わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

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東方編

42話 旅立ち

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 「ところで、大蛇ってどこにいるの?」



 会いに行くと決めたものの、どこへ行けば良いのか細目見当もつかない。サクヤに聞いてみたが、居場所は分からないという。こうなれば、闇社会の力を借りるしかない。







 「お久しぶりです。ミドウさん、そしてアマツ。夜叉のお力添えのおかげで、飛空船の改造もほぼ終わりました。感謝の言葉もございません」



 私は、ミドウとアマツの元に来ていた。夜叉は裏の力を利用して、得られた資金を復興に回しているらしい。あまり綺麗な方法ではないが、こういうやり方というのも必要なのかも知れない。



 「久しぶりだね~~イーナ!元気してた~~?」



 アマツがふらふらーと何処かつかみ所のない足取りで近づいてきた。意外と懐かれているのか、腕にくっついたと思ったら離れない。



 「久しいな!あれからどうだ!順調にやっているか!」



 「はい、ただ一つどうしても必要なモノが出てきてしまって……それについてお聞き出来ないかなと」



 私はミドウとアマツにこれまでのいきさつ、そして大蛇を探しているということを伝えた。すると、ミドウは少し困ったような表情を浮かべ、口を開いた。



 「大蛇の場所自体は知っているのだがな……奴らはなかなかに癖が強いから、上手く行くかはわからんぞ」



 「でも、大蛇の力が必要なんです。やってみるしかない」



 「ふむ、幸運にも、大蛇の王、蛟ミズチはタルキス王国に近い場所におる。タルキス王国を抜けた先、アレナ聖教国の外れにある死海と呼ばれる場所の近くだ。ただ、行くのもなかなか大変だぞ!人里離れた山の奥、通称迷いの森という場所を抜けなければならない。」



 「イ~ナ~、私も大蛇のことなら知ってるから、案内してあげてもいいよ~~」



 ずっとくっついていたアマツが提案をしてきた。



 「良いのアマツ?」



 「だって~~イーナについて行った方が面白そうだし~~それにちょっとした用事もあるからね~~」



 ミドウの方に視線をちらっと送る。ミドウは厳つい笑みを浮かべながら、大きな声で言った。



 「イーナ!娘の事頼んだぞ!」



 なんか言い方がちょっと引っかかったがまあ良い。心強い仲間が得られた。



 



 そしていよいよ、タルキスへ向かう時がやってきた。



 「よし、じゃあ行こうか!」



 準備は万端である。病院も新たに仲間に加わった4人に託したし、ルートやシナツ、それにシータもフリスディカに残ってくれるという。まあ何とかなるだろう。



 ただ一つ問題があるとしたら……



 「ねえ!イーナ様!どうしてルカも連れて行ってくれないの!!」



 ルカが泣きじゃくっているということだ。病気が蔓延してるって分かってるのに、ルカを連れて行く訳にはいかない、わかってくれ……ルカ。



 「ルカも行きたい!ルカも行きたい!」



 「駄目!ただでさえ治安が悪いって言われてるのに、しかも病気が流行ってるんだよ!死んじゃうかも知れないんだよ!」



 「それならイーナ様も一緒じゃん」



 痛いところをつかれた。



 「ルカちゃん!イーナちゃんはルカちゃんを危険な目に合わせないように心を鬼にして言ってるんだよ!」



 ナーシェがここでフォローを入れてくれる。今回、タルキスに行くのは私とナーシェ、そして飛空船の運転を頼んだテオ、そしてアマツである。



 「むーーー」



 ルカはむくれてしまったようだ。それでも仕方が無い。



 「出来るだけ早く帰ってくるからね!ごめんねルカ!」



 ルカは拗ねて何処かへ行ってしまった。



 そんなやりとりをしつつ、シータやルートにも荷物を飛空船に載せるのを手伝ってもらって、いよいよ準備は整った。長い旅になるかも知れない。備えは重要である。



 こうして、私達はタルキスに向かって出発したのである。







 タルキスに向けて出発してからしばらくしたのち船内で、ナーシェがワクチンについて聞いてきた。



 「そういえば、ワクチンについて詳しい話を聞いていませんでしたね!イーナちゃんに教えてもらいたいです!」



 「ワクチンとは大きく分けると基本的に2種類あるんだ。病原性を弱めた「生ワクチン」、そして 薬品とかで感染性を消失させた「不活化ワクチン」。ワクチンを打てば、病気に対する抗体ができる。そうして徐々に身体に慣らしていくんだ。これからの最初の目標は、細胞を使って、ウイルスを増やすこと、そして、ウイルスの性質を変化させることだよ」



 「ウイルスの性質?どうやって変化させるんですか?」



 「例えば人に病気を引き起こすウイルスだったとしたら、他の種類の動物の細胞で増やして、また感染させてを繰り返すんだ。そうしてれば、そのうち性質が変わってくる。要はその細胞に合わせた性質に特化していくって言えば良いのかな……」



 「人為的に病気を変化させられるなんて……」



 まあ、私自身もウイルス専門でもないし、ましてやワクチンを作ったことなんてない。大学の講義で少し習ったくらいである。自信は全くないが、やってみるしかない。なせばなる精神だ。



 「すごいねイーナ様!神様みたい!」



 聞き覚えのある声に驚いた。幻聴??いや、確かに目の前にはあの愛くるしい姿がある。



 「ルカ!?」



 「隠れてついてきちゃった……!ごめんなさい!」



 拗ねていなくなったと思っていたが、ルカは荷物の中に紛れて、こっそりとついてきたようだ。あれだけ言ったのに。



 ――む、どうするのじゃイーナ



 サクヤも少し心配そうである。



 きてしまったものは仕方無い……今更戻るというのもあれだし……どちらにせよ、病気が存在している以上、フリスディカも安全というわけではないし、同じか。それならむしろ近くにいたほうが対処のしようがある。



 「ルカ、絶対言うことは聞いてね。本当に危ないから」



 「こうなったら、イーナちゃんがルカちゃんを絶対守ってあげなきゃ駄目ですね!」



 ナーシェは嬉しそうな表情を浮かべて言った。人の気も知らないで……全く。



 4人+1匹、新たな病気の治療法を見つける旅が今はじまった。


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