上 下
16 / 37
第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる

02-7.

しおりを挟む
 ……奴隷になれと言われるよりはマシだ。

 以前、交際してほしいと付きまとっていた男性の言葉を思い出す。

 男性の持っているものをすべて捧げるから、一生、自分だけの奴隷として過ごしてほしいと、とんでもない発言の求婚を受けたことがあった。

 それに比べて、アレンの要求は大したことがない。

 ……そういえば、あの変態。あれ以降、見てないな。

 社交界に顔を出すくらいなのだから、それなりの地位にある貴族だったはずなのだが、ディーンに対する爆弾発言以降、姿を目にしていない。

 そのことを気にもしていなかった。

 ……父上が対処したと思っていたんだが。

 視線をアレンに向ける。

 ずっと見ていたと発言したことを考えると、爆弾発言をした変態男に鉄槌を下したのは、父親ではなく、アレンだったのかもしれない。

「ディーン。俺以外のことを考えていないか」

「……なんでわかるんだよ。気持ち悪いな」

「顔を見ればわかる。なにを考えていたんだ?」

 アレンの言葉に対し、ディーンはため息を零した。

 ……別に話してもいいか。

 既に解決済みの問題である。

 あれ以降、ディーンはなにも被害を受けていない。

「前に変態野郎に付きまとわれていたことを思い出したんだよ。いつの間にか、見なくなったから、忘れてたんだけどな」

 ディーンの言葉に対し、アレンは心当たりがあったのだろう。

「気にする必要はない」

 断言した。

「二度とディーンの前に現れないからな。心配ないから、忘れてしまえ」

 アレンの言葉を聞き、ディーンは静かに頷いた。

 なにがあったのか、深堀はしない。

 ……アレンが片づけたのか。

 大公家の嫡男に睨まれてしまえば、社交界から姿を消すはずだ。

 それどころか、国を追い出されている可能性も高い。そもそも、生きているのかさえも怪しいところである。

「他にはないか? 結婚の条件があるのならば、すべて聞きたい」

 アレンは真面目に聞いているのだろう。

 ……脅迫さえなければ完璧だったのにな。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺様王子から逃げられない

BL / 連載中 24h.ポイント:1,059pt お気に入り:38

猫をかぶるにも程がある

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:101

初夜の翌朝失踪する受けの話

BL / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:2,925

入れ替わった花嫁は元団長騎士様の溺愛に溺れまくる

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:597pt お気に入り:38

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

BL / 完結 24h.ポイント:788pt お気に入り:3,169

男子校でスカートの着用が許可された男子たちの話

BL / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:37

処理中です...