兄ちゃん、これって普通?

ジャム

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「頼むからっ放せってば!」
掠れた声に、両手でホールドした腰から顔を上げる。
そこにはキツく眉を顰め、黒目を潤ませ今にも泣き出しそうなダイキの顔。
思わずその顔に見惚れ、数秒ダイキの顔を見上げていると、隙をついたダイキが俺から慌てて離れ、スウェットを引き上げた。
「ダイキ!・・逃げんじゃねえよ。こっち来い」
俺は後ろのソファーに両手を広げて乗せ、ダイキをキツく見上げる。
「行くかバカっ!」
顔を真っ赤にして振り返り、ダイキはTシャツの前を引っ張って伸ばして、自分の股間を隠そうとする。
「・・こっち来い。いいから来い」
俺は少し首を傾げ、溜め息混じりにダイキを呼び続ける。
「・・やだ」
次第に弱腰になるダイキ。
「来いっつってんだろっ」
地を這う低温で短く怒鳴ると、ダイキの肩がビクリと上がる。
そして、恐る恐る、ダイキが俺に近づいて来る。

これが、『弟』に生まれた宿命。
どんなに抗おうとしても、俺には敵わない。
なぜなら、俺が『兄』だからだ。
兄という存在は、弟が自我に目覚めるより先にある。
ともすれば、母親よりも身近で、その存在感は父親よりも大きく、弟が生まれて初めて対峙する強者なのだ。
それも、成長期が終るまでは、対格差は歴然、知力体力共に、兄に追いつく事も追い抜く事も出来やしない。
そんな絶対の強者の存在、それが『兄』なのだ。

兄弟の刷り込みを、身を以て知っているダイキは、兄にどうしても逆らう事が出来ない。
反抗すれば、その後に、どんな報復が待っているかも知れない。
兄弟という無法地帯に君臨する兄の存在は絶対で、どんな非常識、非人道的な暴挙であろうとも、弟はそれを甘んじて受けなくてはいけないし、しかもそんな絶体絶命的窮地から助け出してくれる者など、どこにも居ないという事を経験上わかっている。(お母さんに泣きつける歳で無い事も重々承知)

震える手で前を隠したダイキが、唇を噛み締めて俺の前で立ち止まった。
それでも、ダイキは精一杯の抵抗を示し、俺と1m程の間隔を保つ。
いつもは冷たい表情のダイキが、今は、目元を真っ赤に染めて、その目に涙まで浮かべて、悔しそうに俺を睨んでいる。
そんな顔を見せられて、思わず口元が弛みそうになって、俺は慌てて口を開いた。
「あの、な。どこの家とか知らねえけど・・。兄弟で、ヤってる奴なんていっぱいいるし。・・てか、それ、お前知って、『じゃあ俺も』ってなるワケ?」
俺の言葉にダイキは衝撃を受け、呆然と目を見開いた。
「兄弟で・・いっぱい?」
それ絶対嘘だろ・・!と、無言で問いつめるダイキの視線を、俺は真っ向から受け止めた。
嘘は言ってない。そういうサイト結構あるし。(実際の兄弟かわかんねえけど)
それに問題はそこじゃない。
ダイキが、『他の家でもヤってるから自分もヤってもいい』って思うのかって話だ。
それが、ダイキにとって兄弟とか男同士とかって垣根を超える免罪符になるなら、それでいい。
だけど、そんな、ダイキの『右に倣え』の考えに、俺は無性に腹が立ってきた。
俺はダイキが好きなだけ。
だから、お前に触りたいだけ。
だけど、お前は違うのかよ。
俺だけかよ。
俺だけが、こんなにお前の事欲しがって、駄々こねてんのかよ。
「お前だって勃ってたじゃん。ヤりたくならねえ?」
顔を真っ赤にしたダイキが自分のTシャツの前を下に引っ張って伸ばしている。
その手を退けさせて、もう一度スウェットを引き下げた。
「にいちゃ!」
既に完全に勃起したダイキの性器。
充血した勃起が、下着超しにも腹にぴったりとくっついて、そそり立っているのが見てわかる。
それを下着の上から舌で舐め上げた。
唇と舌で甘く咬んで、上下してやる。
「ア・・ッヤメっ~~っにいちゃ・・っ」
「黙っとけ」
涙声で抵抗するダイキに冷たく言い放ち、夢中でダイキの形に唇を這わせた。
「~~ダメっダメ・・!マジで・・やばいって、こんなのっ~~~にいちゃんっっ」
俺は今にも下着の外に飛び出しそうな勃起を何度も掌で撫で、その先端の部分を布越しに咥え舌を動かした。
「にいちゃんっ・・にいちゃんっ・・にいちゃんっ」
ダイキの苦しそうな掠れ声で呼ばれて自分も勃起してくる。

この甘え声・・!
やべえのはこっちだっつーの・・っ

ついにダイキの下着をズリ下げようとした瞬間。
ダイキはそれが外に飛び出す瞬間に、両手で握るように隠してしまう。
「テメ・・なに隠して」
手を放せと言いかけて、口が止まる。
ダイキの指の間から真っ白な粘液が溢れ、下へ下へと雫が滴り落ちていた。
「あ・・っあぁ・・っ」
ダイキがブルブルッと背中を震わせた。
ダイキの苦しそうに口元を食いしばった恍惚の表情、白く濡れた指先。
俺の手は自然と、自分のズボンを下着ごとずり下げ、自分の勃起を先端からゆるく握りしめて上下に扱き出していた。
目の前の光景からは視線を外さずに、手を動かすスピードを上げていく。
その俺を眩しそうに目を細めたダイキが呼吸を浅くして見つめている。
ダイキの視線に呼吸を荒くしながら、俺はダイキにもっとよく見えるようにソファーに寄り掛かり大きく手を動かした。
「あーチクショッ出そうだ・・あー・・ダイキ・・」
俺はダイキの白く濡れた手を掴んで引き寄せた。
ダイキの手に俺の勃起を握らせて、その上から俺の手を充てがい一緒に動かす。
ダイキに直に触れられていると思うと、もう我慢なんて効かなかった。
ダイキの白濁で濡れた手が程よく滑る。
「ああっダイキっ・・!」
出る・・!
それを察したダイキが、もう片手で俺の先端を握りこんだ。
ビクビクと痙攣する勃起から噴き出した物をダイキの掌が受け止めた。
「アツ・・」
ダイキの呟きに、口元が上がる。
「やべえ・・ダイキの手スゲー気持ちイイ・・」
「これ・・ヤバいって・・兄ちゃん」
掌から溢れ出す精液がダイキの指の間を滴り落ちていく。
「しょうがねえじゃん・・好きなんだから」
どさくさ紛れの俺の告白に、ダイキが顔を上げる。
「・・エッチな事が?」
「あのな!・・ってか・・これ、嫌いな奴いるか?」
「わかんないけど・・いるかもじゃん」
「いねえよ!そんな奴・・。いいから風呂行こうぜ」
「え」
「こんなん親に見られたら怒られるだろ」
立ち上がった俺にダイキが噴き出した。
「怒られるっつーか・・卒倒するかもヨ・・」
ダイキが俺の精液で汚れた掌を見つめて小さく溜め息を吐いた。
「こんなの普通だって言っときゃいいんだよ」
「・・・絶対普通じゃないと思うよ僕」
真顔になるダイキの肩を抱き、俺達は風呂場へと向かった。
俺の告白はダイキに届かないまま。
俺達はシャワーの音に紛れ、再び互いの精を貪った。

ーオマケー

「あら。二人でお風呂?」
風呂を出て体を拭いている所へ、母親が風呂場と繋がる洗面所へと入ってくる。
ダイキは真っ赤な顔になって慌てた顔。
素直なのは、すげーカワイイんだけど、そういう態度を楽しんでる場合でも無いから、俺は適当な言い訳を口にした。
「あー俺が、ダイキが先に風呂入ってんのわかんなくて、中に入っちったから・・脱いだ服もう一回着るのメンドくて一緒入った」
「ヤダ!乱入されちゃったの?ダイキ。迷惑なお兄ちゃんね~~!!」
と大笑いし出す。
それから「ちゃんと換気しといてね」と言ってから洗濯機を回すと、さっさと洗面所から出て行ってしまった。
「なーにが迷惑だよっあのババア!」
舌打ちする俺の後ろでダイキが腹を抱えて笑っている。
「メーワクっ・・迷惑だって・・っ」
「テメエな・・」
あんなに見たかったダイキの泣き顔より、今みたいにダイキが笑ってると、心が弾むように嬉しくなる。
俺は、ダイキの濡れた髪をタオルでゴシゴシと拭いてやって、タオルの中でダイキに唇を寄せた。
重ねた唇は、これまでに無いくらいに、甘く後を引く。
唇が離れた瞬間、思わず俺は呟いた。
「もっと、ダイキ」
もっと、ずっと、長く、ダイキ。
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