【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ

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第21話 おじさんじゃないっぽい

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 ルドが狩りで捕ってきた肉を美味しくいただいた僕たちは、さらに北西へと向かっていた。
 ハインツさんが言っていた隠れ家とは、どうやらエルフの里のことらしい。
 エルフの里は、17年前の大火で、残念ながら、ほぼ全焼してしまったのだが、少しずつ復興が進み、今では、小さいながらも、エルフ族の集落になっているらしい。
 エルフはとても用心深い種族で、他の種族が近づいても、そこにエルフの集落があるとは気づかないらしい。
 だから、僕たちが隠れて暮らすにはうってつけだというのだ。
 でも、エルフの人たちが、人間の僕らを受け入れてくれるのだろうか。それがちょっと心配だ。

「あ、ウィル! 見て! あそこに鹿の親子がいる!」
「あ! ホントだ! うわぁ~可愛いね~!」
 僕とエタは、すっかり仲良しになっていた。今もこうやって手をつないで歩いている。
 先頭を案内役のハインツさん、その後ろを僕とエタ、最後にルドの順で森の中を歩く。
 なぜ、エタも一緒にエルフの里に向かってるのかというと、エタ本人が孤児院に戻るのを嫌がったのだ。
 孤児院は、お世辞にもあまりいい環境だったとは言えないようで、本人が拒否している以上、無理やり孤児院に送り返すのも躊躇われた。
 それに、市街地に戻ることで、また命を狙われるかもしれない。
 色々なことを考えあわせた結果、エタも一緒にエルフの里に向かうことに決めたのだった。
 ルドは、エタと僕におじさんと言われたのが相当ショックだったのか、いつにも増して無口だ。
 前に、父様とよぼうとしたら、めちゃくちゃ嫌がっていたし、もしかして、自分の年齢を気にしているのかな?
 そういえば、ルドの歳っていくつなんだろう……?
 確か、僕が生まれたときには、第一騎士団の団長になる、ならないって言っていたわけだから、少なくとも、成人はしてたよね?
 だとすると、僕が今年17歳だから、ルドは35歳以上だよね? 普段から鍛えているおかげなのか、アラフォーにはとても見えない。
 こんなに長く一緒にいるのに、あまりルドについて知らないと気づく。一瞬、胸がチクリと痛んだような気がしたが、エタの元気な声に、すぐ忘れてしまった。
「ウィル! ボク喉が渇いちゃった」
 打ち解けたエタは、頭を思いっきり撫でたくなるくらい可愛い。こうやって僕に甘えてくれるんだ。
「そうだね、大分歩いたし、少し休憩しようか?」
「うん!」
 あ~! この笑顔、癒される~~!

 ルドが、近くの川で水を汲んできてくれた。座れそうな倒木を見つけ、腰かける。
 エタがもじもじしているので、僕の膝に乗せてあげた。可愛いいにも程がある!
 ルドが、水の入った袋を渡してくれる。一つの水袋をルドと僕で共有しているから、必然的に、僕が口をつけたものに、ルドも口をつけることになる。
「ボクも!」
「え?」
 その様子をじっと見ていたエタが、ルドが持っている水袋に手を伸ばした。
「あれ? 足りなかった?」
 エタは、ハインツさんの水袋から水を飲んでいたけど、足りなかったのかな?
 ルドから水袋を受け取ったエタは、なぜか、それを僕に差し出してきた。
「え? 僕はもういらないよ?」
 どういうことだろう。僕に水を飲めってことなのかな?
「違うの! ボクも、ルドおじさんみたいにしたい!」
「え? ルドみたいに?」
 謎が深まる。
「ちょっと、エタ! あなた、子供のくせに油断も隙もありませんね!」
 今度は、なぜかハインツさんが悔しそうにエタを見ている。
 本当にどういうことなの? 困ってルドの顔を見ると、ルドも首を傾げている。
 とりあえず、もう一度水を飲めばいいのかな?
 戸惑いつつ、エタから水袋を受け取ると、水を飲んでみる。これでいいのかな?
 エタの方を見ると、今度は、僕が持っていた水袋に向かって手を伸ばしている。
「エタも飲むの?」
 よくわからないけど、好きにさせてあげようと思い、再び水袋をエタに渡す。
「ありがと! えへへ」
 はにかみながら水袋を受け取ったエタが、美味しそうに水を飲んでいる。
 やっぱりまだ水を飲み足りなかったのかな?
「エタ……許すまじ……」
 相変わらずハインツさんが一人ブツブツ言っていたが、深く突っ込むと面倒臭そうなので、スルーすることにした。

***

 数時間が経過した。
 時折休憩をはさみながら、北西へ向かっていた僕たちは、そろそろ陽が暮れるということで、適当な場所を見つけて、野宿することにした。
 すっかり僕に懐いたエタは、今も僕の膝に抱っこされている。
「ハインツさん、エルフの里まではあとどのくらい歩きますか?」
 まだ小さいエタが一緒だったので、あまり無理はさせたくない。
「そうですね。このペースだとあと4~5日というところでしょうか。ところでエタ、その場所を変わっていただけます?」
「イヤ」
「ちょっと、ハインツさん、何言ってるんですか……。あの変なエルフのいうことは全部無視していいからね?」
「うん!」
「ちょっと、ウィル。エタに会ってから、私の扱い酷すぎません?」
「気のせいですよ! ね、エタ?」
「ね? ウィル?」
 僕たちはすっかり仲良しさんだ。悪いが誰にも邪魔されたくない。
「ねぇねぇ、ボクまたあれ聴きたい!」
「あれ?」
「うん。ウィルが歌ってくれたやつ」
「ああ! 子守唄だね。いいよ。歌ってあげる」
 可愛くおねだりしてくれるエタのために、昨日と同じ子守唄を歌って聞かせる。
 エタは、しばらく嬉しそうに聞いていたが、疲れていたのだろう。すぐに眠ってしまった。
 起きないように、毛布にくるんで寝かせてあげる。
「ウィル、体調は?」
 歌い終わった僕を心配したルドが、声をかけてくれる。
「うん、今日はいつもよりは大丈夫みたい」
 それでも少しフラフラする。
「あれ? ハインツさんは? 俺とハインツで交代で見張りをする。あいつが先だ」
「そっか」
 そうだよね。昨日は僕も意識を失うように寝てしまったが、ルドとハインツさんが見張りをしてくれていたんだ。あれ? でも朝起きた時、ルドに寄りかかったままだったような……。もしかして、見張りから戻るたびに枕になってくれてたのかな……。
「あの、ありがとう。今日から僕も見張りに加わりたい」
「気持ちはありがたいが、その体調で本当にできるのか?」
「それは……」
「歌を歌った後は、必ず体調が悪くなるだろう? 無理をしなくていい。見張りなら、俺とあいつで事足りる。それよりも、ウィルはしっかり眠って、体調を回復するんだ」
「うん、わかった」
「さぁ、こっちへ来い」
 もう、そうするのが当たり前のようになってしまった。ルドに肩を抱かれながら、体調を整える。
「そういえば、もうすぐウィルの誕生日だな」
「え? そうだっけ?」
「ああ。ルシャード殿下の成人の儀からほぼ4か月になる」
「そっか、もうそんなに経ったんだね。僕も17歳かぁ! あ、そういえば、ルドって何歳なの?」
 この際、ずっと気になっていたことを聞いてみる。
「俺か? 俺は今年33歳になった」
「え? てっきりもっと歳上だと思っていた」
「む……。エタからすればおじさんかもしれないが、俺はまだまだ現役だ」
 やはりおじさん呼ばわりされたことを根に持っていたようだ。
 こんなになんでもできるのに、歳なんて些細なことにこだわっているルドが、ちょっと面白い。
「でも、僕が生まれたとき、第一騎士団の団長になるって言ってたよね? てことは、未成年で騎士団に入って、成人前には団長のレベルだったってこと!?」
「ああ、そういうことになるな」
 前からわかっていたけど、ルド、天才かよ。成人前に団長になれる実力ってどんだけ凄いんだ!?
 騎士団に入った経緯とか、僕の護衛を志願した理由とか、他にも聞きたいことはたくさんあったけど、今日も睡魔には勝てず、また今度教えてもらうことにしよう。
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