『悪役令息』セシル・アクロイドは幼馴染と恋がしたい

佐倉海斗

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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

02-6.

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「僕はセシルが好きだよ」

 ルシアンの告白を聞き、セシルの頬が赤くなる。

 それは家族がセシルに向ける好意とは違う。友人に向ける好意ではない。初めて向けられるものだ。

「僕と婚約してほしい」

 ルシアンの言葉は本気だ。

 本気だとわかってしまったからこそ、セシルは反応に困った。

 ……婚約。

 セシルも婚約をするということがなにを意味しているのか、さすがに理解をしている。子どもが勝手に決められるようなものではないことも、家同士の大きな約束だということも、なんとなくではあったが理解をしている。

 ……嬉しい、けど。

 婚約をしてどう変わるのか、よくわからない。

 その先のこともなにも知らない。

 ……でも、なんか、こう。ドキドキする。

 心臓が大きな音を立てている。

 鼓動が早まり、頬を真っ赤に染まっていく。

「あー、ごめん。言い方が悪かったよね」

「なんで謝るんだよ。嘘を言ったのか?」

「嘘じゃないよ。でも、セシルを困らせるつもりもなかったんだよ」

 ルシアンは照れくさそうに笑った。

 謝ってはいるものの、発言を撤回するわけではないようだ。

「婚約は決まっているんだ。本当は侯爵閣下から話を聞くべきなんだけど、我慢できずにプロポーズしちゃっただけで」

 先ほど、ルシアンが言っていた侯爵からの話というのは、セシルの婚約に関するものだったようだ。

 それを、うっかりと口を滑らせてしまった。

 ルシアンはわざとらしく両手を合わせて謝った。

 王国にはない文化だが、ルシアンは度々ごまかすように謝る時にしている仕草だった。


* * *


 ……お父様。すごく後悔してるな。

 セシルは昼間のやり取りを思い出しながら、目の前でワインを飲みながら涙を流している父親を見つめていた。

 王国の宰相として活躍しているものの、セシルの前では末っ子を溺愛する父親である。それを痛感しているのか、父親の隣に座っている母親の機嫌が悪い。
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