まさか半森人族ハーフエルフだとは思いませんでしたが、森人族エルフの一族なら私たちが分かっても不思議ではありません。お母様、安心してください。お母様は鍛錬不足なんかではありませんよ。彼らにはどう頑張っても私たちの存在はバレてしまいます。』
 「……どういうこと?」

 ふん、と息をついた朱雀にリッカは首を傾げた。森人族エルフの一族には神獣の存在が隠せないということがうまく理解に至っていないのだ。ぽかんとしている様子のリッカにノアは小さく笑うとその中の白虎の頭へ手を伸ばし、もふもふと撫で始めた。それを見ながらリッカは考え込み、ふととある書物の一節を思い出したのだ。

 「森人族エルフは神聖なる獣を崇拝している……」
 「リッカくんに知らないことはないのかい?」
 「ありますよ、たくさん。」
 「そっか。話を戻すけどね、森人族エルフは生まれながらに神聖なる獣を感知する能力に長けているんだ。どう隠されてもね。半森人族ハーフエルフと言ってもそこはしっかり受け継いでいるんだよ。だからリッカくんの鍛錬不足なんかじゃないよ。」
 「うっ……、なんでバレて……」
 「だってさっきその子たちと話してたでしょ?それに、相当思い詰めてた顔してたから。それと、森人族エルフは神聖なる獣を絶対に傷つけることができない。魂に刻まれているんだ……絶対に手を出してはいけないってね。だから僕がこの子達に手を出すことは絶対にないよ。」

 だから安心して、と言わんばかりに神獣たちへ微笑みノアはすとんとソファへ腰を下ろした。どうやら満足したようである。リッカはそれを聞きふ、と息をついた。気が抜けてしまったのである。そしててそれと同時にどこかで停止させていた思考能力もいつものように戻ってきて途端に気づいてしまった。半森人族ハーフエルフであるノアが神獣の存在に気づいたということは森人族エルフであるジルも当然気づいているだろうということに。いや、そうやって気づかれてしまうことはもうしょうがないだろう。森人族エルフには隠せないのだから。……問題は、そのキラキラしている目である。



 「いやはや、この年になってこのように近くで神獣様を目にすることはなかったからな……ふぅむ、何とも美しい魔力だ……」
 


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転生美女は元おばあちゃん!同じ世界の愛し子に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!《『転生初日に~』スピンオフ》

ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。 私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。 そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。 早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯ 私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。 『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』 そのために私は⋯ 『地上に降りて冒険者になる!』 これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯ ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の可愛いくまの編みぐるみ、おばあちゃんこと凛さんの、天界にいる本体が主人公! が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。 また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。 こちらも、よろしくお願いします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし
ファンタジー
主人公、柏木 和(かしわぎ かず)は「武人」と呼ばれる武術を極めんとする者であり、ある日祖父から自分が世界で最強であることを知らされたのだった。 そして次の瞬間、自宅のコタツにいたはずの和は見知らぬ土地で寝転がっていた―― 「……いや草」

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...