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おさとうごさじ
7.
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緩んだ遼雅さんの腕の力が、私に顔をあげさせてくれる。逆らわずに見つめたら、やさしい瞳が私を射抜いていた。
「ゆずは」
「は、い」
「今日もかわいいです」
「ぜんぜん、そんなことないです、よ」
「本当は今すぐほしいけど、我慢します」
「……うん、と、偉い、です……?」
「あはは、ありがとう。うれしい」
褒められている人が、なぜか私の頭を撫でてくれている。
不思議な現象に笑って、もう一度音もなく近づく人の唇の熱を感じた。遼雅さんとのキスは好きだ。ふにゃふにゃになる。もっと近づきたくなる。
危険な、匂いがする。
「ご褒美もらっても、いい?」
「う、ん?」
「昨日、頑張ったから、今日は定時で帰れると思います」
「え、あ」
「明日はもちろん、休みです。ゴルフの接待も回避しました」
「遼雅さ、ん……?」
「今夜、たくさんもらっていい?」
「つ、かれてます、よね」
「きみが今日、ぐっすり眠らせてくれたおかげで、朝から欲情するくらいには健康です」
ストレートな言葉で胸に突き刺さる。
こんなにも求められて、断れるような人は、この世界にいるのだろうか。
私の手を取って、嵌められている指輪を見て目を細めている。いつもと同じように口づけて、もう一度口を開いた。
「一日我慢するから、夜は付き合って」
耳元に囁き入れられる。もう、ぜんぜん断る言葉が浮かんでくれない。
「柚葉」
「は、い」
「たっぷりあまやかすから、その気でいてね」
「……はずかしい、です」
「意識してくれるならうれしい」
「しすぎて、落ち着かないです」
「あはは、残業にならないように俺が調整します」
「それはだめです」
「じゃあ、ぴったりに終わらせて、おとなしく俺に抱かれてください」
「もう、」
「約束ですよ、かわいい俺の奥さん」
とびきりの笑顔で、あまい口づけをくれた。
長らくベッドの上でくっついていたくせに、いつもと同じ時間に家を出られてしまうから不思議だ。
遼雅さんは、どこまでも完璧な人だと思う。
『――さん?』
『佐藤さん?』
「あ、ごめんなさい。ええと、専務の予定は、木曜の3時からなら、2時間程度調整できます」
『ああ、じゃあ、そこ押さえてください』
「承知しました」
受話器を置いて、息を吐く。
完全に上の空だ。
今日も大忙しの橘専務は、休む暇なく外勤に出て行ってしまった。戻るのは退社の1時間前だ。
そこから雑務を済ませて本当に定時に帰ろうとしているのが伝わってくる。
毎週金曜に専務から頼まれていたはずの業務がなくなっているから、本気で私のことも定時で上がらせようとしているらしい。
「……ああ、もう」
朝から思考が、堂々巡りだ。
「ゆずは」
「は、い」
「今日もかわいいです」
「ぜんぜん、そんなことないです、よ」
「本当は今すぐほしいけど、我慢します」
「……うん、と、偉い、です……?」
「あはは、ありがとう。うれしい」
褒められている人が、なぜか私の頭を撫でてくれている。
不思議な現象に笑って、もう一度音もなく近づく人の唇の熱を感じた。遼雅さんとのキスは好きだ。ふにゃふにゃになる。もっと近づきたくなる。
危険な、匂いがする。
「ご褒美もらっても、いい?」
「う、ん?」
「昨日、頑張ったから、今日は定時で帰れると思います」
「え、あ」
「明日はもちろん、休みです。ゴルフの接待も回避しました」
「遼雅さ、ん……?」
「今夜、たくさんもらっていい?」
「つ、かれてます、よね」
「きみが今日、ぐっすり眠らせてくれたおかげで、朝から欲情するくらいには健康です」
ストレートな言葉で胸に突き刺さる。
こんなにも求められて、断れるような人は、この世界にいるのだろうか。
私の手を取って、嵌められている指輪を見て目を細めている。いつもと同じように口づけて、もう一度口を開いた。
「一日我慢するから、夜は付き合って」
耳元に囁き入れられる。もう、ぜんぜん断る言葉が浮かんでくれない。
「柚葉」
「は、い」
「たっぷりあまやかすから、その気でいてね」
「……はずかしい、です」
「意識してくれるならうれしい」
「しすぎて、落ち着かないです」
「あはは、残業にならないように俺が調整します」
「それはだめです」
「じゃあ、ぴったりに終わらせて、おとなしく俺に抱かれてください」
「もう、」
「約束ですよ、かわいい俺の奥さん」
とびきりの笑顔で、あまい口づけをくれた。
長らくベッドの上でくっついていたくせに、いつもと同じ時間に家を出られてしまうから不思議だ。
遼雅さんは、どこまでも完璧な人だと思う。
『――さん?』
『佐藤さん?』
「あ、ごめんなさい。ええと、専務の予定は、木曜の3時からなら、2時間程度調整できます」
『ああ、じゃあ、そこ押さえてください』
「承知しました」
受話器を置いて、息を吐く。
完全に上の空だ。
今日も大忙しの橘専務は、休む暇なく外勤に出て行ってしまった。戻るのは退社の1時間前だ。
そこから雑務を済ませて本当に定時に帰ろうとしているのが伝わってくる。
毎週金曜に専務から頼まれていたはずの業務がなくなっているから、本気で私のことも定時で上がらせようとしているらしい。
「……ああ、もう」
朝から思考が、堂々巡りだ。
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