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坂上はづき
湯気の向こうに
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脱衣所で身体を拭いていたら、大あくびのかいながノックもなしに入ってきて、のろのろ服を脱ぎだした。中途半端に脱いでから「しまった化粧落としてない……」と周辺のダンボールをがさごそしだす。箱の中が混沌としているからか、眠気のせいか、はかどっているようには見えない。
「クレンジング、わたしの使って」
洗面台に置いていた化粧ポーチを差し出すと、かいなはふにゃ、と眠気に負けた無防備な顔で笑う。
「ありがとー、助かる」
鏡を見てるかいなの姿を、着替えながら観察する。
このところ忙しくて行けてないといいつつも、長年ダンスを続けている体はしまってる。立ち姿がきれい。芯が通っているように見える。全身にしっかりした骨と筋肉があって、とくにお腹や腕、太ももは、ぎゅっと密度の高い筋肉の上に、適度な脂肪が乗ってる。だらしない姿勢になっても、ぶよぶよしないの、とてもうらやましい。長年の鍛錬の成果だ。張り出た胸とくびれた腰のコントラストはまぶしいし、今はパンツにかくれて見えない太ももも、すっと筋が通っていて、膝でしぼられているのを知ってる。ふくらはぎの筋肉を本人は嫌がるけど、きゅっとなってる足首は本当にきれいだ。
かいなはわたしのことをきれいだとか、かわいいとか褒めてくれるけれど。……どうだろう。生命力を凝縮したようなこの子と比べると、ちっとも魅力を感じなかった。
大きな目を細めて笑うと、うっすら笑いじわができる目の端を、かいなは「まだ二十代なのにぃ」って嘆いてる。それも、よく笑って表情をくるくる変えてるからのもの。わたしにはとても魅力的に見える。
「なあに? じっと見て。はやくパジャマ着ないと風邪引いちゃうよー……ふあ」
大あくび。手で隠しもしない。
風呂上がりのほかほかした体をぎゅっと抱きしめられた。それと変わらないほどぽかぽかの寝起きのかいなの体温。埃と、かすかな汗の匂いがする。そっか、昼間結構動いたもんね。ふと、身体の芯が熱を持つのを感じたけれど、かいなはそんなわたしの気持ちには気付くわけもなく、「じゃ、先寝ちゃってね」と残し、風呂に入っていった。
◆
週末、かいなの部屋かわたしの部屋で互いに料理を持ち寄って、ときたま晩酌をして一緒に過ごすようになって、もう三ヶ月経つ。こんな日がくるなんて、夏頃、幸人さんとお別れして疲れていたわたしは想像もしなかったな。
かいなは、料理教室に通っただけあって、おしゃれで美味しいものをいっぱい作る。横文字の料理がメイン。浩二さん――かいなの元夫。新婚三ヶ月目からかいなのことをほったらかしにしたという。修行僧なのかな。……わたしは言えた立場じゃないか――に少しでも喜んでほしかったんだよね、ってちょっと傷ついた顔して、一緒にキッチンに立つわたしに言ったっけ。
わたしの作る、おばあちゃん仕込みの、手間はかかるけれど地味めの料理をかいなは「美味しいっなにこれ美味しい滲みる~」とか大げさに褒めてぱくぱく食べてくれるんだけど、それがとても嬉しい。お酒はあんまり得意じゃないのに、かいなとふたりの晩酌は大好きだ。
こうやってお互いの生活の場に踏み込む関係になれたことも嬉しい。
しみじみしながら、布団を敷く。
かいなが結婚後に買ったというダブルベッドは、旧居で処分してきたから、いまこの家にはシングルサイズの客布団一組しかない。それを丁寧に整えて、わたしは小さく息をついた。これでかいなも横になれるかな。
布団にもぐりこみ、電気を落として、スマホをチェックする。とくに連絡する相手もいないから、すぐに手持ち無沙汰になってしまった。
うっすらとした眠気が頭に霧をかける。お風呂の方から聞こえてくるシャワーの音がよけい、それを拍車かける気がした。眠ってしまおうか、と思いながらも寝返りを打ち、眠気に耐える。
それにしても、かいな、シャワー長い。交代でお風呂に入って、もう二十分? ……いや、三十分はかかってる。もとから入浴が短いかいなだ、もう出てきてもいいころなんだけれど。まだかな。
そわそわしてしまうのも、仕方ないと思う。
先週は体調的な理由で、わたしの方がかいなに応えられなくて、その前はかいなの都合でできなかった。こういうのを、ご無沙汰というのか。
かいなと付き合うまで感じもしなかった体の芯の疼き。このタイミングでじりじり腰の奥にそれを感じる。さっきのハグが引き金だったかも。
好奇心旺盛で気持ちいいことが大好きなかいなに、全身の思いもよらなかったところに宿る快感を引きずり起こされてしまってから、わたしはおかしい。
望まれるままに肌を合わせて、男の人とはしなかったようなはしたない格好をしたり、恥ずかしいことをさせられたりするのが、どうしても気持ちよくなってしまった。かいなのせいだ。
自分で自分を慰めることを覚えたのも、かいなに絶頂を味わわされてから。しかも、かいなの目の前でそれをしたこともある。死ぬほど恥ずかしかったけれど、かいながどうしても見たいと請うから、断りきれなかった。わたしの恥ずかしい姿を見たあとかいなは、なにかひと仕事終えたかのように「がんばったねええらいえらい」と褒めてくれた。それで、そのあとはいつもより優しくわたしのことを抱いてくれて……。
なに考えてるんだろう。自分のピンク色の思考に恥ずかしくなって、そろりと布団から這い出た。
まだシャワーの音はやまない。まさか、具合でも悪いの? 眠ってしまった?
そっと脱衣所に踏み込んだ。
「は……ぁあん」
ぴた、と足が止まった。
押し殺した、すすり泣きのような声。でも、泣いてるんじゃない。あのときの、感極まったようなかいなの声が、シャワーの音にまぎれて聞こえる。
「ん……ぅ……あっ」
この状況がどういうものか、自慰というものを知った今のわたしには、理解できた。
かーっと頬に血が集まる。まさか、こんなところで、恋人が自分を慰めているところに出くわすなんて。気まずさを覚えながらも、つい、その痴態を想像してしまう。椅子の上で足をゆるく開いて、シャワーを当てて……、もしくは風呂のヘリに浅く腰掛けて、自分の指で?
ふと、先月の記憶が鮮明に甦った。かいなと小旅行で泊まった宿の部屋付きの露天風呂で、わたしたちは声を殺して触れ合った。あんな場所で、どうかしてたとしか思えないけれど、わたしの手に余る豊かな胸を惜しげもなく天に向けて突き出すようにして、自分の性器を暴くわたしの指を感じて、きゅっと唇を噛み締め声を押し殺すかいなは、きれいだった。潤んだ目で、自分がされていることをじっと見つめていた。首筋に、伸びかけの髪が貼り付き、動くたびに締まった腹筋がきゅっと陰影を変える。目で、触れてほしいとねだられ、わたしは彼女が腰を捩る箇所を探し当て、執拗にそこを責めつづけた。
そのあとは部屋で、キスをしながら揺蕩うように愛しあった。馬鹿なことをしておきながら、すごく満たされた気持ちになったのだ。最初に抱き合ったときみたいに。
すりガラス風のアクリルの折戸の向こうの人影に、声をかけようとして、……やめた。
布団に戻り、かいなのまくらに背を向け横向きになる。
自分の、あの部分がじくじく疼いている。触れてほしいと。
そして、胸の奥も、じくじくと痛んでいた。
かいな。
どうしてひとりでしてたんだろう。
わたしがここにいるのに。いつもだったら、誘ってくれるのに。もしかして、……もしかして、わたしに飽きてしまったのかな。事後、ため息をついて早々にベッドを出ていった男たちみたいに。
――なんつーか、期待はずれだよな。不満そうな顔ばっかり。そんなに俺とするのイヤ?
たしかに、気が進まなかったのにベッドを共にしようとしたわたしが悪かったのかもしれない。痛いのを我慢して受け止めるので精一杯で、サービスとかしてる余裕がなかった。
頭の片隅で、いつもかいなのことを考えていて、相手に違和感を覚えていた。相手に失礼だとはわかってた。その罪悪感もあって閉じてしまってる体での、他の人とのセックスは苦行だった。男性器を挿入されると出血することもあった。もともと、狭いのかもしれない。かいなに、心底甘えて優しくされて抱かれるときにそんなことはないのに。
ごめん、セックス苦手でと幸人さんに正直に告げると、嘲笑されたっけ。
――今までしてもらうの当たり前できたんだろ。
いま思えば、あの人だって女性から奉仕されることに慣れていて、行為が雑でも許されてたんだろう。わたしをほぐそうとか、一切しなかったもの。
そこまで辛辣なことを言ったのは彼ひとりだけだったが、他の人も結局似たような理由を告げてわたしから離れていった。相性が悪いから、一緒にいていつも楽しくなさそうだから、話してみたらなんか違った、観賞用――。
みんな勝手にわたしに期待して失望して離れていく。わたしに見切りをつけて、去っていく。
かいなも、そうだったらどうしよう。わたしに飽きたんだったら。わたしと一緒にいるのが、イヤになってしまったんなら。
不安になると、思考が暴走してしまう。悪い方へ悪い方へ考えてしまう。
昨晩の片付けで、きついこと何度も口にしたのもダメだったのかな。この前のデートで、人前で手をつないだのが本当は嫌だったのかな。前回のセックスでなにか幻滅させるようなことしちゃったのかな。
ぐるぐる、考えているとシャワーの音が止み、しばらくしてかいなが部屋に入ってきた。
「……はづき寝ちゃった?」
囁くような呼び掛けに、わたしは答えなかった。目をつぶって、息を殺す。
かいなは、なにも言わず、するりと布団に潜り込んできて、わたしに背を向け寝転んだ。
わたしは明け方まで眠れなかった。
「クレンジング、わたしの使って」
洗面台に置いていた化粧ポーチを差し出すと、かいなはふにゃ、と眠気に負けた無防備な顔で笑う。
「ありがとー、助かる」
鏡を見てるかいなの姿を、着替えながら観察する。
このところ忙しくて行けてないといいつつも、長年ダンスを続けている体はしまってる。立ち姿がきれい。芯が通っているように見える。全身にしっかりした骨と筋肉があって、とくにお腹や腕、太ももは、ぎゅっと密度の高い筋肉の上に、適度な脂肪が乗ってる。だらしない姿勢になっても、ぶよぶよしないの、とてもうらやましい。長年の鍛錬の成果だ。張り出た胸とくびれた腰のコントラストはまぶしいし、今はパンツにかくれて見えない太ももも、すっと筋が通っていて、膝でしぼられているのを知ってる。ふくらはぎの筋肉を本人は嫌がるけど、きゅっとなってる足首は本当にきれいだ。
かいなはわたしのことをきれいだとか、かわいいとか褒めてくれるけれど。……どうだろう。生命力を凝縮したようなこの子と比べると、ちっとも魅力を感じなかった。
大きな目を細めて笑うと、うっすら笑いじわができる目の端を、かいなは「まだ二十代なのにぃ」って嘆いてる。それも、よく笑って表情をくるくる変えてるからのもの。わたしにはとても魅力的に見える。
「なあに? じっと見て。はやくパジャマ着ないと風邪引いちゃうよー……ふあ」
大あくび。手で隠しもしない。
風呂上がりのほかほかした体をぎゅっと抱きしめられた。それと変わらないほどぽかぽかの寝起きのかいなの体温。埃と、かすかな汗の匂いがする。そっか、昼間結構動いたもんね。ふと、身体の芯が熱を持つのを感じたけれど、かいなはそんなわたしの気持ちには気付くわけもなく、「じゃ、先寝ちゃってね」と残し、風呂に入っていった。
◆
週末、かいなの部屋かわたしの部屋で互いに料理を持ち寄って、ときたま晩酌をして一緒に過ごすようになって、もう三ヶ月経つ。こんな日がくるなんて、夏頃、幸人さんとお別れして疲れていたわたしは想像もしなかったな。
かいなは、料理教室に通っただけあって、おしゃれで美味しいものをいっぱい作る。横文字の料理がメイン。浩二さん――かいなの元夫。新婚三ヶ月目からかいなのことをほったらかしにしたという。修行僧なのかな。……わたしは言えた立場じゃないか――に少しでも喜んでほしかったんだよね、ってちょっと傷ついた顔して、一緒にキッチンに立つわたしに言ったっけ。
わたしの作る、おばあちゃん仕込みの、手間はかかるけれど地味めの料理をかいなは「美味しいっなにこれ美味しい滲みる~」とか大げさに褒めてぱくぱく食べてくれるんだけど、それがとても嬉しい。お酒はあんまり得意じゃないのに、かいなとふたりの晩酌は大好きだ。
こうやってお互いの生活の場に踏み込む関係になれたことも嬉しい。
しみじみしながら、布団を敷く。
かいなが結婚後に買ったというダブルベッドは、旧居で処分してきたから、いまこの家にはシングルサイズの客布団一組しかない。それを丁寧に整えて、わたしは小さく息をついた。これでかいなも横になれるかな。
布団にもぐりこみ、電気を落として、スマホをチェックする。とくに連絡する相手もいないから、すぐに手持ち無沙汰になってしまった。
うっすらとした眠気が頭に霧をかける。お風呂の方から聞こえてくるシャワーの音がよけい、それを拍車かける気がした。眠ってしまおうか、と思いながらも寝返りを打ち、眠気に耐える。
それにしても、かいな、シャワー長い。交代でお風呂に入って、もう二十分? ……いや、三十分はかかってる。もとから入浴が短いかいなだ、もう出てきてもいいころなんだけれど。まだかな。
そわそわしてしまうのも、仕方ないと思う。
先週は体調的な理由で、わたしの方がかいなに応えられなくて、その前はかいなの都合でできなかった。こういうのを、ご無沙汰というのか。
かいなと付き合うまで感じもしなかった体の芯の疼き。このタイミングでじりじり腰の奥にそれを感じる。さっきのハグが引き金だったかも。
好奇心旺盛で気持ちいいことが大好きなかいなに、全身の思いもよらなかったところに宿る快感を引きずり起こされてしまってから、わたしはおかしい。
望まれるままに肌を合わせて、男の人とはしなかったようなはしたない格好をしたり、恥ずかしいことをさせられたりするのが、どうしても気持ちよくなってしまった。かいなのせいだ。
自分で自分を慰めることを覚えたのも、かいなに絶頂を味わわされてから。しかも、かいなの目の前でそれをしたこともある。死ぬほど恥ずかしかったけれど、かいながどうしても見たいと請うから、断りきれなかった。わたしの恥ずかしい姿を見たあとかいなは、なにかひと仕事終えたかのように「がんばったねええらいえらい」と褒めてくれた。それで、そのあとはいつもより優しくわたしのことを抱いてくれて……。
なに考えてるんだろう。自分のピンク色の思考に恥ずかしくなって、そろりと布団から這い出た。
まだシャワーの音はやまない。まさか、具合でも悪いの? 眠ってしまった?
そっと脱衣所に踏み込んだ。
「は……ぁあん」
ぴた、と足が止まった。
押し殺した、すすり泣きのような声。でも、泣いてるんじゃない。あのときの、感極まったようなかいなの声が、シャワーの音にまぎれて聞こえる。
「ん……ぅ……あっ」
この状況がどういうものか、自慰というものを知った今のわたしには、理解できた。
かーっと頬に血が集まる。まさか、こんなところで、恋人が自分を慰めているところに出くわすなんて。気まずさを覚えながらも、つい、その痴態を想像してしまう。椅子の上で足をゆるく開いて、シャワーを当てて……、もしくは風呂のヘリに浅く腰掛けて、自分の指で?
ふと、先月の記憶が鮮明に甦った。かいなと小旅行で泊まった宿の部屋付きの露天風呂で、わたしたちは声を殺して触れ合った。あんな場所で、どうかしてたとしか思えないけれど、わたしの手に余る豊かな胸を惜しげもなく天に向けて突き出すようにして、自分の性器を暴くわたしの指を感じて、きゅっと唇を噛み締め声を押し殺すかいなは、きれいだった。潤んだ目で、自分がされていることをじっと見つめていた。首筋に、伸びかけの髪が貼り付き、動くたびに締まった腹筋がきゅっと陰影を変える。目で、触れてほしいとねだられ、わたしは彼女が腰を捩る箇所を探し当て、執拗にそこを責めつづけた。
そのあとは部屋で、キスをしながら揺蕩うように愛しあった。馬鹿なことをしておきながら、すごく満たされた気持ちになったのだ。最初に抱き合ったときみたいに。
すりガラス風のアクリルの折戸の向こうの人影に、声をかけようとして、……やめた。
布団に戻り、かいなのまくらに背を向け横向きになる。
自分の、あの部分がじくじく疼いている。触れてほしいと。
そして、胸の奥も、じくじくと痛んでいた。
かいな。
どうしてひとりでしてたんだろう。
わたしがここにいるのに。いつもだったら、誘ってくれるのに。もしかして、……もしかして、わたしに飽きてしまったのかな。事後、ため息をついて早々にベッドを出ていった男たちみたいに。
――なんつーか、期待はずれだよな。不満そうな顔ばっかり。そんなに俺とするのイヤ?
たしかに、気が進まなかったのにベッドを共にしようとしたわたしが悪かったのかもしれない。痛いのを我慢して受け止めるので精一杯で、サービスとかしてる余裕がなかった。
頭の片隅で、いつもかいなのことを考えていて、相手に違和感を覚えていた。相手に失礼だとはわかってた。その罪悪感もあって閉じてしまってる体での、他の人とのセックスは苦行だった。男性器を挿入されると出血することもあった。もともと、狭いのかもしれない。かいなに、心底甘えて優しくされて抱かれるときにそんなことはないのに。
ごめん、セックス苦手でと幸人さんに正直に告げると、嘲笑されたっけ。
――今までしてもらうの当たり前できたんだろ。
いま思えば、あの人だって女性から奉仕されることに慣れていて、行為が雑でも許されてたんだろう。わたしをほぐそうとか、一切しなかったもの。
そこまで辛辣なことを言ったのは彼ひとりだけだったが、他の人も結局似たような理由を告げてわたしから離れていった。相性が悪いから、一緒にいていつも楽しくなさそうだから、話してみたらなんか違った、観賞用――。
みんな勝手にわたしに期待して失望して離れていく。わたしに見切りをつけて、去っていく。
かいなも、そうだったらどうしよう。わたしに飽きたんだったら。わたしと一緒にいるのが、イヤになってしまったんなら。
不安になると、思考が暴走してしまう。悪い方へ悪い方へ考えてしまう。
昨晩の片付けで、きついこと何度も口にしたのもダメだったのかな。この前のデートで、人前で手をつないだのが本当は嫌だったのかな。前回のセックスでなにか幻滅させるようなことしちゃったのかな。
ぐるぐる、考えているとシャワーの音が止み、しばらくしてかいなが部屋に入ってきた。
「……はづき寝ちゃった?」
囁くような呼び掛けに、わたしは答えなかった。目をつぶって、息を殺す。
かいなは、なにも言わず、するりと布団に潜り込んできて、わたしに背を向け寝転んだ。
わたしは明け方まで眠れなかった。
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