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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る
04-1.
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* * *
自室のベッドに埋もれるようにセシルは丸くなっていた。
頬を伝う涙を拭う気力もない。
ルシアンは追いかけてこなかった。セシルを引き留めようともしなかった。
その事実がセシルの恋心を傷つける。
「セシル。なにがそんなに悲しいんだい?」
自室に引きこもったセシルを慰めるのはブライアンだった。
年の近い兄ならば、セシルも心に秘めた思いを打ち明けてくれるかもしれないと考えたのだろうか。
頭から布団を被り、丸くなっているセシルの背中を優しく撫ぜながら、ブライアンはセシルが打ち明けてくれるのを待つ。
「……兄様」
セシルは布団の中から声を出す。
顔を見られたくないのだろう。
「俺、ルシアンが好き」
セシルの言葉をブライアンは聞いているだけだ。
肯定も否定もしない。
その間、布団越しに背中を撫ぜられているだけだ。それだけなのに、セシルは不思議と思っていることを口にすることができた。
「一緒にいたい。婚約して、嬉しかったのに」
涙がベッドを濡らす。
婚約の重みを知っていた。それでも、セシルはルシアンと一緒にいられるのならば、乗り越えていけると根拠のない自信を持っていた。
その自信は瞬く間に崩れていく。
恋心を自覚した途端、婚約の重みに潰されそうになる。
「ルシアンだって、俺のことを好きだって言ったのに」
セシルの話を聞き、ブライアンの表情が険しいものになる。
布団の中で丸くなっているセシルは気づいてもいなかったが、弟を溺愛しているブライアンにとって面白い話ではなかったのだろう。
「でも、バカ王子にあんなことを言われても。ルシアンは怒りもしないんだ」
怒っているルシアンが見たかったわけではない。
しかし、セシルは自分の婚約者だと声をあげてほしかったのかもしれない。
エドワードとルシアンが喧嘩をすることを望んだわけではない。
ただ、なにも文句を言わずに聞いているだけだったルシアンに対し、その程度の相手なのかと不安になってしまった。
自室のベッドに埋もれるようにセシルは丸くなっていた。
頬を伝う涙を拭う気力もない。
ルシアンは追いかけてこなかった。セシルを引き留めようともしなかった。
その事実がセシルの恋心を傷つける。
「セシル。なにがそんなに悲しいんだい?」
自室に引きこもったセシルを慰めるのはブライアンだった。
年の近い兄ならば、セシルも心に秘めた思いを打ち明けてくれるかもしれないと考えたのだろうか。
頭から布団を被り、丸くなっているセシルの背中を優しく撫ぜながら、ブライアンはセシルが打ち明けてくれるのを待つ。
「……兄様」
セシルは布団の中から声を出す。
顔を見られたくないのだろう。
「俺、ルシアンが好き」
セシルの言葉をブライアンは聞いているだけだ。
肯定も否定もしない。
その間、布団越しに背中を撫ぜられているだけだ。それだけなのに、セシルは不思議と思っていることを口にすることができた。
「一緒にいたい。婚約して、嬉しかったのに」
涙がベッドを濡らす。
婚約の重みを知っていた。それでも、セシルはルシアンと一緒にいられるのならば、乗り越えていけると根拠のない自信を持っていた。
その自信は瞬く間に崩れていく。
恋心を自覚した途端、婚約の重みに潰されそうになる。
「ルシアンだって、俺のことを好きだって言ったのに」
セシルの話を聞き、ブライアンの表情が険しいものになる。
布団の中で丸くなっているセシルは気づいてもいなかったが、弟を溺愛しているブライアンにとって面白い話ではなかったのだろう。
「でも、バカ王子にあんなことを言われても。ルシアンは怒りもしないんだ」
怒っているルシアンが見たかったわけではない。
しかし、セシルは自分の婚約者だと声をあげてほしかったのかもしれない。
エドワードとルシアンが喧嘩をすることを望んだわけではない。
ただ、なにも文句を言わずに聞いているだけだったルシアンに対し、その程度の相手なのかと不安になってしまった。
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