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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

06-2.

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 その姿をアデラインは隣で見てきた。

 三年間という短い時間であっても、メルヴィンの真面目な性格は嫌になるほどに知っている。公私混同をしない人だということも知っている。

 だからこそ、露骨なまでに嫉妬心を見せたことが意外だった。

「メルヴィン様をお支えになる大公家の使用人が、危害を与えるような方ではないと信じておりますが、それでも、エリーの安否をこの目で確認しないと落ち着きませんのよ」

 アデラインはエリーを気にかけていた。

 爵位を手放さなければならなかった遠縁の親戚だ。運よく、アデラインに拾われたエリーは、助けられた恩を返す為に懸命に働いている。

 エリーの姿が見えないのは不安だった。

 それはエリーと初めて会った日のことを思い出してしまうからだろうか。

「わかっている。だが、先にアデラインの部屋に案内しよう。そこに連れてくればいいだろう?」

 メルヴィンは嘘をつかない。

 エリーをどこかに隠すようなこともしないだろう。

 それをすれば、アデラインの信用は泡のように消えてなくなると知っているからこその返事だった。

「ええ。それでしたら、かまいませんわ」

 アデラインはメルヴィンの動きについていく。

 迷うことなく足を動かした先にあるのは、アデラインの部屋なのだろう。

 ……私の部屋?

 不意に疑問を抱いた。

 ……仕事が終わってから準備をしたのでしょうか?

 昨日の仕事は夜遅くまで続いた。

 体調を崩していると言い訳を並べ、アデラインは訓練には参加しなかったものの、その間、第二騎士団の執務室に残り、書類整理をしていた。

 そこまでは良かったのだ。問題は書類仕事を終わらせようとしていた時、第二騎士団の副団長が山のようになった未処理の書類を運んできたことにある。

 その結果、山のようになってしまった書類仕事に追われ、残業をするはめになったのである。

 ……メルヴィン様は私よりも遅かったはずですが。

 アデラインを迎えに来た馬車に押し込んだメルヴィンの姿を覚えている。

 その後、すぐにメルヴィンも帰宅したとは思えない。

 ……あの後に大急ぎで用意したのでしょうか?

 それはありえないだろう。
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