【完結・R18】花のように微笑み、棘のように傷ついて

とっくり

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 二日続きの休日は、気がつけばハルディの部屋で始まり、そこで終わっていた。

 二人は、簡単な食事しか摂らず、日中夜問わず、互いの身体を求め合った。

 合間に交わした口づけは数えきれず、肌と肌が重なるたび、時間の感覚は溶けていった。

「ねぇ…今日も泊まって?」
 ベッドでトーマスに腕枕されながら、ハルディが甘えるように彼の顔を見上げた。

 トーマスは一瞬迷い、潤んだ瞳の彼女に、くらりとしかけたが、深く息を吸って言った。

「……着替えがないから、今日は一度帰るよ。でも、明日の夜はまた来る。約束する」

「ほんとに?」
 唇が触れるほどの距離で確かめるように問われ、彼はうなずく。

「本当だ」
 そう言ったあと、トーマスはハルディの唇を激しく求め、欲望が吐き出された秘部に手を添わす。

「あん、トーマス…また欲しくなっちゃう…」
「俺も…」

 満足げに細められた彼女の瞳を見つめながら、トーマスは欲望の塊を秘部に挿入する。快楽に蕩けたなかが、トーマスの欲望を刺激する。

「あんっ、あぁんっ、気持ちいいっ」
 トーマスの腰の動きに合わせて、ハルディは嬌声を上げ、腰を揺らす。

「っん、んん、ハルディ…」
 腰を激しく動かし、トーマスはハルディに口付ける。
 舌を絡めながら、秘部と欲望の塊も絡まり合い、卑猥な水音が室内に響いた。

「はぁん、んん、トーマス、奥にあたって気持ちいいのっ、あぁんっ、」
「ああ、ハルディ、俺も気持ちいい…」
 彼女の奥を責めたてる律動にハルディは我を忘れたのように乱れ始める。

「あっ、あっ、奥っ、奥ダメ、はぁんっ、ダメなのっ、あぁっ……!」

「ん、…何がダメなの?ハルディ」

「あぁんっ、おかしくなるっ、あぁっトーマスっ、イッちゃいそうなの…」

「ハルディ、イク時はちゃんと言うんだ」
 トーマスの律動が一層、激しくなり、ハルディの瞳は焦点が合わなくなった。

 喘ぐ声が高まり、口角から唾液が流れる。

 その流れる唾液を、舌で掠め取ったトーマスは、角度を変えてより深くハルディを貫いた。

「ああっ!!…ダメっ!あぁんっイク、イクっ!!」
 全身を痙攣させて、絶頂に達したハルディは脱力したが、トーマスは律動を続ける。

「俺も…イキそう…」

「んんっ…トーマスの熱いの、なかに欲しいのっ、あん、あんっビュッとして!」
 ハルディは蕩けた表情で懇願し、自分の両足をトーマスの腰に巻きつけた。ハルディのなかも激しく締まり、トーマスは絶頂をむかえ、吐精した。

 二人は呼吸が整うまで、抱き合ってはキスを交わし、甘い時間を過ごした。





 ハルディの部屋から、出たトーマスに、夜風がひやりと首筋を撫でた。

 石畳を歩く道すがら、断片的な記憶が次々と浮かぶ。

(……大丈夫だ。ちゃんと、できた)

 経験不足だった臆病さは、二日で別物に変わっていた。

 ハルディの反応に、緊張が自信に置き換わり、彼女の吐息が高く震えるたび、胸の内側で何かが誇らしく鳴った。

(彼女は悦んでいた。俺は、応えられた)

 その確信が、足取りを軽くする。恋が始まった実感が、身体の奥から熱を湧かせる。思わず口元が緩むのを、自分でも抑えられなかった。



 自分の部屋に到着し、扉を開けると、薄闇の中に食卓がぽつりと浮かんだ。

 皿に覆いをかけ、端に小さくたたまれた一枚の紙。

〈遅くなるなら、温め直して食べてね〉
 綺麗で丁寧な字でだった。

 冷えたシチューの表面が、月の光をかすかに映している。

 トーマスは紙片を指で挟み、しばし見つめると、そっと折り畳んで卓上に戻した。

 スプーンを手に取る。
 口に運べば、煮込みのやさしい酸味と旨みが確かに広がる。

 なのに味の輪郭はどこか遠く、心ここにあらずのまま、機械的にスプーンを往復させた。

(……このままじゃ、駄目だ)

 ふと、袖口から立ちのぼる甘い香りに気づく。

(ハルディと付き合うなら、今まで通りにはいかない)

 ジャンヌと身体の関係はもちろん、合鍵で出入りされることも――。

(いくら幼馴染で、恋愛感情はないって言ったって……)
 思わず独り言が漏れる。

(誤解されたら、嫌だ。彼女ハルディだって、気持ちのいいものじゃない)

 スプーンが皿の底を軽く叩く音が、部屋に響くのと同時に、ジャンヌの顔が脳裏に過る。

 買い物袋を下げて台所に立つ姿。
 何度も聞き慣れた「助かる」という自分の言葉に、少し恥ずかしそうに笑っていた横顔。

(話そう。次に来たとき、きちんと)

 これは筋を通すことだ、と自分に言い聞かせる。

(俺には彼女ハルディがいる。だから、今までみたいには――)

(明日、話す。ちゃんと)

 窓の隙間から入る風が、机の紙片をわずかに揺らした。

 彼は気づかない。
 部屋の片隅で、紺のリボンが静かに光を吸い、何も言わずに夜へ溶けていった。
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