49 / 51
東方編
49話 帰還
しおりを挟む
「ねえ、さっき盗賊を騙るっていっ……!」
「あーお姉さんそれ以上は言わないお約束だよ!」
少年が無邪気に答える。その笑顔の裏にはなにやら底知れぬ恐ろしさのようなものを感じる。
「最近はこの辺りは治安が特に悪くてね!お姉さんたちこの国の人じゃないでしょ!用事が無いなら、早く帰った方がいいと思うよ!」
そう言うと、2人の男達は消えていった。
「今の人達って……」
「彼らが本当の盗賊団だったのでしょうか?」
「たぶんね」
ナーシェと顔を見合わせながら、会話をする。ルカとテオは何が何だかよくわからないと言った困惑の表情を浮かべている。
「こっちに攻撃してきてればさっさと斬り捨てられたものを……」
ミズチさん怖い。切り捨てるなんて物騒な。そして一番怖いのが、本当にやってしまいそうなところである。
「まあまあ、向こうはこっちが目的じゃなかったっぽいし良いじゃない」
私の言葉にアマツも続いた。
「そうだよ~~私ももうちょっとのところでなんとか抑えたけど~~」
この戦闘狂達、本当に恐ろしい。なんとか道中抑えなければ。いつ暴走するのだろうかとひやひやする。
そこから、ラングブールまでは何事も無く、たどり着いた。ラングブールからは飛空船で移動である。とりあえず、今日はラングブールで泊まって、明日はタルキスへ戻るという予定だ。
「人間の街は久しぶりにきた。大分発展したものだな」
「私ははじめてきましたよ!こんな大きな街!」
ミズチとカブラは物珍しそうな顔でラングブールの街並みを眺めている。
「大蛇の里から出る事ってやっぱり滅多にないものなの?」
私の問いかけにカブラが興奮した様子で答える。
「はい、基本的に全て大蛇の街で用事は済みますし、わざわざ迷いの森を抜けて人間界に行く必要は無いですからね。大蛇の皆は人間が嫌いなものも多いですから」
「まあ知らないのも無理はないよ~~夜叉以外のみんなは基本的に人間と関わろうとしないものだし、そもそも関わるメリットもないからね~~むしろイーナが変わってるんだよ~~」
アマツが補足するように答える。元々妖狐も人里離れた場所で質素に暮らしてたし、そんなものなのかもしれない。するとさらにナーシェが説明を続けた。
「そもそも、こんなに街が発展しだしたのも連邦が出来てからなんです!平和になったことで、大きくなったというわけですね!だから、カブラさんはもとより、ミズチさんが街の様子を知らないのも無理はないです」
それにしても、ミズチとカブラはすっかりお上りさん状態である。
「ミズチさんとカブラさんは飛空船もはじめてだよね?」
私は少しわくわくしながら、2人に聞いてみた。最初に飛空船に乗ったときのことは、今も鮮明に覚えている。この2人が乗ったらどんな反応するのだろうか。
「ミズチ様!ミズチ様!見てください!地上があんなに遠くに!」
「まるで鳥になったようだな……」
明くる日、私達は飛空船での移動を始めた。ミズチは、冷静に振る舞っているようだが、興奮を隠しきれない様子がひしひしと伝わってくる。こんな時くらい素直になれば良いのに。口に出しそうになったが、流石にそれは言わなかった。
「最初の目的地はタルキスだよ!飛空船ならあっという間につくから楽しんでて!」
タルキスに寄るのは、主に2つ用事がある。一つは、王様に挨拶をすること、そしてもう一つは発症した犬をもらえるようお願いすることである。そもそも、狂犬病……ではないかも知れないが、仮にここは狂犬病であるとして、狂犬病ウイルスは、発症した動物の唾液中に多く存在する。大蛇の細胞が手に入り次第、すぐに細胞培養、そしてウイルス自体を増やせるようにする。今も疾病に苦しむ民は沢山いる。早く予防法を見つけることが今の私の使命である。
タルキスに到着した私達は、早速王宮へと向かった。しばらくぶりに会った王のリチャードは、相変わらず堂々としていて尚且つ気品があった。王に今までの進捗、そして、病気になった犬が欲しい旨を伝えると、リチャードは快く了承してくれたのである。
「うーーーー!」
「イーナ様!このワンちゃんなんだか様子がおかしいよ!」
「ニャ……怖いのニャ……」
リチャードから頂いた犬は、今にも鉄で出来た檻をかみ砕きそうな勢いでこちらへと敵意をむき出しにしている。
「おい、イーナこいつをもらってどうする気だ」
ミズチが疑問をぶつけてくる。
「おそらくこの子の唾液の中には、疾病の原因のウイルスがいるから、それを取ってきて増やすんだ。増やすために、細胞が必要なんだけどね」
ちょっと言い方が嫌らしかったかも知れない。
「なるほどな、それで大蛇の身体の一部を分けてくれと言うことか。なぜ大蛇でなければ駄目なんだ?」
「大蛇の神通力『再生』、生物学的に言えば、細胞分裂が非常に活発だからそういう機構が成り立っているのかなって思って。細胞分裂が盛んなら、増やすのも簡単だし、一番研究に適しているという仮定だよ!一番難しいのは細胞を増やすことだからね!」
そんなもんなのかと、ミズチは納得したようだ。正直分からなくても無理はない。
「そういうことならイーナ様!私でお力になれるのなら!」
ここで、カブラが嬉しい提案をしてきてくれた。ちらっとミズチの方を見ると、諦めたような様子で一言、
「九尾に貸しを作っておくというのも悪くはない」
これはOKということであろう。
「ありがとう!ミズチさん、カブラさん!絶対成功させます!」
「しかし、まずはフリスディカで温羅に会うのが先だ。その後でもいいな。どうせ、お前も来るのだろう?」
「もちろん!フリスディカの滞在の間は任せてよ!どちらにしても、ここよりも病院の方が確実に環境は良いし、戻ってからの方が嬉しい!」
「そうか、フリスディカにはお前の病院とやらもあるのだったな」
そういうと、ミズチは少し笑っていた。
こうして私達はフリスディカへと戻ったのである。
「あーお姉さんそれ以上は言わないお約束だよ!」
少年が無邪気に答える。その笑顔の裏にはなにやら底知れぬ恐ろしさのようなものを感じる。
「最近はこの辺りは治安が特に悪くてね!お姉さんたちこの国の人じゃないでしょ!用事が無いなら、早く帰った方がいいと思うよ!」
そう言うと、2人の男達は消えていった。
「今の人達って……」
「彼らが本当の盗賊団だったのでしょうか?」
「たぶんね」
ナーシェと顔を見合わせながら、会話をする。ルカとテオは何が何だかよくわからないと言った困惑の表情を浮かべている。
「こっちに攻撃してきてればさっさと斬り捨てられたものを……」
ミズチさん怖い。切り捨てるなんて物騒な。そして一番怖いのが、本当にやってしまいそうなところである。
「まあまあ、向こうはこっちが目的じゃなかったっぽいし良いじゃない」
私の言葉にアマツも続いた。
「そうだよ~~私ももうちょっとのところでなんとか抑えたけど~~」
この戦闘狂達、本当に恐ろしい。なんとか道中抑えなければ。いつ暴走するのだろうかとひやひやする。
そこから、ラングブールまでは何事も無く、たどり着いた。ラングブールからは飛空船で移動である。とりあえず、今日はラングブールで泊まって、明日はタルキスへ戻るという予定だ。
「人間の街は久しぶりにきた。大分発展したものだな」
「私ははじめてきましたよ!こんな大きな街!」
ミズチとカブラは物珍しそうな顔でラングブールの街並みを眺めている。
「大蛇の里から出る事ってやっぱり滅多にないものなの?」
私の問いかけにカブラが興奮した様子で答える。
「はい、基本的に全て大蛇の街で用事は済みますし、わざわざ迷いの森を抜けて人間界に行く必要は無いですからね。大蛇の皆は人間が嫌いなものも多いですから」
「まあ知らないのも無理はないよ~~夜叉以外のみんなは基本的に人間と関わろうとしないものだし、そもそも関わるメリットもないからね~~むしろイーナが変わってるんだよ~~」
アマツが補足するように答える。元々妖狐も人里離れた場所で質素に暮らしてたし、そんなものなのかもしれない。するとさらにナーシェが説明を続けた。
「そもそも、こんなに街が発展しだしたのも連邦が出来てからなんです!平和になったことで、大きくなったというわけですね!だから、カブラさんはもとより、ミズチさんが街の様子を知らないのも無理はないです」
それにしても、ミズチとカブラはすっかりお上りさん状態である。
「ミズチさんとカブラさんは飛空船もはじめてだよね?」
私は少しわくわくしながら、2人に聞いてみた。最初に飛空船に乗ったときのことは、今も鮮明に覚えている。この2人が乗ったらどんな反応するのだろうか。
「ミズチ様!ミズチ様!見てください!地上があんなに遠くに!」
「まるで鳥になったようだな……」
明くる日、私達は飛空船での移動を始めた。ミズチは、冷静に振る舞っているようだが、興奮を隠しきれない様子がひしひしと伝わってくる。こんな時くらい素直になれば良いのに。口に出しそうになったが、流石にそれは言わなかった。
「最初の目的地はタルキスだよ!飛空船ならあっという間につくから楽しんでて!」
タルキスに寄るのは、主に2つ用事がある。一つは、王様に挨拶をすること、そしてもう一つは発症した犬をもらえるようお願いすることである。そもそも、狂犬病……ではないかも知れないが、仮にここは狂犬病であるとして、狂犬病ウイルスは、発症した動物の唾液中に多く存在する。大蛇の細胞が手に入り次第、すぐに細胞培養、そしてウイルス自体を増やせるようにする。今も疾病に苦しむ民は沢山いる。早く予防法を見つけることが今の私の使命である。
タルキスに到着した私達は、早速王宮へと向かった。しばらくぶりに会った王のリチャードは、相変わらず堂々としていて尚且つ気品があった。王に今までの進捗、そして、病気になった犬が欲しい旨を伝えると、リチャードは快く了承してくれたのである。
「うーーーー!」
「イーナ様!このワンちゃんなんだか様子がおかしいよ!」
「ニャ……怖いのニャ……」
リチャードから頂いた犬は、今にも鉄で出来た檻をかみ砕きそうな勢いでこちらへと敵意をむき出しにしている。
「おい、イーナこいつをもらってどうする気だ」
ミズチが疑問をぶつけてくる。
「おそらくこの子の唾液の中には、疾病の原因のウイルスがいるから、それを取ってきて増やすんだ。増やすために、細胞が必要なんだけどね」
ちょっと言い方が嫌らしかったかも知れない。
「なるほどな、それで大蛇の身体の一部を分けてくれと言うことか。なぜ大蛇でなければ駄目なんだ?」
「大蛇の神通力『再生』、生物学的に言えば、細胞分裂が非常に活発だからそういう機構が成り立っているのかなって思って。細胞分裂が盛んなら、増やすのも簡単だし、一番研究に適しているという仮定だよ!一番難しいのは細胞を増やすことだからね!」
そんなもんなのかと、ミズチは納得したようだ。正直分からなくても無理はない。
「そういうことならイーナ様!私でお力になれるのなら!」
ここで、カブラが嬉しい提案をしてきてくれた。ちらっとミズチの方を見ると、諦めたような様子で一言、
「九尾に貸しを作っておくというのも悪くはない」
これはOKということであろう。
「ありがとう!ミズチさん、カブラさん!絶対成功させます!」
「しかし、まずはフリスディカで温羅に会うのが先だ。その後でもいいな。どうせ、お前も来るのだろう?」
「もちろん!フリスディカの滞在の間は任せてよ!どちらにしても、ここよりも病院の方が確実に環境は良いし、戻ってからの方が嬉しい!」
「そうか、フリスディカにはお前の病院とやらもあるのだったな」
そういうと、ミズチは少し笑っていた。
こうして私達はフリスディカへと戻ったのである。
0
あなたにおすすめの小説
転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる
初
ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。
レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。
これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる