たとえそれが、片思いであったとしても

池田 瑛

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7.一年十二月十八日 AB  ①

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 「山崎、ちょっといいか」

  三限目の音楽の授業の後。音楽室から教室へと莉子と一緒に戻るときだった。 

  相田君から廊下で呼び止められた。
  
  私は廊下で立ち止まる。相田君も立ち止まる。廊下から見える中庭の空に、粉雪が舞っていた。
 
 あのことだろう、と私は思った。恥ずかしくなった。

 相田君もどこか気まずそうだった。

「ミツ、先に行ってるね」と、小さな声で莉子が言った。

 莉子は、事情を知っている。莉子は、私と、そして相田君を置いて足早に去っていった。莉子には、相田君からクリスマスの日に遊びに行こうと誘われた翌日に、相談をした。

「あのさ……これ……渡しとく」

 相田君が右手で差し出してきたのは、ノートの切れ端だった。ハサミや定規で綺麗に切り取ったのではなく、手で破ったあとがあった。二つ折にしているけれど五線譜が見える。

 音楽のノートを切り取ったということなのだろう。

「それじゃあ、また」

 相田君も走って教室へと行ってしまった。私はその背中を見送る。そして、受け取った紙切れを開く。外には粉雪が舞い上がっている。風で重力に逆らって校舎を雪が登っていた。


『 
  相田健太(アイダ ケンタ)
 
 090—××××—××××

  連絡、待ってる   
             』

 相田君の携帯電話の番号らしい。『連絡、待っている』という文字は、上手ではないけれど、丁寧に書かれている。
 フリガナまで書かれているのが、すこしおかしかった。

 でも……連絡を待っていると言われても……。クリスマスに遊びい行くことを誘われて、その後、どうしたらいいのか、待ち合わせの時間とか、場所とか、色々と聞きたいことがあったのは私のほうだった。

 連絡を待っていると言われても……。私は何を連絡したらいいのだろうか。困った……。昼休みに莉子に相談しよう。
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