わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

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東方編

48話 集中 

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 道中、私はミズチとカブラに、ずっと感じていた疑問をぶつけた。

 大蛇の神通力『再生』。確かに強力ではあるが、それだけではここまで圧倒されるほどの感覚は覚えないだろう。特に、ミズチからは私なんかとは比べものにならない、圧倒的な力を感じていたのである。

「大蛇って刀を使うの?」

「大蛇の力って再生って聞きましたけど……」

 ナーシェも同じことを思っていたのか、私の質問を補足するように続けた。その問いかけにミズチが答える。

「大蛇の真の力、それはこの『刀』にある」

「刀?」

 すっかり体調が戻り元気になったルカもミズチの話に興味を持っているようだ。

「我々は、生まれたときから剣術をたたき込まれる。弱いものには死しか待っていない。だから生きるために強くなる必要がある」

 ミズチの言葉に、カブラが続く。

「私達大蛇の掟では、最も強いものがミズチの名を名乗るのです」

 生まれながらの戦闘民族。それが大蛇なのであろう。すると、ミズチがこちらをじっと見ながら話を始めた。

「見たところ、お前も剣術を使うのだな。だが、まだまだ未熟だ。お前の背中の剣が泣いているぞ」

 もちろん未熟である事は重々承知はしていたが、見ただけで強さなんて分かるのだろうか。正直、面白くはなかった。

「一度手合わせしてみるか。そうすれば、お前も大蛇の真の恐ろしさ、理解出来るだろう」

 こちらの心の内を見透かすようにミズチが言った。

――イーナよ、ずいぶん舐められているようじゃな。フォッフォ

「分かりました。ぜひ、ご指導頂きたいです」

「ふん」

 そう言うと、ミズチは私の前へと移動し、目を瞑るとゆっくりと深呼吸を始めた。何回か繰り返した後に、静かに目を開き、こちらに向けて言った。

「いつでもかかってこい」

 上着も脱がなければ、剣を抜こうとする仕草も見られない。ただひたすらに腕組みをして、仁王立ちをしているだけである。それでも目の前の、わずか数mの距離に立ちはだかるミズチからは圧倒的な威圧感を感じていた。

「では、ご遠慮なく」

 ここまで舐められては九尾の威厳もへったくれもない。龍神の剣を身体の前に構えて、私もゆっくりと深呼吸をする。集中。

 だが、集中すればするほど、ただ立っているだけのミズチに切り込む隙が見つからなかった。時間にしてわずか数秒であろうが、数分、いや数十分に感じるほどの感覚を過ごしたのである。このままでは埒があかない。

「どうした、来ないのか。心配はいらない本気でこい」

 ミズチの声に、ふと我に返った。そして一気にミズチに向けて本気で切りかかったのである。

 ここ!

 ミズチの身体に向けて真っ直ぐに剣を振る。なにやら重い感覚が剣を通じて伝わってきた。次の瞬間、私の剣はミズチの指一本で止められていたのだ。

「な……」

「集中がかけている」

 ミズチは冷静に言い放つと、背を向けてさらに続けた。

「イーナ、道中時間があるとき、少しで良ければ俺が鍛えてやろう。九尾としてお前にはもっと強くなってもらわねば困る。それに、お前に興味も湧いたしな」

「ありがとうございます……」

 ありがたい申し出ではあるが、同時にショックも受けていた。ここまで力の差があるのか……

「そんなに落胆するな。筋は良い、それに九尾の神通力、使いこなせればお前はもっとやれる」

「イーナ~~頑張ろう~~」

「アマツ、お前もだ」

ミズチの言葉に、アマツがびくっとするのが分かった。こんな様子のアマツを見たことがなかったので、少し新鮮であった。

「まあ~~がんばるよ~~うん……」

 そう言うと、アマツは私の耳元でこっそりと呟いたのである。

「イーナ~~死なないように頑張ろう……」

 

 歩いては休み、そのたびに少し稽古をつけてもらう。ミズチ曰く、呼吸から戦いが始まっているらしい。集中しているつもりではあったが、まだ注意散漫であるようだ。

 稽古を繰り返しては、ラングブールに向けて進む。迷いの森、エンケの村と、今まで歩いてきた道を戻っていく。

 そして、エンケの村を越えたあたりで、私達は再び、あいつらと会ったのである。

「おい、てめえ、こないだはよくもやってくれたな」

「親分よろしくお願いします!」

 先日絡まれたアルバスという男、そして親分と呼ばれる男。アルバスよりは少しは強そうであるが……正直面倒くさい。

「おい、てめえ、剣を抜け!」

 親分と呼ばれる男は下品な声で叫ぶ。

「おい、イーナ……」

 ミズチが静かに口を開く。

「まだ誰か来ているようだぞ」

 その様子を見ていた親分は、さらに怒りの表情を浮かべて叫んだ。

「おいてめえら何をごちゃごちゃやっている!はや……!」

 次の瞬間、親分と呼ばれる男は真っ二つになっていたのである。

「おやぶっ……」

 驚愕の顔を浮かべる間もなく、アルバスも切り捨てられた。そして、後ろにいた取り巻きの連中も次々と倒れていった。視界が開けた目の前には長身の男、そして、少年としかいいようがない、まだ10代くらいの男の子が立っていたのである。

「困るんだよ……こんな下品な連中に盗賊を騙られてはな……」

「ねえ大丈夫だった!?お姉さん達!」
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