不埒に溺惑

藤川巴/智江千佳子

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STEP 13 「ちょっと力貸してほしい」

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 機械がエラーを引き起こして、平凡な映画の、ロマンチックさもない、ありふれたワンシーンだけが永遠と繰り返し再生されているかのような、行き止まりの三週間だった。

 八城と別れた日、早朝から可憐の部屋を訪れて、徹夜明けだったらしい彼女の胸に泣きついた。私の様子に目を回した可憐が一通りの話を聞いて、それからはずっと一緒にいてくれた。

 シングルベッドに二人で横になって、学生時代のことをたくさん話して眠った。しばらく一緒に暮らそうと言ってくれた可憐に甘えて、ここのところは、ずっと可憐の家に入り浸っている。花岡にはかなり呆れた目で見られたけれど、可憐が無理を言って、話をうまく誤魔化してくれたみたいだ。

 八城の部屋に忘れてしまっていたスマホは、月曜日出社したときに、デスクの上に置かれていた。呆然と掴み上げて、画面を確認しようとボディをひっくり返すと、貼り付けられたスカイブルーのポストイットが、視界に入り込んできた。

 “ちゃんと話したい。戻ったら時間がほしい。あと、残業禁止”

 走り書きされた文字を見下ろして、詰まっていた息を丁寧に吐き下ろす。話したいことなんて何もない。私には、ない。

 一人で思いながらディスプレイを見おろして、八城からの連絡が、土曜朝の不在着信一件のみにとどまっているのを確認した。八城は私があの部屋を飛び出してからすぐに、私がスマホを置き去りにしてしまったことに気づいたのだろう。

 八城からの言葉を無視して、仕事に逃げて彼を忘れようともしたけれど、すぐに新崎に見つかってしまった。

「小宮さん、それ、明日ほかの一課のみんなに回してあげて」
「あ……、新崎部長、お疲れ様です」
「お疲れ」

 男性が明るい声色で話しながら、私の机の上にコーヒーを置いた。声につられて顔を上げ、視界に入った時計の短針の位置を見て、ようやくかなり集中して居残ってしまっていたことに気づく。

 最近は、あまり残業をしないようにと新崎と間瀬から業務の調整をされていた。苦笑して「すみません」と頭を下げれば、新崎は、土曜日に見せてくれていたような優しい笑みを浮かべてくれた。

「いーえ? かわいい後輩からのお願いなもんで」
「……かわいい、こうはい、ですか?」
「ハルだよ。……かわいい彼女、残業させるやつがいないか、見張っといてくださいってな」

 からからと笑って当然のように言われてしまった。今一番聞きたくない名前だ。新崎からすれば、私と八城は交際関係にある男女だ。こういうからかいを受けるのも当然だ。けれど、実のところ私と八城の関係は、すでにぷつりと断線して、元には戻らなくなってしまっている。

 それなのに、八城はこうして、いまだに私のことを大切にし続けてくれている。

「……やっぱ三週間は、さみしい?」
「え? あ、いえ……」
「顔、寂しそうだな~って思ってた。今回の出張先、連絡も通じないもんなあ」

 スマホに連絡が来たらどうしようかと思っていたのは、初めの三日くらいだった。一向に連絡なんて来なくて、一人でまた泣きたくなっていた。

 自分勝手な感情に嫌になってくる。きっと新崎に見つかった私の表情は、寂しさなんかよりも、自分自身への遣る瀬無さや空虚感から滲んだものだっただろう。

 部内の朝礼で、今回の八城の出張は今後の事業を進めるにふさわしい場所を見極めるためのもので、ほとんど連絡が通じないような現場を回ることになると言われた。連絡が来ない理由があることに安堵してしまう私は、感情を間違えている。

「ま、ハルが営業部の飲み会蹴って帰るくらいだから、小宮さんが優先順位一番だと思って、安心して良いと思いますよ。送り出しの日、結構高級な感じの店だったらしいけど、挨拶終わったら、一口も食わないで出てったみたいだよ」
「そ……うなんです、か」

 あの日の八城は、あまり食べていないという軽めの表現をしていた。私との時間を捻出するために、かなり無理をしてくれていたらしい。優しい過去の記憶が胸に突き刺さって、顔を顰めてしまいそうになった。

「とにかく、残業は少なめで頼みます。俺が睨まれるんで」
「わかり、ました」
「はは、お父さんも心配させちゃうでしょ」

 静かな声に囁かれて、一瞬肩が上ずった。デスクの横に立つ人を見上げてみれば、悪意なく微笑まれる。

「……ご存知、でしたか」
「ああ、うん、あれ、知らないと思われてました?」
「いえ……、はい。社内で、どれくらいの方に知られているのか、存じ上げなくて」
「ああ、そうか。てっきりハルから聞いたかと思った」
「八城さんから?」
「まあ、俺もハルも、副社長には世話になってるから、そこから聞いてたって感じかな」
「……そう、なんですね」

 なるべく笑顔を心掛けて口を開いていた。やっぱり、八城は私が父の娘であることを知っていた。

 この話からすると、八城はもしかするとずっと前から知っていたのだろうか。考えれば考えるほどに頭が痛くなってくる。

「小宮さん?」
「あ、いえ。帰る支度をします」
「うん、そうしてください」

 そうして、仕事に打ち込むわけにもいかず、それなりに業務を終わらせては、だいたい定時くらいで切り上げて、可憐の部屋で料理を作って二人で食べる生活を続けていた。本当に、そろそろ花岡の視線が痛いとは、思っていた。

 ぴったり三週間が経過して、久しぶりに中田の仕事を手伝って軽い残業をこなした。可憐から連絡が入っているかもしれない、と思ってスマホを取り出せば、珍しく、花岡から不在着信が残されている。

 重たい身体を引きずってエレベーターに乗り込んで、扉を閉める。

「あ、すみません」

 風のように入り込んできた男性の姿が、一瞬誰かの姿と被って見えた気がした。誰かの後ろ姿に、いつも彼の面影を探そうとしている。瞼に刻まれたすべてが克明に私の胸に焼き付いていて、すこしも、落ち着かなかった。

 まったくかかわりのない社員の後ろ姿を見ながら、ひどい幻覚に苦笑している。

 一階に降り立って、先に男性社員にエレベーターの中から出るように促して、後を追うようにしてゆっくりとエントランスに出た。正面玄関から外へと歩いて、ようやく電話を折り返す。

 “ちゃんと話したい。戻ったら時間がほしい。あと、残業禁止”

 スマホを手に取って、ディスプレイを覗き込む時でさえ、八城の言葉を思い返してしまう。八城は今日の夜に日本につくと聞いていた。そろそろ空港に降り立ったころだろうか。

「もしも――」
『小宮? ちょっと力貸してほしい』
「うん? 慌ててどうしたの?」

 いつも自信たっぷりの花岡から出ているとは思えないような切迫した色の声におどろいて、足が止まってしまった。

 花岡が慌てるのは、だいたい可憐のことだ。何かあったのだろうか、とスマホを持ち直して、ほんのすこし前まで考えていた男性の名前が耳に刺さった。

『八城さん、なんかヤバイ熱出したらしくて、早めに日本ついて今家らしいんだけど、ぶっ倒れたのか、話の途中で電話切れて』
「え? や、しろさんが?」
『仕事の連絡折り返してくれたんだけど、声もガラガラで、あっちの風邪もらったんじゃねえかって言っててさ』
「まって、途中で切れたって……」

 花岡らしからぬ慌てた言葉に、事態の深刻さを感じて、固唾を飲んだ。

『俺八城さん家知らねえし、看病したこともねえし……、小宮、行ってやってくれない?』
「え? 私……?」
『八城さん、たぶん小宮くらいにしか家の場所教えてないんだわ』

 花岡の声に、息が詰まってしまう。会ってしまったら、二人きりになってしまったら。あの部屋に、足を踏み入れてしまったら――。

『小宮、頼めない?』
「わか、った」
『よかった。助かる。何か喉やられてそうだから、それ系のなんか、作ってやってほしい』
「うん、わかった……。教えてくれてありがとう」

 よくよく考えれば、花岡は、私が八城と最終的にどうなってしまったのか、知らないはずだ。可憐は私と八城のことを社内の人に話すべきではないと言って、「誰にも話さない!」と宣言していた。

 花岡から見れば、私が可憐の家に転がり込んでいる理由も、三週間好きな人と会えなくて落ち込んでいるからだと思われているのかもしれない。

 私の八城への好意を慮ってのお節介だったとしたら、今は、逆効果だ。頭の中では、いくつも行かないほうが良い理由を並べているのに、私の足は急くようにスーパーにたどり着いて、迷いなく八城の部屋へと向かっている。

 八城はどんな顔をするだろうか。想像ができない。

 三週間のうちに、すべてを切り替えようと必死になっていた。たくさん目を逸らそうとしていた。逸らそうと思えば思うほどに、八城の幻影ばかりが浮かび上がっていたような気がする。

 抱いてもらって、それを思い出にするなんて、とんでもない。こんなにも、身体中に八城の痕跡が残って消えない。思い出になるまで、どれくらい優しい痛みに耐えなければならないのだろう。想像もできない。

 駅から徒歩五分圏内に位置する場に建てられたマンションは、私が考えをまとめるよりも早くに目の前に現れた。一人、ため息を吐いてみても答えは出ない。

 八城は、しきりに話がしたいと言っていた。何の話があると言うのだろう。

 責任をとって、結婚すると言われてしまうのだろうか。それが父からの願いで、仕方なく受け入れているとしたら、私はどうすればいいのだろう。どうしたって、喜んで、その胸に飛び込んでしまう。

 私は絢瀬菫のような人間ではない。思慮深くて、相手のことを思えるような優しい人間ではない。いつも自分ばかりだ。

『ぶっ倒れたのか、話の途中で電話切れて』


 けれど、ここで、苦しむ八城を見捨てる自分なんて、もっと嫌だ。

 言い訳が見当たらない。恩人の八城を冷たく突き放しておいて、のこのこと現れることへの謝罪の言葉も見つからない。八城が、不本意にでも結婚を申し出てきたら、断る勇気もない。何もかもが中途半端のまま、エントランスに足を踏み入れた。買い物袋を持ち直して、エレベーターに乗り込む。

 指先が震えていた。どうにか力を込めて震えを抑えつけながらボタンを押して、滑らかに上昇する浮力を感じていた。

 音もなく扉が開かれて、ゆっくりと足を踏み出す。三週間来ていなかっただけで、ひどく懐かしい気分になってしまった。ゆっくりと確実に足を踏みしめて、一枚の扉の前に立つ。

 あくまでも同僚という立場でここに来た。八城が苦しんでいるなら、どうしても、助けたくて、ここに来てしまった。ぐるぐると頭の中が乱されていく中、ただ八城が心配だという気持ちだけが残って、インターフォンをプッシュした。
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