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第三話 賢妃の才能は底知れない
02-10.
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浩然の言い付け通りに振る舞い、籠に乗り込む。
その際、話したことのない妹の姿が見えた。妹の名は香月、翠蘭の三歳下の妹だ。才能と美貌を両親から引き継いだ香月に姉と慕われることも、翠蘭の儚い夢の一つであった。
そのような妹がいることが誇りだった。
いずれ、地べたを這うような生活から救い出してくれるのは両親ではなく、妹なのだと思っていた。
「……香月」
妹はなにを考えているのか、わからない。
しかし、堂々と名を呼べる立場になる為に翠蘭は籠に乗った。
後宮に期待を寄せていた。
華々しい世界の中に飛び込めるのだと期待しかなかった。
――それは三年の間の生き地獄と化した。
お飾りにすぎない賢妃には誰も従わない。
浩然が手配をした侍女や下女にすらも下に見られる日々の中、始まったのは壮絶な嫌がらせだった。
玄武宮の外に出れば嘲笑され、中に引きこもれば不気味な壺を置いていかれる。クモやムカデなどの虫の入った不気味な壺を見つけ、それを食料にしようと抱えていれば、その正体を聞かされて腰を抜かした。
香月ならばそのような目には遭わなかったと笑われる日々は、翠蘭の心を少しずつ消耗させ続けた。
それでも、妹を思えば立ち上がれた。
後宮は生き地獄だ。そのような場所に憧れの妹を送り込ませるわけにはいかないと自分自身を叱咤激励し、立ち上がる。その姿さえも、侍女や下女、他の妃たちも気に入らなかったのだろう。
嫌がらせは日々酷くなる一方であり、誰一人、翠蘭を助けてくれる人はいなかった。
そんな三年間、翠蘭は夢にまで見た華やかな日々が送れると信じて耐え抜いた。心の支えは玄家を離れる時に見た妹の姿だった。妹を守る為にがんばる姉という理想像を心の中に作り上げ、翠蘭はひたすらに努力を続けた。
後宮は衣食住に困ることはなく、嫌がらせにさえ耐え抜けば翠蘭にとって生き地獄も終わりの見える場所にすぎなかった。
後宮で賢妃になればいい。
そうすれば、玄家の居場所を与えられる。
ただひたすらに信じていた。
その際、話したことのない妹の姿が見えた。妹の名は香月、翠蘭の三歳下の妹だ。才能と美貌を両親から引き継いだ香月に姉と慕われることも、翠蘭の儚い夢の一つであった。
そのような妹がいることが誇りだった。
いずれ、地べたを這うような生活から救い出してくれるのは両親ではなく、妹なのだと思っていた。
「……香月」
妹はなにを考えているのか、わからない。
しかし、堂々と名を呼べる立場になる為に翠蘭は籠に乗った。
後宮に期待を寄せていた。
華々しい世界の中に飛び込めるのだと期待しかなかった。
――それは三年の間の生き地獄と化した。
お飾りにすぎない賢妃には誰も従わない。
浩然が手配をした侍女や下女にすらも下に見られる日々の中、始まったのは壮絶な嫌がらせだった。
玄武宮の外に出れば嘲笑され、中に引きこもれば不気味な壺を置いていかれる。クモやムカデなどの虫の入った不気味な壺を見つけ、それを食料にしようと抱えていれば、その正体を聞かされて腰を抜かした。
香月ならばそのような目には遭わなかったと笑われる日々は、翠蘭の心を少しずつ消耗させ続けた。
それでも、妹を思えば立ち上がれた。
後宮は生き地獄だ。そのような場所に憧れの妹を送り込ませるわけにはいかないと自分自身を叱咤激励し、立ち上がる。その姿さえも、侍女や下女、他の妃たちも気に入らなかったのだろう。
嫌がらせは日々酷くなる一方であり、誰一人、翠蘭を助けてくれる人はいなかった。
そんな三年間、翠蘭は夢にまで見た華やかな日々が送れると信じて耐え抜いた。心の支えは玄家を離れる時に見た妹の姿だった。妹を守る為にがんばる姉という理想像を心の中に作り上げ、翠蘭はひたすらに努力を続けた。
後宮は衣食住に困ることはなく、嫌がらせにさえ耐え抜けば翠蘭にとって生き地獄も終わりの見える場所にすぎなかった。
後宮で賢妃になればいい。
そうすれば、玄家の居場所を与えられる。
ただひたすらに信じていた。
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