わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

文字の大きさ
25 / 51
九尾転生編

25話 賢者の谷

しおりを挟む
 トゥサコンを出発して、3日。俺達は賢者の谷へと到着した。

「ここから先は、連邦の管理区になります。許可証はありますか?」

 ゲートの前で、ギルドのローブをまとった2名の男性が声をかけてきた。

「王様からの許可証です!」

「確かに、どうぞお通りください。 この地域は強力なモンスターが多数おります故、お気を付けて」

 スムーズにゲートは通過した。しかし……

「で、どこに行けば良いの?」

 俺はナーシェに尋ねる。精霊を探すと言っても、広大な山々が目の前には広がっている。

「それが……私も分からないのです…… 伝説では、賢者の谷でリラ様はある村を拠点にして修行したとのことですが……」

「村?」

「そこには、魔法を使う不思議な人々が暮らしているとは聞きました。ただし、ギルドの調査では、まだ見つけられていないのです。そもそも、奥まで調査に行けていないと言うのが実情なのですが!」

 ナーシェは笑いながら答えた。手詰まりである事は確かだ。さてどうするか……

「それならば、適当に襲ってきた奴を倒しながら散策すればいいだろ!」

 ルートは物騒なことを言い出した。

「適当にいくったって、迷ったら死ぬよ。こんなに広いんだし」

 俺の言葉にルートは言葉が詰まってしまったようだ。そこでシータが何かひらめいたような表情で口を開いた。

「ナーシェよ、ここはギルドの管理区と言ったな。つまり一般人はいないと言うことだな?」

「そうですが……何か良いアイディアでも?」

 おれもその言葉で気付いた。俺とシータは笑いながら目を合わせる。

「ならば、龍となって、空から探そうではないか!」



「ほえーーーーー!私!今!龍に乗っています!!!!!ドラゴンです!!!!!!!」

 ナーシェもルートも目がきらきらと輝いている。ルカも今は人の姿へと戻っている。

「ニャニャ!息苦しいのニャ!しゃべれないのは辛いのニャ!」

「ホントにね!せっかく人間界の楽しそうなものを見つけても狐の姿だもん!」

「ルカ、テオごめんね!息苦しい思いをさせて!」

 俺に謝らせてしまったことを申し訳なく思ったのか、ルカは焦りながら言った。

「いいの!イーナ様のそばにいれたから!楽しかった!」

 ルカの笑顔は天使だ。なんという天使だろう。

「イーナよ何か見えたか?」

 シータが問いかけてきた。すまん、正直下の方は何も見てなかった。



 しばらく飛んでいると、なにやらルカが何か見つけたようだ。

「見て!イーナ様!あそこ!煙みたいなのが上がってるよ!」

 確かに、遥か遠く、山々の緑に囲まれた中に一カ所だけ、煙のようなものが立ち上がっているのが見える。

 煙が上がっていたところの近く、少し開けた場所へと、俺達は降り立った。いきなり、煙の上がっている場所に近づき姿を見せるのも、リスクが高いというシータの判断である。

「あれはなんでしょう?」

 ナーシェが示した先には、遙か昔、文明が存在していたことを示すような、朽ちた建造物の後が沢山あった。

「遺跡……みたいだね。昔はここに、文明があったのかな?」

「聞いたことがないですね…… 興味深い発見です!」

 まあ、今はその件で賢者の谷まで、来たわけではない。目下やらなければいけない事は精霊とやらを探すことである。

 緑にすっかり包み込まれた人工物と木々の間を縫っていくと、やがて開けた場所にでた。そして、目の前に広がっていた文明は、俺達にとって、何よりも見覚えのある里だった。

「妖狐……?」

 俺が呟くと同時に、ルカも同じことを呟いていたようだ。

――ふむ、こんなところにも妖狐がおったのじゃな

「サクヤ知らなかったのか?」

――聞いたことがなかったの

 すると妖狐達も気付いたようで、なにやらこちらの様子をうかがっているようだ。無理もない、こんなところに外部の者が来ることは滅多にないであろう。

――わらわは九尾じゃ!用事があって、この里へと来たのじゃ

 サクヤがそう言うと、妖狐の人達はこちらへと近づいて来た。ルカの姿を見て、信じてくれたようだ。

「九尾様よくぞ我ら妖狐の里へ。お待ちしておりました。して、ご用件はいかばかりか?」

 里長らしき妖狐が声をかけてきた。それに俺は答える。

「話せば長くなるのですが……」

 俺達は里長に、今までのいきさつを話した。そして、神通力を使いこなすために修行をしたいとの旨を。

「なるほど……九尾様が今そのような状況に置かれているとは…… やはり人間は危険でしたな…… なるほど分かりました。リラが昔修行した場所へとご案内しましょう」

 なにやら、里長は大賢者リラに関して知っているようだった。

「里長はリラ……さんについて、何かご存じなのですか?」

 すると里長は重い口を開き、答えた。

「あれは、妖狐と人間のハーフなのです。わしらの里の妖狐が1人、人間界のものと結ばれてしまい、出来た子なのです」

 なるほど、それで神通力を使えたというわけか……

「そして、あれの願いは妖狐をはじめとして、モンスターと人間の共存であったのですが……」

 里長はさらに続ける。

「モンスターと人との橋渡しをするために、あれは人間界へと下りていったのです。しかし、戻ってくることはなかった。突然に行方をくらましてしまった。すなわち、人間の世界に受け入れられることは無かったということでしょう……」

「そんな……」

 ナーシェが呟く。そして里長は続けた。

「お嬢さん、人間にも沢山の個性を持った人がいることはわしらも知っています。あなたは、きっと良い人間。それは間違いないでしょう。しかし、沢山いれば、間違ったことをするものもいる。そういうものなのです」

「しかし、九尾様が妖狐を守るためというならば、わしらは喜んで協力致します。わしらの未来をどうかよろしくお願い致します」

 なにやら、いろいろと事情がありそうな様子ではあったが、これ以上詮索出来る空気ではなかった。俺達は里長に導かれ、昔、大賢者リラが修行したと言われる場所へと向かった。

 そこは谷に沿って魔力が濃く蓄積した場所のようだ。一帯は深い霧に包まれている。

「リラは昔、ここで、精霊の力を受けたと言われております。危険故立ち入るものがいないと言われる場所。どうぞお気を付けて」

 この見えない先に、何かがいる。

 それは何となく空気で感じている。皆それは感じ取っているようだ。

 それでも……

「……いくしかない」

――イーナ気をつけるのじゃぞ

 俺達は霧の中へと足を踏み出した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...