44 / 51
東方編
44話 死海への道
しおりを挟む
明くる日、私達は死海に向けて、ラングブールを出発した。
アマツによると、迷いの森の手前には小さな村があるらしい。まずはそこに向かうとのことだ。
草原が広がる中をひたすらに進んでいく。人通りは比較的あるものの、やはり、物騒な時勢を反映しているのか、すれ違う者は物騒な武器を携帯している。
「おい、お前さん方、最近この街道には追いはぎが現れると聞く。気をつけていくんだぞ!」
親切な旅人が時々すれ違っては声をかけてくれる。それも1人や2人ではなく、何人もである。そんなに治安が悪いのであろうか。
「イーナ様大丈夫かな?」
「まあ、いざとなれば私がなんとかするよ!それにアマツもいるし!」
「まあ~~任せてよ~~」
アマツが同行してくれるのは非常に心強い。純粋な強さだけなら、私より遙かに上であろう。
しばらく街道を歩いていると、道が二手に分かれている。整備された街道はアレナ聖教国の都市へと繋がっているようだ。今の私達の目的地の方向はもう一つの道、そこまで整備の行き届いてない、細い道の方である。
「なんだか、すっかり田舎にきた気分だね」
しばらく人間の世界で暮らしていたせいか、すっかり都会での生活に慣れてしまったようだ。思えば、レェーヴ原野もこんな感じだった。
「街も楽しいけど、ルカは自然も好きだよ!」
「ニャ!僕もなのニャ!」
少し開けた場所に出たようだ。ちょっと休憩していこうかと提案しようとした矢先、怪しげな男達が急に私達の周りを囲んできた。みな物騒な武器を何本も腰にこしらえている。
「おじょーさんたち!こんなところに何の用だい!」
男達はみな下品な笑顔を浮かべながらこちらを威嚇するかのように近づいてきた。
「おいあの子可愛くね……俺あの子にしようかな……」
「あっちの子は俺がもらうぜ」
なにやらひそひそと男達が会話をしているが、丸聞こえである。こんなに不愉快なものなのか……
――おい、イーナやってしまえ……
「ちょっと用事で……通してくださりますか?」
ここは、はやる気持ちを抑えて、ちょっとだけ会話を試みる。平和的解決は……無理そうかな……
「おい、なんて言った!もう一回言ってみてよおじょーちゃん!」
「通してくださいだってよ!」
「どうする?どうする?」
にやにやと本当に不愉快だ。そろそろ皆の我慢も限界に近づいてきている。
「もう一度だけ言います、通してください」
男達を無視して無理矢理通ろうとすると、数人の男が目の前に立ちはだかる。さっきまでとは違って武器を構えながら、その表情は少し怒りが見えた。
「おい、お前ら俺達を舐めるのもいい加減にしろよ。黙って従っていれば怪我はさせないつもりだったのによ」
「怪我をさせるつもりはなかったんですか、それは失礼しました」
「おい、お前ら、好きなだけいたぶってやれ!舐めた態度を取ったこと後悔させてやれよ」
交渉決裂である。こうなれば武力しかない。
私が龍神の剣を抜くと、男達はみな再び下品な笑みを浮かべた。
「おい、この女いっちょまえに剣なんか抜きやがった!」
男の1人がゆっくりと前に出て言い放った
「おじょーちゃん!ならまず、俺が相手をしてあげようか!」
おい、アルバスのやついきなりいきやがった。
あの女絶対無事じゃすまないな。せっかく可愛いのにもったいないぜ。
そんなひそひそ話が聞こえてくる。なにやら目の前の男はアルバスと言うらしい。
「いつでもきな!ひゃはは!」
アルバスは先に攻撃してこいと、こちらを誘っている。
「なら、遠慮なく」
龍神の剣に炎をともす。その光景をみるやいなや、男達の表情が一気に変わった。
「な、なんだ……あいつは!」
「魔女か……」
今更怖じけついたところでもう遅い。
「なに、所詮はったりだろう!」
アルバスは、そう言うと、一気にこちらに斬りかかってきた。遅い。
アルバスの攻撃をかわしたのち、その隙だらけの身体へ龍神の剣をたたき込む。次の瞬間アルバスは一気に炎に包まれた。
あいにく、殺生する趣味はないんだ。
そう言って剣を鞘に収めると、火は一気に収まった。一瞬だし、ちょっと火傷はするだろうけど死ぬことはないだろう。多分……
完全に戦意を喪失し、崩れ落ちたアルバスを見て、男達は一目散に逃げ出そうとする。
おい、アルバスがやられただと……!
やべえずらかるぞ!!
「もう遅いよ~~」
ある意味では、気の毒である。しかし因果応報といったところであろう。私が知っている中でも、トップクラスに怖い女を敵に回してしまったのである。
――ふん、口ほどにもないわい
少しだけ時間を無駄にしたが仕方無い。気が済むまで暴れているアマツを抑えて、私達は再び、死海への道を進むことにした。
アマツによると、迷いの森の手前には小さな村があるらしい。まずはそこに向かうとのことだ。
草原が広がる中をひたすらに進んでいく。人通りは比較的あるものの、やはり、物騒な時勢を反映しているのか、すれ違う者は物騒な武器を携帯している。
「おい、お前さん方、最近この街道には追いはぎが現れると聞く。気をつけていくんだぞ!」
親切な旅人が時々すれ違っては声をかけてくれる。それも1人や2人ではなく、何人もである。そんなに治安が悪いのであろうか。
「イーナ様大丈夫かな?」
「まあ、いざとなれば私がなんとかするよ!それにアマツもいるし!」
「まあ~~任せてよ~~」
アマツが同行してくれるのは非常に心強い。純粋な強さだけなら、私より遙かに上であろう。
しばらく街道を歩いていると、道が二手に分かれている。整備された街道はアレナ聖教国の都市へと繋がっているようだ。今の私達の目的地の方向はもう一つの道、そこまで整備の行き届いてない、細い道の方である。
「なんだか、すっかり田舎にきた気分だね」
しばらく人間の世界で暮らしていたせいか、すっかり都会での生活に慣れてしまったようだ。思えば、レェーヴ原野もこんな感じだった。
「街も楽しいけど、ルカは自然も好きだよ!」
「ニャ!僕もなのニャ!」
少し開けた場所に出たようだ。ちょっと休憩していこうかと提案しようとした矢先、怪しげな男達が急に私達の周りを囲んできた。みな物騒な武器を何本も腰にこしらえている。
「おじょーさんたち!こんなところに何の用だい!」
男達はみな下品な笑顔を浮かべながらこちらを威嚇するかのように近づいてきた。
「おいあの子可愛くね……俺あの子にしようかな……」
「あっちの子は俺がもらうぜ」
なにやらひそひそと男達が会話をしているが、丸聞こえである。こんなに不愉快なものなのか……
――おい、イーナやってしまえ……
「ちょっと用事で……通してくださりますか?」
ここは、はやる気持ちを抑えて、ちょっとだけ会話を試みる。平和的解決は……無理そうかな……
「おい、なんて言った!もう一回言ってみてよおじょーちゃん!」
「通してくださいだってよ!」
「どうする?どうする?」
にやにやと本当に不愉快だ。そろそろ皆の我慢も限界に近づいてきている。
「もう一度だけ言います、通してください」
男達を無視して無理矢理通ろうとすると、数人の男が目の前に立ちはだかる。さっきまでとは違って武器を構えながら、その表情は少し怒りが見えた。
「おい、お前ら俺達を舐めるのもいい加減にしろよ。黙って従っていれば怪我はさせないつもりだったのによ」
「怪我をさせるつもりはなかったんですか、それは失礼しました」
「おい、お前ら、好きなだけいたぶってやれ!舐めた態度を取ったこと後悔させてやれよ」
交渉決裂である。こうなれば武力しかない。
私が龍神の剣を抜くと、男達はみな再び下品な笑みを浮かべた。
「おい、この女いっちょまえに剣なんか抜きやがった!」
男の1人がゆっくりと前に出て言い放った
「おじょーちゃん!ならまず、俺が相手をしてあげようか!」
おい、アルバスのやついきなりいきやがった。
あの女絶対無事じゃすまないな。せっかく可愛いのにもったいないぜ。
そんなひそひそ話が聞こえてくる。なにやら目の前の男はアルバスと言うらしい。
「いつでもきな!ひゃはは!」
アルバスは先に攻撃してこいと、こちらを誘っている。
「なら、遠慮なく」
龍神の剣に炎をともす。その光景をみるやいなや、男達の表情が一気に変わった。
「な、なんだ……あいつは!」
「魔女か……」
今更怖じけついたところでもう遅い。
「なに、所詮はったりだろう!」
アルバスは、そう言うと、一気にこちらに斬りかかってきた。遅い。
アルバスの攻撃をかわしたのち、その隙だらけの身体へ龍神の剣をたたき込む。次の瞬間アルバスは一気に炎に包まれた。
あいにく、殺生する趣味はないんだ。
そう言って剣を鞘に収めると、火は一気に収まった。一瞬だし、ちょっと火傷はするだろうけど死ぬことはないだろう。多分……
完全に戦意を喪失し、崩れ落ちたアルバスを見て、男達は一目散に逃げ出そうとする。
おい、アルバスがやられただと……!
やべえずらかるぞ!!
「もう遅いよ~~」
ある意味では、気の毒である。しかし因果応報といったところであろう。私が知っている中でも、トップクラスに怖い女を敵に回してしまったのである。
――ふん、口ほどにもないわい
少しだけ時間を無駄にしたが仕方無い。気が済むまで暴れているアマツを抑えて、私達は再び、死海への道を進むことにした。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる