上 下
15 / 37
第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる

02-6.

しおりを挟む
 ……パーティで会うくらいだろ? ほとんど、言い争いになってたし。

 だからこそ、返答に困るのだ。

 ……好意的に関わったことないよな?

 思い返す限り、お茶会とかで挨拶を交わす程度の会話しかしていない。

 それ以外のやり取りは、会話として成立していないような言い争いばかりであり、互いに挑発をしあうようなやり取りは、ディーンの中では友好的な会話として認識していなかった。

 ……少なくとも、愛している相手にするようなやり取りはしてない。

 だからこそ、愛を告げられて戸惑いを隠せない。

 それが嘘であるとも思えない。

 なにより、脅迫をされている状況とはいえ、ディーンを騙しているとも思えなかった。

「あー、えーっと」

 ディーンは言葉を濁らす。

 ……結婚といわれても。

 ディーンの一存で決めるわけにはいかない。

 貴族同士の結婚は当主が決めるものである。

「父上に聞いてみないと返事ができないんだけど」

 ……勝手に決めたら怒られるよな。

 だが、アレンの提案を拒絶するということは、侯爵家の悪事を世間に知らされるということでもある。

 それだけは避けなければならない。

 おそらく、父親も結婚に同意をすることだろう。

「俺としては、結婚してもいい。それで侯爵家が守れるなら、俺を好きなように扱ってくれて構わない」

 ディーンは22歳だ。

 侯爵家の令息として、政略結婚をさせられてもおかしくはない年齢だ。

 それも、侯爵家私有の騎士団には団長として所属をしているとはいえ、まともに働いたこともない。騎士団を引き連れて移動するくらいである。

 ……父上も大公家と繋がれるのならば、喜ぶだろう。

 ディーンが侯爵家に留まっているのは、妹のヘンリエッタが孤立することを恐れているからである。

「その言葉に責任を持てるか」

「持ってやるさ。でも、父上の許可がないと動けない」

 アレンの言葉に対し、ディーンは素っ気なく返す。

 結婚相手として欲しているのならば、粗雑な対応はされないだろう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結済み】異世界でもモテるって、僕すごいかも。

BL / 完結 24h.ポイント:411pt お気に入り:1,422

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:67,994pt お気に入り:2,117

甘えたオメガは過保護なアルファに溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:1,285pt お気に入り:1,874

白猫は宰相閣下の膝の上

BL / 連載中 24h.ポイント:8,215pt お気に入り:891

腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

BL / 連載中 24h.ポイント:31,120pt お気に入り:2,251

誰もシナリオ通りに動いてくれないんですけど!

BL / 連載中 24h.ポイント:31,422pt お気に入り:1,744

イアン・ラッセルは婚約破棄したい

BL / 連載中 24h.ポイント:40,684pt お気に入り:1,325

Blindness

BL / 完結 24h.ポイント:1,547pt お気に入り:1,283

処理中です...