わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

文字の大きさ
17 / 51
人間界編

17話 ギルド

しおりを挟む
 いっけなーーい遅刻遅刻!

 私はお医者をやっているナーシェ!今日はお仕事の日なのに寝坊しちゃった!てへっ!

 早くギルドに向かわないと!大変!

 そして、街角を曲がったとき、ナーシェは通行人にぶつかった。

「だ、大丈夫ですか!?すいません!急いでいたもので……!」

 ぶつかったのは女の子であった。

    ああ、こんなかわいい女の子を傷つけてしまうだなんて……私……お医者さん失格だわ……

……………………………………………………………………

「いたた……」

 朝から人にぶつかってしまうだなんてついてないな……

「すいま……」

 謝ろうとして、顔を上げると、目の前では、壁に頭を打ち付けている女性がいた。その女性は白衣を着ている。医者か……?

「ごめんなさーーーい!こんな可愛い子にぶつかってしまうだなんて……ああ神様……!私はとんでもない罪を犯してしまいました!!」

「なんだこの人……?」

――変な奴らが多い街じゃの……

「お、おい、こっちは大丈夫だから……! 落ち着いて……!」

 そう言うと、女の人は額から血を出しながら、こちらの顔の目の前まで近づいてきた。ホラーだ。

「本当に大丈夫ですか……!私を許して頂けますか……!」

「こ、こわい……」

 俺よりも、白衣を着た女性の方がよっぽど重症であろう。額から血が垂れている。

「それより!おねえさん……!血!血でてる!」

 俺は持っていたハンカチでお姉さんの額を拭いた。お姉さんはなにやら赤面していた。

「ありがとう!優しいね!君!」

「それより、そんな急いでどうしたの?大丈夫?」

 俺がそう聞くと、お姉さんは思い出したようで、急に慌て出した。

「そうだった!ギルドで!今日はモンスター調査のお仕事が!」

 俺はその言葉に興味を持った。モンスター調査? なんて楽しそうな響きだ…… 獣医師としての血が騒いだ。

「お姉さん!お…… いや、わたしたちもついていって良い!?」

「いいけど…… 急いで行くわよ!」

 というわけで、俺達はお姉さんと共に走ってギルドへと向かった。


……………………………………………………………………


「ええ~!もう行っちゃったの……!」

 どうやら、お姉さんの仲間は先に出発してしまったようだ。

「はい、遅刻してくるような奴はいらん……お前はクビだと……言付けを」

「がびーーん!」

 お姉さんは凹んでいる。

「だ、大丈夫……?」

「だ、だいじょばないかも……」

 お姉さんは凹んでいる。

 なんとか、この空気を変えねばならない!ということで、俺はギルドについてお姉さんに聞いた。

「ね、ねえ……お姉さん!わっ……私ギルドについて知りたいなーー」

 そう言うと、お姉さんはピッと立ち上がり、笑顔でこちらに来た。

「良いよ!お姉さんが案内してあげる!」

 ち、近い……
 お姉さんは俺の手を握り、ギルド内の説明をはじめてくれた。

「まずここね!ここは受付!いろんな依頼とかが来るところで……」

「ま、待って!ギルドについての仕組みから……教えて!」

「あなたギルドの事知らないの!?」

 お姉さんは驚いていた。人間界では知らないものがいないらしい。

「じゃあ、ギルドって何ってとこから始めるね!まず、モンスターは知ってる?」

「知ってるよ!」

 流石にそのくらいは分かる。
 
「普段は、人間と離れたところに住んでて、基本的には干渉し合うことはないんだけど、たまに人を襲ってしまうやつとかが出てきてね!それと戦って、人の生活を守る組織がギルドなんだよ!」

 なるほど……いわば害獣処理か……

「それで、この国シャウン王国のギルドはこの街にあるんだ!他にも、アーストリア連邦に属している国にはそれぞれギルドがあって、連携もしあってるんだよ!」

 アーストリア連邦とは、今で言うEUみたいなものらしいな…… この国、シャウンも連邦に所属している国の一つのようだ。

「それで、私はこのギルドに医者として登録してるナーシェ!人間のお医者さんだけど、生物学にも興味があって……モンスターの生態とか……そういうのの調査がメインかな!」

「お姉さん、お医者様だったんだね!」

「そうなの……失敗続きなんだけどね……」

 俺はギルドに興味が湧いた。無駄な討伐はしたくないが、やはり、獣医師としての仕事柄、害獣対策などは沢山学んでいたし、何よりモンスターの生態には非常に興味がある。

「ねえ……お姉さん!お……いや、わたしたちもギルドに登録って出来る!?」

「ええ…… 大丈夫……? 調査と言ってもモンスターに襲われることもあるのよ……!」

 お姉さんは心配そうにこちらを見ている。

「大丈夫大丈夫!この2人……シータもルートもどっちも強いし!」

 いきなりふられたからだろうか、ルートもシータも戸惑っていた。すまん。てへっ

「おっ……おい」
「こいつ……」

「そ、そうね…… 大丈夫そうね! 分かったわ……!」

 お姉さんはまだ心配していそうだったが、俺の熱意についに諦めたのだろうか、ギルドの登録場所に案内してくれた。

「ここで登録するの! すいませーん!3人新規登録希望者がいるのですが!はい!紹介者はナーシェです!はい!」

「紹介者が必要なんだね」

 俺がそう聞くと、受付のお姉さんが答えた。

「はい、身上の不明なものをいれるわけにはいきませんので、誰かの紹介でのみ入れることが決まっているんです!一応連邦の組織ですので!」

 お姉さんは続けた。

「ここに名前と出身地をお願いします!」

 出身地……?どうしようか…… レェーヴ平野でいいか

「あなたレェーヴから来たんですか!?」

 お姉さんもナーシェも驚いているようだ

「そ、そんなに驚くことなの……?」

「レェーヴからの来訪者はなかなかいませんからね……珍しいですよ!」

 な、なるほど、確かに人の文明から離れて生きている民族らしかったしな

「はい、ではこちらお渡ししますね。仮ギルドパスです」

「仮ギルドパス?」

「ギルドパスはギルドに所属していることを証明するカードですね!身分証明としても使えます!ただし、まだ本登録は出来ていないので、仮のものになります!登録希望者には講習を受けて頂いて、試験に合格すればギルドパスをお渡しする仕組みになっているんです!一部を除いては!」

「一部?」

「例えば、ナーシェさんのように医学を王立学校で学んできたような場合は、免除されます!」

「まあ講習と試験って言ってもそんなに難しくはないから大丈夫だよ!」
ナーシェはこちらを励ますように笑顔で言う。

 なるほどね……試験かおもしろい、5年ぶりくらいか?

 俺達はナーシェの案内にしたがって、ギルド登録のための講習へと向かった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

処理中です...