14 / 91
14
しおりを挟む
【職人の誇りと、鑑定士の目】
翌朝、朝靄が街を包む中、ミオは商人ギルドの扉を開いた。
昨日の冒険者ギルドでの経験が、胸の奥にまだ残っていたが、今は目の前の仕事に集中しようと気持ちを切り替えていた。
「おはようございます、鑑定士のミオです。依頼があると伺って来ました」
受付に声をかけると、すぐに案内される。
「待ってたよ。今日の依頼人は工房“サリュム鍛冶舗”の職人さんだ」
案内された先には、年の頃は四十代後半、髭を整えた渋い雰囲気の男性が座っていた。
がっしりとした腕、手の甲には小さな火傷の痕――一目で“手で物を作る人”だとわかる。
「おう、お前さんが鑑定士か。俺はガラン。武具職人だ」
「はじめまして。ミオと申します。どのような鑑定を?」
彼が差し出したのは、くすんだ銀色の短剣だった。
一見して何の変哲もないように見えたが――ミオは集中し、魔力を刃に流す。
《未完成の魔銀短剣:鍛造途中の魔銀製武器。素材の純度に差があり、魔力伝導率にムラあり》
「……これは、“魔銀”ですね。でも、純度にばらつきがあって、魔力の通りが不安定です」
ガランの目が鋭くなる。
「そこまでわかるか。やっぱり本物だな……」
「えっ?」
「実は、この素材は別の職人に頼んだ鋳造品なんだが、どこか妙でな。おかげで二本折れちまった。腕の問題かと思ってたが、素材そのものだったとはな」
職人の言葉には重みがあった。
彼らは“作る”ことに命を懸ける――まさに現場の最前線の人々だ。
「俺たち職人は、材料を見極め、形にして、誰かの命を守る品に仕上げる。だが素材の目利きまでは完璧にこなせねぇ。だからこそ、あんたみたいな“目”が必要だ」
「……“目”として、ですか」
「そうだ。鑑定士ってのはただ見るだけじゃねぇ。“使う者”と“作る者”をつなぐ橋だ」
その言葉に、ミオの胸が熱くなった。
これまで“鑑定”は自分の武器と思っていたが、誰かのために使う“橋渡し”にもなれる。
「それで、だ。これから時々、俺のとこに来てくれねぇか? 作った武具の“目利き”を頼みたい」
「……はい、ぜひ!」
こうしてミオは、初めて“職人”と呼ばれる人たちと繋がった。
彼らの誇り、仕事、そして命を守る道具に関わる責任――それを少しずつ知っていく。
そして彼女の鑑定眼は、また一歩“本物”へと近づいていった。
翌朝、朝靄が街を包む中、ミオは商人ギルドの扉を開いた。
昨日の冒険者ギルドでの経験が、胸の奥にまだ残っていたが、今は目の前の仕事に集中しようと気持ちを切り替えていた。
「おはようございます、鑑定士のミオです。依頼があると伺って来ました」
受付に声をかけると、すぐに案内される。
「待ってたよ。今日の依頼人は工房“サリュム鍛冶舗”の職人さんだ」
案内された先には、年の頃は四十代後半、髭を整えた渋い雰囲気の男性が座っていた。
がっしりとした腕、手の甲には小さな火傷の痕――一目で“手で物を作る人”だとわかる。
「おう、お前さんが鑑定士か。俺はガラン。武具職人だ」
「はじめまして。ミオと申します。どのような鑑定を?」
彼が差し出したのは、くすんだ銀色の短剣だった。
一見して何の変哲もないように見えたが――ミオは集中し、魔力を刃に流す。
《未完成の魔銀短剣:鍛造途中の魔銀製武器。素材の純度に差があり、魔力伝導率にムラあり》
「……これは、“魔銀”ですね。でも、純度にばらつきがあって、魔力の通りが不安定です」
ガランの目が鋭くなる。
「そこまでわかるか。やっぱり本物だな……」
「えっ?」
「実は、この素材は別の職人に頼んだ鋳造品なんだが、どこか妙でな。おかげで二本折れちまった。腕の問題かと思ってたが、素材そのものだったとはな」
職人の言葉には重みがあった。
彼らは“作る”ことに命を懸ける――まさに現場の最前線の人々だ。
「俺たち職人は、材料を見極め、形にして、誰かの命を守る品に仕上げる。だが素材の目利きまでは完璧にこなせねぇ。だからこそ、あんたみたいな“目”が必要だ」
「……“目”として、ですか」
「そうだ。鑑定士ってのはただ見るだけじゃねぇ。“使う者”と“作る者”をつなぐ橋だ」
その言葉に、ミオの胸が熱くなった。
これまで“鑑定”は自分の武器と思っていたが、誰かのために使う“橋渡し”にもなれる。
「それで、だ。これから時々、俺のとこに来てくれねぇか? 作った武具の“目利き”を頼みたい」
「……はい、ぜひ!」
こうしてミオは、初めて“職人”と呼ばれる人たちと繋がった。
彼らの誇り、仕事、そして命を守る道具に関わる責任――それを少しずつ知っていく。
そして彼女の鑑定眼は、また一歩“本物”へと近づいていった。
1
あなたにおすすめの小説
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~
狐火いりす@商業作家
ファンタジー
事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。
そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。
「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」
神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。
露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。
やりたいことをやって好き勝手に生きていく。
なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。
人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる