わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

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東方編

43話 ラングブール

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 タルキスの国に着いた私達は、まず王であるリチャードの元へと向かった。

「王様、お待たせしました。これからしばらく、こちらの方で調査をさせて頂きます。よろしくお願いします」

「うむ、こちらこそよろしく頼むぞ」

 そういうと、リチャードは兵士長のレックスを呼び寄せた。

「レックス、お前も同行し、イーナの手助けとなるのだ」

 ありがたい提案ではある。だが、

「王様、お気持ちは大変ありがたいですが、病気の研究をすると言うことは、病気の最前線に行くと言うこと、いつ病に冒されてもおかしくはありません。それに、国内の混乱もまだ収まっていないと聞いております。ここは私達にお任せください」

 そういうと、リチャードは息を深く吸って、いたたまれないような様子で静かに口を開いた。

「むう……何から何まで、おぬしらの力に頼りきりで申し訳ないが、よろしくお願い申し上げる」
 
「イーナ様お心遣い感謝申し上げます。まずはここから東の方にあるラングブールの街に向かうといいでしょう。タルキスの中でもこの街の次に大きな街だし、何かと情報も集まりやすいのです」

「レックスさん、ありがとうございます。でも、どうしても先に一カ所だけ行かなければならないところがあるのです」

「ほう、どこだ?」

 リチャードが興味深げに聞いてきた。

「アレナ聖教国にあると言われる死海です」

 その言葉を言った瞬間に、リチャード、そしてレックスの表情が少し曇った。

「死海に行くというのか……いくらイーナ達とはいえど、無事に帰ってこれる保証はないぞ」

 リチャードの言葉に、レックスが続く。

「イーナ様、死海周辺は獰猛なモンスターたちで溢れています。それに、あそこは魔鉱石の鉱床があるところ、飛空船ではいけません。通称迷いの森と呼ばれる、大森林を抜けていかなければならないのです」

「大丈夫です。新たな仲間も増えましたし、必ず帰ってきて、治療法を見つけることをお約束いたします」

 リチャードは真剣なまなざしをこちらに向けた後、すぐに一呼吸してゆっくりと口を開いた。

「わかった、どちらにせよ一度ラングブールに向かうと良い。死海に一番近い街はラングブールだ。気をつけていくのだぞ」

 


 ラングブールは周辺を草原と城塞に囲まれた大都市であった。タルキスの東の要所として発展してきたこの街は、幾度となく周辺国の的となったらしく、その度に巨大な城塞が攻撃を跳ね返したといわれている。

「イーナ様!おっきな壁!」
「ふあーすごいです……」
「ニャー……」

 ルカもナーシェもテオも、すっかりラングブールの城壁に目を奪われている。そういう私もすっかり圧倒されていた。

「イーナ~~ラングブールから死海まではしばらく歩きだよ~~!準備をしっかりしていくよ~~!」

「シータも連れてくれば良かったかな……」

 思えば最近は、飛空船やドラゴンなど便利な移動手段に甘えてしまっていた。反省しなくては。

 とりあえずは出発のための準備を万全にする必要がある。私達はラングブールの市場へと向かった。

「ルカちゃん!この服絶対似合いますよ!」
「これ!イーナ様どうかな!」
「え~~イーナにはこれの方が似合うと思うよ~~」

 なんだか思っていた買い物とちょっと違うようだ。まあ女子が複数揃えば仕方無い……のかな?

ショッピングの時間の大半をファッションショーに費やしてしまったが仕方が無い。せっかく旅にきているのだから、ラングブールを出発する前にこういった楽しみというのも重要だ。

 すっかり夜も更けた頃、私達は買い物を終え、情報収集のためラングブールの酒場へとやってきた。

「賑わってるね!」

「なんだか、女子ばっかりで酒場と言うのも緊張しますね」

 そうだ、すっかり忘れていたが、端から見れば少女3人と女子1名+ペットである。果たして大丈夫なんだろうか、さっきから周りの目が気になる。

「おじょーちゃん!なかなか珍しい格好だね!その若さでギルドのメンバーとは!」

 なにやら、酔っ払ったおじさん達が気さくな様子でこちらへと近づいてきた。私の着ているギルドの団服が目に入ったのだろう。

「はい、シャウン王国から来ました。とある事情で死海を目指しているんですけど……」

「これまた、おっそろしいところを目指しているんだな……」

 おじさん達は目的地を聞くと、少し心配そうな表情を浮かべる。最初から反応は分かっていたので特に気にはしていない。

「あんまり行く人はいないんですか?」

「そうだな、あそこに行こうとする者は、馬鹿か命知らずのどっちかかな」

 なんだかちょっと馬鹿にされている気がするがまあいい。私は話を続ける。

「あと、おじさんつかぬ事を聞きたいんだけど……」

「なんだ?かわいこちゃんのお話ならいくらでも聞くぜ」

 そう言うとおじさんの1人が私の隣の席に腰を下ろして、手に持っている酒を飲み干した。大分酒臭かったが、私は気にせずに続けた。

「ここらへんの犬って噛まれたら危ないって聞いたんだけど……」

 やっと本題に入れた。正直死海の話は散々聞いてきたし、今更どうでもいい。

「そうだな、俺の周りでも毒犬に噛まれて死んだやつが何人もいる。先月も友人が1人亡くなった。噛まれてから、しばらくは何ともなかったんだが、急に弱りだしてな。もうそうなったら駄目さ。何をしても駄目だった」

 新しく運ばれてきた酒を一気に飲み干したおじさんは、さっきまでとは違う、少し寂しげな表情を浮かべていた。

「なんだか、辛いことを思い出させちゃったね……」

「まあ、気にするな!ラングブールの中は安全だが、外に出たら油断したら行けないぞ。毒犬は普通の犬と見分けがつかないらしいしな!せめて死海に行く前に死なないことを祈っとくぜ!あとは、人にも注意するんだな!シャウンと違ってこっちは柄の悪い奴が一杯いるからな!」

 するとおじさんはなにやら思い出したように、急に真面目な表情へと変わり、私の耳元で小さな声で一言追加した。

「忘れてたが、死海の方へに行くなら、特に聖教会の奴らには気をつけろ。絶対にアレは裏がある」
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