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第二章 アカデミー 入学編
言い掛かり
しおりを挟む二人とも目覚めてから昨日のように食堂へ行き朝食を済ませてアカデミー校内へ向かう。昨日のように他から絡まれることはなかった。と言うのも上手く時間をずらして行ったおかげで鉢合わせしなかったのである。食堂にいる昨日の女性……サーシャと名乗ってくれた女性がリッカとタイチに、と果物のおすそ分けをしてくれたので、リッカは幾分か上機嫌になっていた。
朝からおいしい食事を食べ元気も出た二人は、さっそくアカデミー三階の三年の教室へ足を踏み入れる。
「ここが教室か……」
「毎回毎回階段使うの大変だよ……《跳躍》使いたい……」
「いちいち魔法使ってられないだろ。体力足りてないぞ?飯をいっぱい食え。」
「タイチってばそればっか!いいんだよ僕は……いざとなればみんなが守ってくれるしね。」
リッカの言葉にハッとした神獣たちが勢いよく首を縦に振る。珍しくリッカが自分たちを頼りにしてくれていると分かって嬉しく思っているのだ。だが、タイチはやはり腑に落ちないようで首を傾げていた。
すでに教室にいたリッカ達と同じクラスになる生徒たちは言葉を交わしながら入ってきた二人を目にすると、それまでざわざわと騒がしかったはずの喧騒を失くしてしまう。通常であれば皆二年からの持ち上がりであるため、見知らぬ生徒はいるはずがないのだが、その例外に当てはまる二人が来たことで驚いてしまったのだ。
「これって席決まってるのかな?」
「さあ……けど席順表とかないから決まってないんじゃないか?」
「んー……あ、すみません、これって席は決まってるんですか?」
ふと、扉を閉めたリッカが近くにいた女子生徒に声をかけると、女子生徒は驚いたようにびくりと身体を揺らして二人を見た。そんなに驚かなくてもいいじゃないかと心の中でリッカは思うのだが、口にはしない。まあ驚くのも分からなくはないからだ。一度周りを見渡した時に気づいたのだが、彼らにはまだ従魔がいない。なのに、すでに従魔がいる見ず知らずの二人組が来れば驚かないはずがない。見たところ教室には二、三人のグループが三つほどでほぼ女子生徒だ。昨日寮でも見かけなかった。
何も答えてくれない女子生徒にリッカが困ったように眉を下げていると、教室の奥の方から二人組の女子生徒が近づいてくる。
「やあ、君たちここ三年のAクラスだけど、教室は間違ってないのかい?」
どうやらリッカ達を新入生だと判断しての言葉であるようだが、生憎新入生と言うのはあっているがクラスは間違っていない。その旨を伝えると彼女は愉快そうに声を上げて笑い始めてしまった。
「ははっ悪かったよ、そんなのは最初から知ってる。どういう反応をするのか知りたかったのさ。」
「……揶揄ってます?」
「おっと、そんなつもりじゃないよ。そうだ、せっかくクラスメイトになるんだから敬語はいいよ。私はベル・ターニャ、同じテイマー科三年Aクラスとしてよろしくね?」
「……はあ。」
「でかいため息だな?で、そっちのちっこいのとでかいのの名前は?」
快活そうに言うベルはその性格ゆえに様々な人に好かれているだろうということが分かる。揶揄っているようで相手のことをきちんと尊重しているように思える。……ちっこいの、という呼ばれ方は気に入らないが。
「リッカ・トウドウ。よろしく……タイチがでかいだけで僕はちっこくないから。」
「タイチ・アズマだ。えっと……そちらの方は?」
「すまないすまない、気にしていたのか。ああ、こっちは私の古くからの友人なんだ。」
トンっと背中を押されたもう一人の女子生徒は読めない表情のまま言葉を紡ぐ。
「リリー・アディス。……その子たち、かわいいね。」
既にリリーの視線は神獣たちに向いていてちらりとも動かない。リッカが苦笑いをしながら触るか尋ねると、なんともキラキラとした答えが瞳から伝わってきた。触らせてもらえるのなら、触りたい。そう瞳で語っているせいか、神獣たちも拒むことはなかった。
「どうぞ。優しく触ってあげてください。」
「ありがと。……ふかふか、かわいい。」
「おお、今までにないくらいにリリーが嬉しそうだ。私からも礼を言わせてくれ、ありがとう。」
「ん、まあ別に大丈夫だよ、これくらい。」
「そうか……それにしても新入生と言うことは十二か十三だろう?もう従魔を持っているなんて、すごいね?」
神獣たちをもふもふしているリリーを気にしながらベルが興味深そうに言う。どうやらアカデミーに入ると三年になるまで従魔契約はしないようで三年の最初の授業で従魔契約を行い、そこから従魔と親睦を深めていくそうである。
「俺たちヤマトの出身で、特に俺たちの故郷では八つになると契約の儀……従魔契約を必ず行わなければいけないしきたりがあるんだ。」
「ふむ、なるほど……聞いたことがあるな。カガチ先生と同じ国の出ということか?」
「そうだね、カガチさんと一緒。だから最初に名前を聞いた時は驚いちゃった。」
「ヤマトの人間は滅多に外界に行かぬものな。私もカガチ先生と、君らにしか会ったことがない。」
そうやってベルとリッカ、タイチが談笑している時だった。ものすごい勢いで扉が開け放たれ、高笑いが聞こえたのは。
「ハハハハハッ!!!やっぱりそうなんじゃないか!贔屓でトップにしてもらったんだろ!」
そう、その正体は昨日リッカ達へいちゃもんをつけていた者たちの中の一人だった。
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