10 / 49
第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る
02-6.
しおりを挟む
「僕はセシルが好きだよ」
ルシアンの告白を聞き、セシルの頬が赤くなる。
それは家族がセシルに向ける好意とは違う。友人に向ける好意ではない。初めて向けられるものだ。
「僕と婚約してほしい」
ルシアンの言葉は本気だ。
本気だとわかってしまったからこそ、セシルは反応に困った。
……婚約。
セシルも婚約をするということがなにを意味しているのか、さすがに理解をしている。子どもが勝手に決められるようなものではないことも、家同士の大きな約束だということも、なんとなくではあったが理解をしている。
……嬉しい、けど。
婚約をしてどう変わるのか、よくわからない。
その先のこともなにも知らない。
……でも、なんか、こう。ドキドキする。
心臓が大きな音を立てている。
鼓動が早まり、頬を真っ赤に染まっていく。
「あー、ごめん。言い方が悪かったよね」
「なんで謝るんだよ。嘘を言ったのか?」
「嘘じゃないよ。でも、セシルを困らせるつもりもなかったんだよ」
ルシアンは照れくさそうに笑った。
謝ってはいるものの、発言を撤回するわけではないようだ。
「婚約は決まっているんだ。本当は侯爵閣下から話を聞くべきなんだけど、我慢できずにプロポーズしちゃっただけで」
先ほど、ルシアンが言っていた侯爵からの話というのは、セシルの婚約に関するものだったようだ。
それを、うっかりと口を滑らせてしまった。
ルシアンはわざとらしく両手を合わせて謝った。
王国にはない文化だが、ルシアンは度々ごまかすように謝る時にしている仕草だった。
* * *
……お父様。すごく後悔してるな。
セシルは昼間のやり取りを思い出しながら、目の前でワインを飲みながら涙を流している父親を見つめていた。
王国の宰相として活躍しているものの、セシルの前では末っ子を溺愛する父親である。それを痛感しているのか、父親の隣に座っている母親の機嫌が悪い。
ルシアンの告白を聞き、セシルの頬が赤くなる。
それは家族がセシルに向ける好意とは違う。友人に向ける好意ではない。初めて向けられるものだ。
「僕と婚約してほしい」
ルシアンの言葉は本気だ。
本気だとわかってしまったからこそ、セシルは反応に困った。
……婚約。
セシルも婚約をするということがなにを意味しているのか、さすがに理解をしている。子どもが勝手に決められるようなものではないことも、家同士の大きな約束だということも、なんとなくではあったが理解をしている。
……嬉しい、けど。
婚約をしてどう変わるのか、よくわからない。
その先のこともなにも知らない。
……でも、なんか、こう。ドキドキする。
心臓が大きな音を立てている。
鼓動が早まり、頬を真っ赤に染まっていく。
「あー、ごめん。言い方が悪かったよね」
「なんで謝るんだよ。嘘を言ったのか?」
「嘘じゃないよ。でも、セシルを困らせるつもりもなかったんだよ」
ルシアンは照れくさそうに笑った。
謝ってはいるものの、発言を撤回するわけではないようだ。
「婚約は決まっているんだ。本当は侯爵閣下から話を聞くべきなんだけど、我慢できずにプロポーズしちゃっただけで」
先ほど、ルシアンが言っていた侯爵からの話というのは、セシルの婚約に関するものだったようだ。
それを、うっかりと口を滑らせてしまった。
ルシアンはわざとらしく両手を合わせて謝った。
王国にはない文化だが、ルシアンは度々ごまかすように謝る時にしている仕草だった。
* * *
……お父様。すごく後悔してるな。
セシルは昼間のやり取りを思い出しながら、目の前でワインを飲みながら涙を流している父親を見つめていた。
王国の宰相として活躍しているものの、セシルの前では末っ子を溺愛する父親である。それを痛感しているのか、父親の隣に座っている母親の機嫌が悪い。
119
あなたにおすすめの小説
異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話〜君の想いが届くまで〜
一優璃 /Ninomae Yuuri
BL
異世界での記憶を胸に、元の世界へ戻った真白。
けれど、彼を待っていたのは
あの日とはまるで違う姿の幼馴染・朔(さく)だった。
「よかった。真白……ずっと待ってた」
――なんで僕をいじめていた奴が、こんなに泣いているんだ?
失われた時間。
言葉にできなかった想い。
不器用にすれ違ってきたふたりの心が、再び重なり始める。
「真白が生きてるなら、それだけでいい」
異世界で強くなった真白と、不器用に愛を抱えた朔の物語。
※第二章…異世界での成長編
※第三章…真白と朔、再会と恋の物語
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる