男装の悪役令嬢は、女嫌いで有名な騎士団長から執着されて逃げられない

佐倉海斗

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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

04-5.

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「……洗濯物をメイドに渡せばよろしいのですの?」

 アデラインは見当違いなことを口にする。

 まだ動揺をしていた。混乱をしている頭ではメルヴィンの何気ない行動の意図に気づくことができず、言葉遣いにも気を回せていない。

「いや。それを着ていた方が良いだろう」

 メルヴィンの言葉を聞き、アデラインは首を傾げる。

「前を隠せないのだろう。近日中に隊服の寸法を見直した方が良さそうだな」

 メルヴィンは言葉を付け加える。

 そこまで言われ、アデラインはメルヴィンの言いたいことを理解した。

「……見ないでくださいませ」

「無理を言うな。目が行ってしまうのはしかたがないだろう」

「冗談でしょう。メルヴィン様は女嫌いだと伺っておりましたもの。それならば、お嫌いなものを視界に入れようと努力をしないでくださいませ」

 アデラインは文句を言いつつ、渡されたメルヴィンの隊服を羽織る。

 ……詰め物をしていても、敵いませんわね。

 両手を伸ばしてみたが、指先しかでない。

 全体的に不格好ではあるものの、胸が丸見えになっているよりは良いだろう。余裕はないものの、隊服のボタンも問題なく止めることができた。

 対格差を実感する。

 男装している時は恰幅のいい姿になっていると思っていたものの、メルヴィンの隊服を着てみると違いがよくわかってしまう。

「メルヴィン様。早く、服を着てくださいませ。目のやりどころに困りますわ」

「お前も見ているじゃないか」

「私はメルヴィン様がお嫌いだとおっしゃった覚えはございませんもの」

 アデラインは堂々と告げる。

 ……とはいえ、気まずいのですけども。

 視線を露骨に逸らしてみるものの、やはり気になってしまい、視線をメルヴィンに戻してしまう。その繰り返しだ。

「予備の物を出してくる。アデラインは、適当な箱の中にそれらをしまっておけ。帰宅時に持って帰るのを忘れないようにな」

 メルヴィンは踵を返し、さっさと執務室の隅に向かう。

 執務室の角には備え付けのクローゼットがある。

 第一騎士団の執務室は、基本的にはメルヴィンしか使わない部屋の為、私物を保管してあるのだろう。その中には予備の隊服も含まれているようだ。

 ……箱を探しましょうか。

 男装をするのに必要なものたちを隠さなければならない。
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