ユメノオトコ

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27、風邪をひいたヤクザ

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程よくカップに注がれた熱いコーヒーが、カップの中の壁を舐めるように上下する。
アーモンドにも似た少し重い香りが鼻先を掠め、それが舌に染み込む深みのある味を連想させた。

「熱いですよ」

そう言われて、手渡されたカップから、体温より、遥かに高く感じる温度が伝わってくる。
が、躊躇わず、それを口元に寄せた。
カップの淵に触れた唇と舌の上を、炭火で香るコーヒーが喉の粘膜を焼きながら胃の中へと落ちて行く。
熱い物が喉を伝って体の中を通った事に、なぜか胸がホっとする。
その感覚が間違ってることに気付きもせず、オレは続けてカップの中身を啜った。
熱さに慣れると、自分の意志というより『クセ』のように、それを喉に流し込んだ。
数分で空にしたそれを手から奪われ、オレは「ご馳走さん」と声を掛けてから、今度は口に煙草を咥えた。
「よく、こんなアツアツのものを、一気に飲めますね」
信じられない、という顔で、中澤が小さく溜め息を吐く。
その、ふっと吐いた吐息すら、同じ匂いに変えるところがコーヒーの憎いところだ。

自分のカップも空にした中澤が、キッチンへ戻りかける。
アイツの口許から、コーヒーの香りがした。
その肩を掴み、半ば力任せに振り返らせると、中澤が驚いた顔でオレを見上げていた。

中澤の舌から、香ばしい苦みを絡め取る。
柔らかな緋肉から染み出てくるような微かな炭火の匂い。
まるで中毒のように夢中になって中澤の舌にしゃぶりついていると、さすがに胸を押された。
「新藤さん・・っちょ、いい加減に・・、人が来ますよっ」
「この味、好きなんだよ」
「じゃあ、おかわり持って来ますから・・っ」
「バーカ。お前の舌の事だ」
オレの台詞に絶句した中澤は、目を見開き唇を微かに震わせる。
「お前がコーヒーばっか飲むから、オレまでこの味に慣れちまっただろうが・・」
有無を言わせず、再び中澤と唇を繋げる。
すると、中澤からも積極的に舌を絡めようとしている動きを感じ、オレは舌打ちしたくなった。
なぜって?
そんなのは、誰だって食事(美味い物を食っている最中)の邪魔をされれば、怒りたくなるのは当然だろう。
もちろん、負ける気は更々無い。
深く捩じ込み、押さえつけ、味わっているのはどっちかを教えてやる。
すると。
「オレ・・」
息も絶え絶えになりながら、中澤がとろりと濡れた目で、オレを見た。
「オレも、新藤さんの煙草の味、嫌いじゃないです」

その瞬間、優劣も、勝ち負けも、どうでも良くなった。

全く、世の中は不況だ値上げだ、と騒いでる中、こんなに毎日が充実しているヤクザが存在していいもんなのかどうか。
やっぱり、この世ってのは、どうもおかしな作りになっている。
どんなにクソ真面目に働こうが、決して金の巡って来ない人間がいたり、毎日誰と会う事もなく大金を稼げる人間がいたり、そしてそのどちらでもない人間と、オレのように他人を搾取して生きている人間がいる。

当たり前のように理不尽な世界だが、オレがそう感じている事こそ、世の中の奇異だろう。

かわいい部下のために、わざわざ自分がしなくてもいい仕事に手を出したり、運転手付きの迎えがあるのに、わざわざ中澤を呼びつけて迎えに来させたり、全く毎日楽しい限りだ。
ひたすらに搾取する側にいる自分に、こんなに毎日が楽しいと思える日がくるとは、思ってもみなかった。
全く、世の中、間違ってる。

「新藤?」
「はい」
西遠に呼ばれて顔を上げると、訝し気な顔で額に手を伸ばされた。
「どうかしましたか?」
「お前さ、熱あんじゃない?」
「え?」
と、言ったのは中澤の声。
「変な顔してると思ったんだよ。妙にニコニコしてるし・・」
そう言われて、そんなバカな・・と思ったが、今の自分を思い返せば、納得出来た。
この妙な幸せ感は、熱のせいか。
確かに、どこぞの叔父貴の死に損ねた話で、死ぬ間際には脳内麻薬が分泌され、痛みも苦しみもなく、ふんわりと極楽へ逝ける・・と、聞いた事がある。まあ、極楽に逝ける云々は冗談だろう(地獄に落ちるしかないような人種だ)
こんなに仕事が楽しいと感じるのも、中澤の顔を見て嬉しく感じたのも、きっと、それと同じだった訳だな。
「熱があるなら休んだ方がいいですよ。寝ましょう」
中澤がオレの肘を取って、椅子から立ち上がらせる。
「きっとオレのせいです。やっぱり染しちゃったんですね・・」
「寝る?ベッドへか?」
「そうですよ。熱があるなら、ゆっくり体を休めないと」
「お前は、ゆっくり体を休めなくても治っただろうが」
「あんな荒療治、普通あり得ません。とりあえず、熱を計りましょう」
そして計ってみると、
「38度ありますよ・・8度4分、大丈夫ですか?」
「へ~すごいな。オレも最近、熱なんて出した事ないから久しぶりに体温計見たぞ」
「西遠、その驚き方おかしいです・・」
「新藤、今日は休んでいいぞ。チガキ、新藤のマンションに送ってあげて?」
そうニッコリ微笑む西遠の笑顔にどこか不敵なものを感じたが、その場は気に掛けず、新藤を送る事にした。




「新藤さん、大丈夫ですか?」
玄関のドアを開けて部屋の中に入ると、甲斐甲斐しく中澤がオレの靴を仕舞い、スーツの上着を脱がせる。
「大丈夫も何も、どこもおかしい所なんてないが・・」
「熱が高過ぎて、自覚出来ないんじゃないですか?ふわふわしません?」
「ふわふわ・・」
なんだそれは・・そう思って口にしたら、途端に中澤が噴き出した。
「いや、すみませんっ新藤さんの声で、まさか『ふわふわ』なんて可愛い言葉が聞けると思わなくて・・」
そう言って頬を染める中澤の顔を見て、どうしてだか無性に泣かせてやりたい衝動に駆られる。
いっそ自分がベッドへ寝るより、中澤を裸で寝かせて、手錠でも嵌めて延々とチンコを嬲ってやろうか。確か、前に拉致監禁、拷問用に使ったカテーテルの余りがあった筈だ。
そんなオレの嗜虐的な視線に気づいたのか、中澤がすぐに表情を元に戻した。
「そういえば、清涼飲料水とか解熱剤とか必要ですよね。ちょっと買って来ます!」
「あぁ?そんなもん・・」いらねえ、と振り返ると、既に中澤の姿は玄関から消えていた。
あいつもなかなか場数を踏んできただけある。こういう場面での危機回避能力の向上には目を見張る物があった。
それも、自分によって鍛えられたと思うと、少し悲しいような気もしたが、この先、いつどこぞの輩に簡単に捕まる位ならマシかと考え直した。

「新藤さん、買って来ましたよ・・って、何してんですか!」
マンションへ戻ってきた中澤は、新藤を見て慌てた。
ベッドへ大人しく入っている筈はないだろう・・と、予測はしていたが、まさか一杯やってるとは思わなかった。
いくら無自覚とは言え、自分の体の熱が高い事を知っているのに、ビール片手にテレビをザッピング。
中澤は、この人、本当に具合が悪いのだろうか・・と、不安になる。
「体に響きますよ。テレビは消します」
新藤の手からリモコンを奪い取って、テレビを消し、中澤は新藤をベッドへ誘導する。
「いいですか?熱があるんですから、休んで下さい」
さあ、寝ましょう。と、中澤が新藤のシャツのボタンを外し、下も脱がせた。
パンツ1枚の姿にして、ベッドへ入るよう促すと、予想通りに自分も中へと引っ張り込まれそうになる。
「ちょ、そうじゃなくって!少しは寝て、体を休めて下さいよ・・!」
「寝ても寝なくても一緒だろ。それとも汗でも掻くか?」
「新藤さんっ熱が下がったら、いくらでも相手をしますから・・っ少しは自分の体を大事にして下さいよ!いつも寝不足で、無理ばっかしてて、そのうち、体壊したらどうするんですか!?あなたの代わりが出来る人間なんて、どこにも居ないんです。熱がある時くらい、オレに面倒見させて下さい・・!」
そう真剣に中澤に泣きつかれたら、新藤も大人しくなる。(この時点で無理強いしない新藤の様子に、新藤が不調である事を確信する)

そんなこんなで、なんとか新藤をベッドの中へ落ち着かせる事に成功したのだが、暇で暇でしょうがない新藤は、ベッドの中で上半身裸で肘を突いて横になり、ただひたすらに中澤の顔を見つめ続けていた。
その視線が、痛くもあり、熱くもあり、中澤はどうしたらいいものかと、読んでもいない本のページをペラペラと捲り続ける。

「なあ、いつまでこうしてればいいんだ?」
ついに飽き飽きしたのか、新藤がシーツ上に置いた手の人差し指でイライラとカウントを取っている。
「まだ30分も経ってないですけど」
「いつまでだって、聞いてんだよ」
「・・・明日の朝までです」
「明日!?」
中澤の答えに、新藤はベッドから飛び起きた。
「明日まで、ずっとこのままか!?」
余程驚いたらしく、布団の中に隠し持っていた筈の手錠が、飛び出した。
「新藤さん・・!なんですか、それ!」
「あ・・?手錠に決まってんだろう。他に何に見える?」
「開き直らないで下さいよ・・。そんなもの使わなくたって、オレは逃げませんよ」
中澤の台詞に、新藤が眉を上げる。
「なら、オレが退屈で死なないように、服を脱いでここへ上がれ」
大欠伸をしながら首を捻り、新藤は枕の上に肘を突いて横向きに寝ると、立てた膝の上へ腕を乗せた。
パンツ一枚という、なんとも卑猥な姿だ。

38度以上も熱があるのに、普通にビールは飲むは、黙って寝てもいられないはで、これじゃあ、幼児と一緒だな、と、子どもの頃の事を思い出す。
友人の弟に、こういう子がいた。
インフルエンザで39度の熱を出していたが、まるきり元気なのだ。
出校禁止で外出禁止のため、外には遊びに行けないから、家の中で暴れ放題。
あまりの元気ぶりに、兄である友人でさえ手を焼いていたような記憶がある。
そして、彼の家に遊びに行った自分は、まんまとインフルエンザに罹った。
が、友人の弟を見ていたから大した事はないだろうと思っていたら、しっかり熱が出た自分は3日間も寝込み、初めてインフルエンザというものが恐い病気だと知ったのだった。

とにかく、新藤さんのイライラを落ち着かせないと・・(何されるかわかったもんじゃない)

新藤の怒りを抑えようと、中澤は出来る限り新藤の要望に答えようと決心した。
元より、面倒を見るつもりで来ているのだ。
それが、清拭や水枕を用意する代わりに、添い寝をするだけの話だ。
とにかく全裸になり、新藤の前に正座する。
「新藤さん、手錠は無しですよ?」
「それは、お前次第だな」
不敵に笑う新藤の体の下へ引き込まれ、すかさず唇の隙間に熱い舌が入ってくる。
「ん・・っ」
その体をなんとか押しのけて、新藤の体の下から這い出そうとすると、充血し始めた肉塊を無造作に掴まれて、仰け反った。
「ちょっと、新藤さん・・!オレ・・っ」
「言ってるそばから期待を裏切らない奴だな。そんなに手錠、嵌められたいのか?」
「違います・・!アンタは熱があるって何回言えば・・っオレが、オレがしますから」
「なにを」
意味がわからない、と言う顔で眉間に皺を寄せる新藤と、体の位置を入れ替える。
「オレが、全部、やります。新藤さんは動かないで、寝てて下さい。言ってくれれば、何でもやりますから・・」
「何でも・・?」
どこか面白くなさそうな顔で、新藤は中澤の腕から手を離した。が、やはり、指図されるのが気に入らない。
「オレをイカせられると思ってんのか?」
「お、・・・思って・・・ませんけどっでも、無理させられないじゃないですか。新藤さん、少しは自分の体の状況をわかって下さいよ・・。オレのテクなんかじゃイケないかも知れませんけど・・、オレが出来ることなら、なんでもしますから・・。オレは、少しでも早く治って欲しいんですよ」

そう自分から目を俯かせ、頬を染めた中澤の下腹で、ギンギンに反り起つ欲棒ーーー。

そんな可愛い姿を見せられたら、さすがに照れた。
なんなら手錠を嵌めて、イヤと言う程犯してやる気だったが、中澤の健気さに気持ちが削がれた。
「ーー好きにしろ」
そう呟いて、降参とばかりに自分の額に手を当てる。
「じゃあ・・好きにします」
そう呟いた中澤がオレの首筋に唇を押し当ててくる。
ゾクリと、肌が粟立つ。
中澤の舌先が、首筋を恐る恐る辿り、鎖骨や肋骨の上にくると、そこを丁寧になぞる。
やけに優し過ぎる愛撫だと、自分がオンナになった気分になり、新藤は髪を掻き上げた。
こんな風に抱いてきたのか。
こんな風に甘く優しく触れるのか。
そう思うと、バカバカしくなってくる。
とんだ茶番だろう。
中澤にしゃぶらせる事はあっても、1から体を任せた事など無い。
こんな風に、一体誰を抱いてきたってんだ。
こんな愛撫で、誰が満足すると思ってやがる。
西遠だって、こんな触れ方じゃあ悦ばないだろう。
これじゃあ、まるで処女相手みたいじゃねえかよ・・。
そこで、端と気づいた。

初めてだからか・・?

だから、こんな、爪の先まで舐めるような愛撫を・・?

途端に恥ずかしくなる。
「おい、ふざけてんのか?」
テメーがやってんのは、なんだ?
そう文句をつけてやろうと、体を起こそうとして肩を押さえつけられた。
「待ったナシ、ですよ。今、いいとこなんですから」
そう口元だけ引き上げた中澤の目が昏く歪む。
「アンタを、アンタの体を、オレが自由にしていいなんて・・こんな事、一回あるかないかなんだから」
そう言いながら、再び唇での愛撫が始まる。
「お前な・・!」
性感帯でも何でも無い場所にまで施される、まどろっこしいような舌と唇の愛撫。
「好きにしていいって、自分で言ったの、忘れたんですか?」
吐息混じりに肌に吸付いてくる中澤の唇が、微妙なタッチで動く。
さわさわと体の隅々まで唇を這わされ、まるで、ぬるい拷問でも受けている気分だ。
「どこまで嘗め回す気だ?もっと他に、念入りにしゃぶるトコがあるだろうがよ」
「もう待てないんですか?オレは、いつまでだって、アンタの体味わってたいんですけど・・」
そう見つめられてキスされたら、舌打ちしか出来ない。
「この童貞野郎・・!」
新藤の悪態に、中澤は思わず目を見開いた。
それから、見る間に顔を、いや首まで真っ赤に染める。
「そんな・・オレ・・」
どうやら、無意識に、新藤に対してどんな愛撫を施していたのかを、自覚したらしい中澤が慌て出す。
「だって・・しょうがないじゃないですか・・っオレ、こんな風に新藤さんの体に触れるの・・初めてで・・だって、・・好きなんですよ?好きな相手の体、好きにしていいって言われて・・燃えるに決まってんじゃないっすか・・!」
恥ずかしくてしょうがないって風に、中澤が首を振る。

今更・・自覚してんじゃねえよ。

「やめんじゃねえよ。ただでさえ、煮え滾ってんだ・・待っててやるから・・好きにヤれよ」
そう言いつつ、自分の上に覆い被さってる中澤の尻を両手で割るように揉み込んでやる。
「あ・・!ちょ・・っ」
「続きやれって。あんまり、まどろっこしいと、突っ込んじまうぞ」
「新藤さん・・っ」
オレの煽りに揺さぶられた中澤は、もう堪らなくなったのか、ついにオレの勃起に顔を寄せた。
その頭を、両手で撫でてやる。

甘くて、甘過ぎて、オンナ相手にしてるような、反吐が出そうな愛撫だ。

なのに、体は高まってく。
先端の孔から中澤の唾液が染みてくる程しゃぶられて、普段より3割増し芯が太くなった気がする。
「新藤さん・・オレ・・これ、挿れられる気が、しないんですけど」
「ふざけんじゃねえぞ。お前がここまで育てたんだ。責任取れよ?まあ、自分で挿れられないってんなら・・・手錠だな」
「わ、わかってます・・っ新藤さんは寝てて下さいっオレが全部ヤリますから・・!」
自分で解した尻を、中澤がオレの勃起の上に宛てがう。
ヌルリと滑る感覚にも快感が芽生えた。
「ッチ・・いい尻しやがって・・」
濡れた粘膜を擦り付けられた勃起が、ドクリと大きく脈打つ。
「ハア・・ハア・・い、いれますよ・・?」
自分の体に言い聞かせるように、目を瞑ったまま呟き、中澤は腰を揺らめかせる。
ヌチャヌチャと少しずつ喰い込ませられていく勃起に、中澤の中が絡み付いてくる。
「あ・・あ・・・っ新藤さん・・っ新藤さん・・!」
「チガキ・・っ」
どちらからとも無い。
もっと深く、もっと奥へと腰を揺らし、少しずつ少しずつ、ついに根元まで繋がる。
全て、中澤の中に収まった時には、確かに目眩のようなものを感じた。
クラりとしたのを、中澤が気遣う。
「絶対、動いちゃだめですからね・・オレが、ちゃんとイかせてあげますから」
そう言って動き出した中澤に、新藤は背筋を引き攣らせた。

ーーーーーのも、最初だけ。

ぎこちなく緩慢なグラインドに、新藤は苦痛さえ覚えた。
「お前な・・、本気で、オレをイかせる気あんのか?」
胸の前で腕組みし、あぐらを掻いた新藤の太腿の上では、中澤が懸命に腰を動かしながら喘いでいる。
「も・・出そうです・・っ出るっ出、る・・新藤さんっ新藤さんっ」
「ったく、もう動くからな。一人でイキそうになりやがって・・っ」
「ダメ・・ダメですって・・オレがヤるから・・って、言うか、新藤さんに動かれたら、出ちゃいます・・っ」
「テメエ我が侭言うんじゃねえよ・・!一体どんだけ、オレに勃起させたままでいさせる気だ?この状態、維持させられてるオレの方が、脳みそ上気せるワ」
そう言うが早いか、新藤は中澤の尻を掴んで、自分の腰にグッと引き付ける。
「ア・・・」
か細い中澤の悲鳴が宙に消え、ついに新藤の抽挿が始まった。
「や、ちょ・・出・・るっ・・!!」

結局。

3割増し巨大化した新藤に攻められた中澤は、腰が立たなくなるまで啼かされ続け、西遠が夕方に見舞いに来た時には、ベッドに寝かされた中澤が、逆に新藤に介抱されていた。
「そういや・・・新藤が寝込んでるとことか、一回も見た事ないもんな」
「社長もないでしょう。きっとそういう体質の家系なんでしょ。特に痛みとか鈍いし」
「不感症みたいな言い方ヤメろ。オレはチガキがくれるなら、なんでも愛と受け取れる」
「それマゾの思考ですよ」
「お前だってそうだろ?しかも、最後反抗するとことか、お仕置きして欲しいみたいじゃん」
「そこまでになるには、相当時間掛かりそうですけどね」
「大丈夫。オレ、気は長い方」
そう言いながら、西遠がベッドの横に座り、深く眠りに落ちている中澤にキスをする。
「どの口が言うんですか」
呆れていると、西遠がスーツを脱ぎ出した。
「もう、当分、何も出ませんよ」
「バーカ。風呂に入れてやるんだよ」
「もう、オレが入れました」
「ええ?じゃあ、水は?」
「さっき、飲ませました」
「軟膏・・」
「塗りました」

「お前って、本当に面倒見いいよな・・」
嫌な顔をして、短く溜め息する西遠に、
「でしょ?」
と、新藤が唇に煙草を咥えたまま、ニンマリと笑った。
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