自衛官のスキル【正当防衛】はモンスターにも適用される 〜縛りがエグい異世界行軍〜

鹿

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37 白い赤鳥

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マグマに浮かぶ白い鳥は、燃えることもなく優雅に漂っている。

「セキチョウってあれですか!マグマに浮かんでる!」

「白いのじゃ。可愛いのじゃ!」

『ピュル~』

赤鳥は声を上げ、マグマに潜った。

「沈んだ!いや、潜ったのか?」

次の瞬間、煮えたぎるマグマの中から赤鳥が飛び出した。そして小さい体には似つかわしくない、長い尾をなびかせて、円形のフロアに降り立った。

ゼンジたちも丁度そのフロアにたどり着いた。
そこには3人のドワーフと、1人の人間が座っていた。

「これも定めか……遅かったなロックジョーよ。既に産まれてしもうたよ」

白髪のドワーフが力無く立ち上がった。

「長老!もうやめましょう」

ダンバールが叫ぶが、長老は首を振った。

「見よ」

長老は目の前の盛り上がった土を指差した。
その上にはダチョウの卵よりも、一回り大きい卵が乗っていた。右上部が割れている。

「双子って言ってませんでしたか?」

「卵が1つしかないのじゃ」

「ロックジョーよ。此奴らは何者だ?神聖なるこの地に、何故連れてきた」

長老と呼ばれた白髪のドワーフは、不機嫌そうにゼンジ達を睨みつけた。

「失礼しました。自分は……」

ゼンジは慌てて名乗ろうとしたが、そこにロックジョーが割り込んだ。

「ガッハッハ。ただの荷物持ちだ。そんな事より、見事に割れてるな。そこから産まれたのが、その赤鳥だな」

「そんな事って……」

「うむ。しかし、中にはまだ生命が宿っておる」

「え?割れた卵の中に?」

ゼンジたちは割れた卵を覗き込んだ。

「壁がある!中央から2つに分かれてる!」

卵の中には、縦にパーテーションのような仕切りがあり、割れていない反対側から生命力を感じる。

「このような事は、過去の記録にも残っておらぬ」

「1つの卵から双子が生まれるとしても、同時に出て来るのが普通でしょ!自分はこんな卵、今まで見た事ありません!」

以前地球で卵を割った時、黄身が2つ出た事があった。その時は何か良い事があるかもと、心を弾ませた事を思い出した。

「勿論ワシらもそうだ。しかしまだ産まれてはおらんのが現実だ。実際には、そこの者が産まれぬようにしておるのだがな」

「ガッハッハ。ガノン生きとったか」

「……なんとか」

ガノンと呼ばれた人間は、あぐらの上に両手で印を結んでいる。
それは反叉合掌と言われるもので、手の平ではなく、手の甲を合わせ、右手の平が上、左手の平が下になるように組むものである。

「MPは問題ないか?」

「エーテルを飲み続けてるので腹がタプンタプンですよ。それよりも体力の心配をしてください。三日三晩動きもせず、この体勢ですから」

魔導士の格好をしたガノンは、目の下が黒く、頬も痩けている。

「ガッハッハ。飯は食っとるか?」

「はぁ。その辺にしてください。ガノンが時を遅らせている間に、神酒を捧げなくては、全てが終わります」

「そうだったな。ゼンジ!樽を1つ出してくれ!ガッハッハ。間違うなよ。1つだぞ」

「それはフリですか?」

ゼンジは衣のうを出して、黄金のマタタビールの樽を1樽取り出した。その途端、揺れが少し強くなった。

「どうだ?」

長老の問い掛けに、ロックジョーは答えず樽を拳骨で粉々に砕いた。

「何をするのじゃ!」

ポーラが驚き叫んだ。しかし砕けた樽の中からは、酒は一滴も溢れ出なかった。

「空っぽだったのか?いや、そんなはずはない。自分が触れた時には、液体が動く感触があった!」

「ガッハッハ。やはり何者かに横取りされているな」

「横取り?蓋も開けてないのにですか?」

「ガッハッハ。そいつのせいでドボルは滅びるぞ」

「どういう事ですか!掻い摘んでじゃ無くちゃんと説明してください!」

ゼンジはリズベスを見たが、リズベスはやれやれと首を振った。

「はぁ。赤鳥は、この地を護る神獣です。赤鳥が現れる以前のファビリオン火山は、到底生物が住める場所では無かったと聞きます。はぁ。今も、荒れ狂うマグマの怒りを、かろうじて抑えているのです」

「かろうじて?卵だからですか?」

「はぁ。元々は2体いました。今は一体しかいません。もう一体は、忽然と姿を消したそうです」

「つがいですね」

「はぁ。違います。その生態は特殊で、定期的に卵に戻ります。その間も、ファビリオン火山の怒りを抑えるために、交互に卵に戻っていました。今は一体しかいないので、卵に戻っている間に、火山の怒りを抑えることが難しくなっているようです」

「卵を産むんじゃないんですか?」

「はぁ。自ら卵になるのです。それは不死ゆえの代償でしょう」

「不死?死なぬのか?」

「はぁ。不死とはそういうものでしょう。斬っても焼いても凍らせても、赤鳥には無意味です。しかし力を使い果たした赤鳥は、卵に戻り英気を養います。そして卵から孵る際、必要なのが神酒です」

「黄金のマタタビールがですか?」

「はぁ。エールでも構いません。しかしその種類に応じて、卵に戻る間隔も能力も変わります。神酒の力を借りずに産まれてしまった白い赤鳥は、直ぐに卵に戻るでしょう。そして再び長い眠りにつきます」

「ドボルには酒はないんですか?」

「はぁ。時間が無いので、これ以上の質問はやめてください。ドボルにも、ドワーフが好む豪炎酒がありました。はぁ。しかし今見たように、この場所に持ち運ぶと忽然と消えて無くなるのです」

「無くなる?どうして無くなるのじゃ?はっ」

リズベスに睨まれたポーラは、メロンを口元に当てた。

「はぁ。ドボルの豪炎酒は全てここに運び、全て無くなったそうです。そこで私たちのギルドに依頼が来ました。どんな種類でも構わないから、お酒を持ってきてくれと。私たちは気にも留めませんでしたが、お酒が好きなロックジョーさんは飛びつきました」

「ガッハッハ。リズ、それは違うぞ。俺はとてつもない危機を感じたんだ」

「はぁ。はぁ。ドボルに来ると、街が消えるかどうかの瀬戸際でした。持ち込んだエールも全て消えてしまいました」

「絶対自分で飲むつもりだったよな」

「間違い無いのじゃ」

2人はヒソヒソと、ロックジョーを中傷した。

「はぁ。私もそう思います」

(聞こえてた!)

「エールが無くなったのを良い事に、ロックジョーさんは、極上のお酒なら消えはしないと、根拠も無い話をし始め、取りに行くと譲りませんでした。ラムドールの村に居たのはその為です。はぁ。しかし、やはりと言って良いでしょう。結果は目に見えてましたから」

「どうすれば良いのだ。ワシらにはもう打つ手は無い」

「ガッハッハ。確かに。水やエーテルは消えんのに、俺の酒だけは消える。どうしたものか……」

「俺のって……横取りされると言ってたのは、何故ですか?」

「俺の勘だ。ガッハッハ。そいつは酒好きなんだろう」

『やっぱりおかしい……』

「メロンちゃんどうしたのじゃ?」

『この気配は間違いない……あいつだ』

「あいつって、赤鳥の事か?」

ゼンジの問いかけに、メロンは首を振った。

「はぁ。そのぬいぐるみは本当にぬいぐるみですか?私の探知では、力強い大きな生命が宿ってるように感じますが」

『リズベスとやら、我の偉大なる力に気付くとは、なかなかやるね。特別に良い事を教えてあげる。この近くにイフリートがいるよ』

「そんな馬鹿な!!イフリートだと!ゴホゴホッ」

「長老!無理をなさらずに」

長老を2人のドワーフが横から支えた。

「ガッハッハ。イフリートか……有り得ん話では無いな」

「しかしイフリートとは、スフィアにある、いや、魔界にある伝説の存在ではないか?」

ダンバールは訝しげにポーラに問いかけた。メロンはポーラが操っているものと思っている。

「はぁ。私の探知には、そのような存在は感じませんが」

『我には分かる。ここに来た時から、あいつの気配が大きくなったからね。それは樽を出した後だよ。あいつは無類の酒好きだからね』

「だったら酒はもう出さない方が良いだろ?そいつが現れたら厄介だ」

ゼンジの言葉にヒントを得たのか、ロックジョーが満面の笑みでゼンジの肩を叩いた。

「ガッハッハ。俺の酒が盗まれるのは癪に触るが、後3樽出してみろ。イフリートが姿を現すかもしれん」

「冗談でしょ!伝説の存在が現れでもしたら、自分たちに勝ち目はないでしょう!」

「ガッハッハ。このままでもいずれ、ここら一帯はマグマが吹き出し、地上は溶岩で溢れかえる。イフリートを誘き出して、ツケを払わせた方が気分が良い」

「気分の問題じゃないでしょ!」

『何か変だ!』

「メロンちゃん。どこが変なのじゃ?」

『イフリートの気配が変わったんだ!怒り……いや、憎悪に飲み込まれて行く!!まさか、そんな』

直後、フロア全体が大きく揺れた。

「地震じゃ!逃げるのじゃ!」

わたわたと慌てるポーラとは裏腹に、いつもふざけているメロンには、似合わない真面目な顔をしている。
揺れが弱まると、メロンが上を見て叫んだ。

『上だ!』

メロンの声で、ガノンを除く全員が天井を見上げた。

「ど、どこだ!何もいないぞ!」

「はぁ。この気配は、本当にイフリートがいるみたいですね」

ゼンジはそこら中を隈なく見回すが、それらしき物は何も見当たらなかった。

『ごめん。これはきっと地上だと思う』

「はぁ。そのようですね。行くべきではありません。私たちでは敵わないでしょう」

「ガッハッハ。長老。地上に向かうぞ」

「これも定めか……分かった、ワシに捕まれ」

「ガッハッハ。ガノン。もうしばらく耐えてくれ」

「期待してますよ」

ガノンは背中を向けたまま、力強く応えた。

「はぁ。やはりそうなりますよね」

「ちょっと待ってください!危険すぎます!」

「そうじゃ!大地を揺らすほどの化け物じゃ!」

『ゼンジ!ポーラ!このままだと、きっとイフリートがステラを滅ぼすよ』

「それなら尚更行くべきじゃないだろ!」

『大丈夫だよ。我に任せて』

「メロンちゃん……ゼンジ!メロンちゃんに賭けてみましょう」

ゼンジは、ポーラとメロンを交互に見て微笑んだ。

「分かったよ。行こう。イフリートの元へ」

ゼンジたちは、それぞれ長老に触れた。

長老は懐から桃色の玉を取り出し、全員に目配せをした。

「ドボル・ロウ・ファビリオン」

長老の言葉と共に視界が切り替わり、地上にある神殿の入り口が目の前に現れた。


(女神様、こちら自衛官、
マグマを泳ぐ白い鳥。なかなか幻想的ですね。もっと、のんびり見ていたかったんですが。どうぞ)
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