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3 ヒロイン
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馬車を呼び、一人で屋敷に戻る。
エリオットにお茶会での出来事を話すと彼は笑いながらこう言った。
「アリシアが衝動的にそんなことをするとは、予想外ですね。昔から怒ると何をするか、想像もつかなかったですが。」
心外である。
エリオットとは年も近く、ほぼ幼少期からの友達のような関係だったので、二人きりの時は呼び捨てを許可している。
昔のようにタメ口でもいいと伝えたが、一応主従関係にあるということでそれは却下された。
また、彼は華奢な見た目によらず騎士団に所属しており、活発な性格なのだが、見た目のせいでおとなしい性格だと思われがちだ。
本人によるとそれを訂正するのも面倒くさいので口数の少ないクールなキャラを演じているらしい。
ずっと笑っている彼を見る。
そんなに笑う話でもないだろうに。
私も反省しているので、言い返すことはできないのだけれど。
キレると突拍子もないことをする自覚はあるので、学院に入ってからはずっと我慢していたのに。
……やってしまった。
大きなため息をつく。
「ルーキナ印のダージリンティーでも、用意して頂戴」
「かしこまりました」
ダージリンティーを一口含み、これからのことに想いを馳せる。
学院に着くと案の定、先日の一件が広まっていた。
皆、私に喋りかけるまではしないものの、こちらを見て何かを喋っている。
周りの人を乱暴に掻き分け、アランがこちらへ向かってどしどしと歩いてきた。
もう少し静かに歩けないのかしら。
「どうかいたしましたの?」
「それはお前が一番知っていることだろう!!」
掴み掛かろうとしてくるが、それをするりと避ける。
「いえ、存じ上げないわ。なんのことでしょう」
「貴様……!」
わざとらしく頭を傾げる私に、堪忍袋の尾が切れたようだった。
アランは拳を振り上げた。
咄嗟に、その腕を掴み、体全体をねじ伏せた。
彼は起きあがろうとしていたが、全体重をかけ、それを阻止する。
鍛錬もろくにしていないような彼に、格闘術を日々習っている私が負けるはずがない。
うめき声をあげているアレンを一瞥する。
こんな男に付き合っている暇はない。
「もうすぐ授業が始まるので、失礼致しますわ」
手をパンパンと鳴らし、立ち上がる。
一連の出来事見守っていた者は感嘆の息を漏らしたが、アランに睨まれると、焦ったようにこの場から離れていった。
午前の授業を受け終わり、昼食を食べにダイニングホールへと向かう。
結論からいうと、お茶会の件はともかく、今朝の件は驚くほど広まっていなかった。
王族であるアランが女一人に負けるなど彼のプライドが許さなかったのだろう。
一体、いくら使って口止めをしたのやら。
頭が痛くなる。
彼の補佐をするのも婚約者の私の役目なので、国家のお金を勝手に無駄遣いされると困るのだ。
そんなことを考えていると、実験室からアランの声が聞こえてきた。
また女性と話しているのかしら。
少し気になり、実験室を覗いてみる。
アランと喋っていたのは、シャーロッテだった。
アランが心底嬉しそうに喋る。
殿方に人気だとは聞いていたけれど、ここまでとは思わなかった。
本当に、物語のヒロインのようね。
シャーロッテと目が合った。
焦ったように彼女の瞳が揺れた。
邪魔者は退散した方がいいわね。
覗き見なんかして、馬鹿みたい。
そのまま去ろうとした時だった。
「待って!!」
突然腕を掴まれた。
腕を掴んだのは、シャーロッテだった。
エリオットにお茶会での出来事を話すと彼は笑いながらこう言った。
「アリシアが衝動的にそんなことをするとは、予想外ですね。昔から怒ると何をするか、想像もつかなかったですが。」
心外である。
エリオットとは年も近く、ほぼ幼少期からの友達のような関係だったので、二人きりの時は呼び捨てを許可している。
昔のようにタメ口でもいいと伝えたが、一応主従関係にあるということでそれは却下された。
また、彼は華奢な見た目によらず騎士団に所属しており、活発な性格なのだが、見た目のせいでおとなしい性格だと思われがちだ。
本人によるとそれを訂正するのも面倒くさいので口数の少ないクールなキャラを演じているらしい。
ずっと笑っている彼を見る。
そんなに笑う話でもないだろうに。
私も反省しているので、言い返すことはできないのだけれど。
キレると突拍子もないことをする自覚はあるので、学院に入ってからはずっと我慢していたのに。
……やってしまった。
大きなため息をつく。
「ルーキナ印のダージリンティーでも、用意して頂戴」
「かしこまりました」
ダージリンティーを一口含み、これからのことに想いを馳せる。
学院に着くと案の定、先日の一件が広まっていた。
皆、私に喋りかけるまではしないものの、こちらを見て何かを喋っている。
周りの人を乱暴に掻き分け、アランがこちらへ向かってどしどしと歩いてきた。
もう少し静かに歩けないのかしら。
「どうかいたしましたの?」
「それはお前が一番知っていることだろう!!」
掴み掛かろうとしてくるが、それをするりと避ける。
「いえ、存じ上げないわ。なんのことでしょう」
「貴様……!」
わざとらしく頭を傾げる私に、堪忍袋の尾が切れたようだった。
アランは拳を振り上げた。
咄嗟に、その腕を掴み、体全体をねじ伏せた。
彼は起きあがろうとしていたが、全体重をかけ、それを阻止する。
鍛錬もろくにしていないような彼に、格闘術を日々習っている私が負けるはずがない。
うめき声をあげているアレンを一瞥する。
こんな男に付き合っている暇はない。
「もうすぐ授業が始まるので、失礼致しますわ」
手をパンパンと鳴らし、立ち上がる。
一連の出来事見守っていた者は感嘆の息を漏らしたが、アランに睨まれると、焦ったようにこの場から離れていった。
午前の授業を受け終わり、昼食を食べにダイニングホールへと向かう。
結論からいうと、お茶会の件はともかく、今朝の件は驚くほど広まっていなかった。
王族であるアランが女一人に負けるなど彼のプライドが許さなかったのだろう。
一体、いくら使って口止めをしたのやら。
頭が痛くなる。
彼の補佐をするのも婚約者の私の役目なので、国家のお金を勝手に無駄遣いされると困るのだ。
そんなことを考えていると、実験室からアランの声が聞こえてきた。
また女性と話しているのかしら。
少し気になり、実験室を覗いてみる。
アランと喋っていたのは、シャーロッテだった。
アランが心底嬉しそうに喋る。
殿方に人気だとは聞いていたけれど、ここまでとは思わなかった。
本当に、物語のヒロインのようね。
シャーロッテと目が合った。
焦ったように彼女の瞳が揺れた。
邪魔者は退散した方がいいわね。
覗き見なんかして、馬鹿みたい。
そのまま去ろうとした時だった。
「待って!!」
突然腕を掴まれた。
腕を掴んだのは、シャーロッテだった。
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