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第三章 アカデミー別対抗戦 準備編
自室にて
しおりを挟むあの後ノアはライとミイがやけに素直に解散を了承した訳を簡単に説明してくれた。やはり以前、今日と同じようにノアやティアラ含めた四人で集まって話をしていたことがあり、その際に四人を囲むように他の生徒が増え始め、最終的に移動すら難しい状況に陥ってしまったことがあったらしい。解散のタイミングを失い、一時その場に拘束されることとなったようで、その時のことが少しトラウマになっているのだろう。そう、ノアは語る。
それを話してくれたのもノアがリッカとタイチを寮の二人の部屋まで送ってくれた時だったので、ノアも相当堪えたのだと思う。今は自室に戻ってしまったので今更どうだったのかなんて詳しく聞くことはできないが、話をしてくれていた時は何処か疲れた表情を浮かべていたので、間違ってはいないだろう。そんなことを考えながらベッドに腰掛ける。
流石に今日はいろいろ説明も受けて、大変だった。疲れもたまっている。早く休みたくて食堂に行きご飯を食べた後は部屋に戻ってきてすぐにタイチと別れ自室に入ってしまったが、まだいろいろ考えることは残っている。ため息もつきたくなるが、正直選手選抜戦まで二週間もない今、ゆっくり従魔たちと話ができるのなんて自室にいるときくらいだ。選手選抜戦を控えているからとは言え、全ての授業が自習になるわけではなく、一定数の依頼消化は行わなければならない。選手選抜戦の個人戦に参加する生徒と参加しない生徒がいる三年生だけは座学の授業だけ自習になるが、それでも課外授業は普通に行われる。
個人戦の選抜戦は全員強制参加であるため、公平を期すように選抜戦までの二週間は受ける依頼の数が全て一定に決められている。その数を二週間のうちの最初にするか、後にするか、適度にやるかはそれぞれのパーティの判断に委ねられているのだが、必ずその決められた数の依頼はこなさなければいけない決まりがあり、こなせなければどれだけ実力者だろうと参加資格が無くなってしまうという決まりもある。それだけ公平に気を配っているということだ。
『今日は疲れたねー?まま、大丈夫?』
「んー、何とか。でももう寝落ちそうだよ……。」
『今日はいろいろありましたからね……ところで、例の選抜戦……予選ですっけ?何か作戦はあるのですか?』
『依頼もあるし、まともに話せるの夜くらいしかないもんね。僕らも参加するわけだし早いとこお母さんが考える作戦だけでも聞きたいな。』
「あーそっか、そうだよね。」
寝落ちそう、なんて言いながらもベッドに横になったリッカのお腹の上や枕元、リッカの身体の横にうつぶせになっていたりする神獣たちやフェリは眠そうなリッカを見ながら小さく笑っている。しかしさっさと作戦会議でもなんでもしておかないと今後機会すらない可能性が出てくるので、可哀そうではあるが玄武と朱雀はリッカの言葉の続きを促した。ちなみに青龍とフェリはリッカと同じように眠そう……というよりもすでに寝てしまっているようでピクリともしない。朱雀も玄武も白虎も青龍とフェリが眠ってしまっていることには気づいているが起こそうとはしなかった。もとより、彼らに難しい話は耐えられない。ならば自分たちだけでも、という思考に至ったのだろう。白虎はどうなのかと問われることもあるだろうが、白虎はこう見えても知性的な方だ。しかし、彼ら神獣たちの真意は分からないのでリッカは確認のためにと口を開く。
「アオくんとシロくんとフェリは寝てるけど……いいの?」
『大丈夫ですよ。むしろこの子たちは起きていたら起きていたで話が進まなくなりそうですから。』
『後で共有しておくから大丈夫だよ。それより、お母さんも眠そうだしさっさと話し合っとこう?』
「そう……?ならいっか。」
『ええ。心配はいりません。で、どういう作戦で行くのですか?選抜戦……予選ですし、まさか封印は解かないと思いますけど……。』
早速、と言わんばかりに朱雀が話を切り出す。そう、朱雀の言うように流石に予選ごときで封印を解く気はさらさらない。というか、封印を解かなくてもある程度の力は使えるので、混乱を避けるためにも封印を解くことは控えたかった。本音としては騒がれたくないというのもあるが。本選ともなれが封印の解呪もやむなしと考えてはいるがフェリもいる手前おそらく封印を解くことなく勝ち上がることはできるだろう。
なんならリッカ自身も魔法を器用に扱える。契約者の魔法攻撃は禁止されていないのでいざとなればリッカがサポートをすればいいだけだ。
「ま、予選では封印の解除しないよね。もったいないし……どれくらいの実力の人がいるかも分からないしね!それは他のアカデミーの生徒にも言えるけど……本選は、やばそうだったら解呪するかもだけど、僕がサポートできそうならそのままかなって。」
『まあ、ままの魔法攻撃があるなら玄武の結界もあるし、そうそうピンチもなさそうだよね!』
『いつも通り僕は結界に専念でいいんでしょ?』
「そうだね。ただし張るのは《多重結界》になるけど、その分僕だけじゃなくて近接攻撃担当のシロくんやフェリにも結界張れるでしょ?」
『まあね。ん?ってことは前衛役に白虎とフェリ、後衛役に青龍と朱雀、結界に僕ってことかな。』
玄武の出した陣形案にリッカは頷く。今までの戦闘でタイチやノアとの連携は多くこなしているし、従魔同士の連携も多くこなし、慣れている。しかし、きちんと陣形を取って戦闘を行うことはあまりなかったので、そこが少しの不安要素だろうか。
「役割を決めて戦闘するのは慣れないかもしれないけど、まあシロくんたちなら大丈夫だよ。すーちゃんもアオくんも後ろからサポートしてくれるだろうし。」
『フェリもいますからね。とはいえ、神獣や聖獣である私たちと互角に戦えるのなんてタイチのウルくらいしかいないと思いますけどね。』
「かもね。でも、油断大敵だからね……備えておいて損は無いよ。」
『まま、簡単に言えば僕とフェリがメインで前に出ればいいってことだよね。』
「そういうこと。一番大変な役回りだと思うけど頑張ってね。期待してる。」
リッカがそう白虎に言うと白虎は嬉しそうに笑った。結局作戦という作戦はないし、陣形の確認だけになってしまったがそれもまたリッカ達らしいだろう。そもそも作戦なんてなくてもどうとでもできるし、個々の対応能力は群を抜いて優れているところがあるので流れに身を任せてしまっても問題ないのだが、それを言っては元も子もない。存外、みんな選抜戦や本選を楽しみにしているのである。
『そう言えばお母様、黄龍様から授けられた魔法はお使いになられるのですか?』
ふと、朱雀がそうリッカへ問いかけた。黄龍から授けられた魔法……それは入学試験の後から入学式までの間にリッカが黄龍から教わった魔法のことを指している。
朱雀に問われたリッカはにやりと楽しそうに小さく笑った。
「まあ、予選では使わないけど、本選では使うつもりだよ。」
『そうなんだ!あれすっごく派手で面白いから、僕好きだな~!』
『それにしてもよくもまああんなに精密に魔力を操作できるよね……流石お母さん。』
「めちゃくちゃ修行したもん。それに、多分魔法自体僕に合ってたと思うんだよね。」
魔法にも向き不向きがあり、件の魔法はリッカにとって馴染みやすいものだったということだろう。せっかく教わったのだ、使わない手はない。しかし、あの魔法は存外魔力を使うので、やるならば本選だろうとリッカは前々から決めていた。
そんなことをたくさん話していればいつの間にか時間もたち、すでに寝る時間をとうに超えていた。そのことに気づいたリッカは朱雀と玄武、白虎をいつもの定位置に誘導し自分も横になる。なし崩しに話を切り上げてしまったがいつものことなので玄武たちもさして気にすることなく眠りについたようだった。
「……楽しみだなぁ。」
そんなリッカの言葉に返すものは、いない。リッカは小さく息をつき、自身もまた眠りにつくのだった。
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