男装の悪役令嬢は、女嫌いで有名な騎士団長から執着されて逃げられない

佐倉海斗

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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

02-14.

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 あいかわらず、機嫌の悪そうな声をしていた。

「それなら、俺が一方的に話してやろう」

 メルヴィンは距離をとったものの、引き下がるつもりはなかった。

 諦めたように見せかけたのは、距離を縮めればアデラインに拒絶されると考えたのかもしれない。

「十六年前、健国祭に参加をしたことがある。市民の祭りに参加するのは大公領では当然のことだったからな。王都の祭りにも興味があったんだ」

 宣言通り、メルヴィンは一方的に語り始める。

 それは十六年前の建国祭の出来事だ。

 ……覚えていらっしゃったのに?

 胸が締め付けられるような苦しさを感じる。

 アデラインの初恋の思いでは、メルヴィンにとっては些細な出来事でしかなかったのだと考えるようにしていた。

 そうしなければ、心が壊れてしまいそうだった。

 ……それなのに、私だと気づいてもくれないのですね。

 この場から逃げ出すことができたのならば、どれほどに良かっただろうか。

 メルヴィンの語る思い出話は綺麗なものだ。

 それを語られる相手が男装をした自分ではなく、アデラインとしての自分だったのならば、どれほどに心の靄が晴れたことだろうか。

 涙は引っ込んだ。

 泣くことさえもできない心が壊れそうなほどに痛いのは、恋の代償だろうか。

「俺と同じように市民の祭りに興味を持った子がいたんだ。どこかの箱入り娘だったのだろう。袋いっぱいの小銭を首から下げて、両手に祭りの食べ物や菓子を持って歩く姿はかわいいものだった」

 メルヴィンはアデラインの変化に気づいている。

 関係のない思い出話を一方的に聞かされているかのように装っているものの、逃げ場を探している姿は、猛獣に狙われた小動物のようなものだった。

 ……どうしましょう。

 逃げ場はない。

 それなのに、メルヴィンは追い詰めるように話を続ける。

 ……なんだか、苦しくなってきましたわ。

 メルヴィンの語る思い出話が耳障りなわけではない。

 僅かな変化だった。胸が締め付けられ、呼吸がしにくい。失神をするほどではないが、視界が揺れ始め、めまいの症状も出始めた。

 それは今朝、エリーに再三言われていたことだった。

 男装がばれないように念入りにしてきたのが災いしたのだ。
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