あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

文字の大きさ
56 / 60
第二話 【あやかし喫茶】は縁を結ぶ

01-16.

しおりを挟む
「ないねぇ」

 美香子は迷わず答えた。

 ……急に霊感が目覚めたのでしょうか?

 若葉は美香子の言葉に疑いを抱く。しかし、視たことがないと嘘を吐く理由もなかった。

 ……やはり、不味そうな匂いがするのは死期が近いからでしたか。

 その為、簡単に真実を導き出せた。

 人は死期が近くなると人ではないものが視えるようになる者がいる。美香子もその一人なのだろう。すぐに命を落とすものではないが、長くとも数年以内には命の灯は燃え尽きるような状態だ。

 美香子は自覚をしていない。

 しかし、数年しか生きられないと知ったところで大往生だと笑うだろう。

 ……伊織さんは看取るつもりなのでしょう。

 死の匂いに敏感な鬼の伊織が気づかないはずがない。

 若葉はそう判断し、美香子から目を逸らした。

「そうですか。それなら鈴に会えてよかったですね」

 若葉は話を逸らした。

 美香子はそれに気づきながらも指摘しない。

「お仕事はいつでも来れる時でかまいません。特別にお店の開いていない日でも仕事をさせてあげます」

「お店が開いていないと不便じゃないのかい?」

「そうでもないですよ。伊織さん、部屋をすぐに散らかしますし。鈴はお菓子を隠すので。その時は若葉と一緒に部屋の掃除をしてもらうだけです」

 若葉は開き直っていた。

 あやかし喫茶は不定期に行っている喫茶店だ。店主である伊織が鬼頭自警団の仕事により出かけていることも珍しくなく、若葉と鈴だけは店を開けない。

「本当は若葉は喫茶店の仕事をしたいのです。でも、伊織さんがいないと料理を作ってくれる人がいなくてお店を開けれないのです」

 若葉はわざとらしく愚痴を零した。

 ……婆さんか坊やのどちらか、料理を作れたりしないですかね。

 伊織がいない時の仕事の分担はすべて若葉に任せられている。

 若葉は伊織から信頼されている。だからこそ、安心して任せられると判断したのだろう。若葉もそのことに気づいているからこそ、好き勝手に振る舞うのだ。

「若葉は河童ですから、火は使えませんし」

 若葉は本能的に火を避ける。河童としての習性だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末

松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰 第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。 本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。 2025年11月28書籍刊行。 なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。 酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...