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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

06-3.

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「どうした。なにかあったか?」

「少し考えごとをしておりました」

「そうか。なにか不具合でも?」

 メルヴィンの問いかけに対し、アデラインは首を左右に動かして否定する。

「私の部屋というのは、昨日、準備をなさいましたの?」

 アデラインは迷うことなく疑問を口にした。

 言い淀んだところで、打ち明けるまで急かされるのはわかっていた。隠すような内容でもなかった為、アデラインはメルヴィンに問いかけることにした。

「いや。前から準備はしてあった」

 メルヴィンはすぐに返事をする。

 そんなことを考えていたのかと、不思議なものを見るような目をアデラインに向けていた。

「そうですの。婚約者の部屋を準備してあったのですね」

 アデラインは納得したように頷いた。

 ……酷い扱いを受けると覚悟をしていたのですが。

 結婚生活は苦痛の日々だと思っていた。

 アデラインの想いは届くこともなく、メルヴィンの情が向けられることもないだろうと、勝手に想像して怯える日々だった。

 ……私の思い込みでしたのね。

 肩の荷が下りた。

 必要以上に考え込み、怯えていた日々が遠ざかっていくのを感じる。


「……まあ、そうなるな」

 メルヴィンは歯切れ悪く返事をした。

 それは他の意図があったのを隠そうとしているようにも見えた。

「ここだ」

 メルヴィンは目的の部屋の扉を迷うことなく開けた。

 部屋は無機質な家具で統一されており、女性が必要となるだろうものが一式揃えられていた。侯爵家から嫁入り道具が持たされると考えてもいない作りだ。

「素敵なお部屋ですわね。本当に私が使ってもよろしいのでしょうか?」

「当然だ。アデラインの為だけに作らせたんだからな」

「まあ、そうでしたの。私の好みをよく理解されていらっしゃったのですね」

 アデラインは部屋に足を踏み入れる。

 ……私の好みを知っているとは思えなかったのに。

 アデラインは派手なものを好まない。ドレスやアクセサリーは家族が選ぶことが多く、アデラインに似合うように赤色や黒色を基調としたものが多いが、それらをアデラインの意思で選んだことはほとんどなかった。
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