いえ、魔術師ではなくドローンを連れた迷子のアンドロイドです。男になるのも女になるのも容易いですが異世界の紛争解決に武器を使うのは……

もーりんもも

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5 ブーロン城

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 少年は、「馬に乗っていては、いざというときに動けない」などと言って、ミッチェルの馬に乗ることを拒み、馬上のイースの横を歩いている。

 イースの愛馬は気性が荒く、見慣れぬ人間が近付こうものなら前足で飛びかからんばかりに威嚇するのだが、なぜだか少年は追い払われなかった。

 城までの帰り道、イースは少年を質問責めにした。
 少年は歩きながら飄々と答えている。

「お前、そんなすごい魔術をどこで学んだんだ?」
「生まれつき――としか言えません」

「はあん? なんだよ、才能って言いたいのか? 誰にも教わってないのに使えたのか?」
「ええ、まあ。そのようです」

「お前以外にも魔術師はいるのか?」
「さあ――。多分、私以外にはいないと思われます」

 二人の前方上空には例の銅貨が浮かんでいたが、もはやイースの目には映っていない。

「お前、歳は?」
「それは難しい質問ですね。そういう設定はありません――ああ、いえ。ええと、あなたよりは上だと思います」

「はっ! 自分の方が背が高いからかっ?」
「ええ。この身長を元に成長に要した時間を類推すれば、十五歳から十七歳くらいではないでしょうか」

「なんだよそれ? それより、お前に教われば私も魔術を使えるようになるのか?」
「いいえ。それは絶対に無理です」

「どんなに頑張ってもか?」
「どんなに頑張っても、です」

 イースはむくれて少年を睨みつけた。

「イース。もう城門が見えましたよ。ブーロン領の姫君としての顔を思い出してください」

 ミッチェルの言葉に少年が不思議な表情を浮かべたが、イースは見ていなかった。

「わかっている――ええ、わかっておりますとも」

 イースはミッチェルに向かって、まるで王族に挨拶するかのように、手綱から手を離し、スカートの裾を持ち上げる仕草をしてみせた。

「おふざけはその辺で」
「はいはい」



 ミッチェルとイースが城門に近付くと、門番が一行を立ち止まらせることのないよう城門を開けて待っていた。

 三人が城門を通った時、門番らは少年にいぶかしげな視線を送ったが、イースが何も言わないので余計なことに首を突っ込まないと決めたらしく、すぐさま城門を閉じ再び門の外を向いた。
 少年は門番が気になるらしく、門をくぐった後も何度も振り返っては彼らの背中を見ていた。

「不安になりますか? 別に君を閉じ込めようっていうんじゃないですよ」

 ミッチェルは少年を気遣って声をかけたのだが、当の本人は即座に否定した。

「いえ。不安はありません」

 城門をくぐると目に映るのは、質素だが荘厳で頑強な城と、その城をぐるりと囲む城壁だ。
 城門から城の入り口までも近いため、外界から遮断されたように感じる。

 王宮のように、真っ白な小石と可憐な花々で彩った庭園や、低木で作った迷路などはない。
 そのため、この城を初めて訪れた者は一様に緊張するのだ。

 ミッチェルの目には、少年もキョロキョロと辺りを見ながら緊張する来訪者と同じに見えた。

(強がっているのでしょうか?)

 少年は、ミッチェルの厚意を無視したばかりか、逆に神経を逆撫でするようなことを言った。

「あの城壁は三メートルほどの高さですが、城門にしか見張りはいないのですか?」

 さすがにイースも身をこわばらせた。

「君のような部外者に城の警備について質問されると、色々と勘繰ってしまいますよ。どこかに伝えるためなのかとね」

 ミッチェルの牽制に気付かないのか、少年はまるで揺るがない。

「まさか。私は警護する上で知っておきたかったまでです。護衛見習いならば当然です」
「なるほど――」

(そうきましたか。まあ間者なら、そう正面切って聞いたりはしないでしょうからね。それでも額面通り受け取ってよいものか――)

「まあ城壁を超えるのは簡単ではありませんから。城自体の警備は心配無用です。君はイースのことだけを考えてください」

 イースは自分が弱いと言われたように感じて不貞腐れている。
 ロイドはこの時代の人間が城壁を乗り越える方法を三十八通りピックアップしたところで止めた。それ以上考えたところで意味がない。


 ミッチェルとイースが馬番に馬を引き渡すと馬たちがいなないた。
 何事にもたじろがなかった少年が、びくりと反応した。

「お前、馬が怖いのか?」

 イースは魔術師の弱みを見つけたとばかりに嬉しそうだ。

「生きた状態のものは初めて見たので」
「は?」
「そういう意味不明な発言も、今後は控えてくださいね」

 ミッチェルはイースと少年の背中を押した。

「さ、遅くなりました。マルク様をお待たせしていますよ」

 城の入り口にも門番が立っており、四メートルはあろうかという堅牢な青銅の門を開けた。
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