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提出日の夕刻、トーマスは製図板から手を離した。
最後の寸法線に軽く指を添え、余白の埃を払う。胸の奥がすうっと軽くなった。
「よし、出そう」
巻紙を筒に収めて主任に渡す。
無駄のない視線が図面を走り、短い沈黙ののち、口角がわずかに上がった。
「よく描けている。納まりも無理がないな。——次も頼むぞ」
背後からは先輩の低い笑い声。
「やるじゃないか、トーマス。最近顔つきが変わったな」
肩を叩かれた感触が、達成感の実体になって胸に落ちる。久しく味わっていなかった、仕事の手応えだった。指先がまた線を引きたがってうずいた。
翌日から、トーマスは進んで手を挙げた、小さな仕事でも積極的に取り組んだ。
細かな修正、追加の立面、現場とのやり取りの下準備。手を動かすほど頭が澄んでいく。主任は再び図面の束を置いた。
「これも受けてくれ。期限は少し厳しいが、トーマスなら間に合うだろう」
「はい。大丈夫です。やります」
声が自然にはっきりと出た。帰路につきながら、脳裏には新しい納まりの断面が立ち上がる。石と木、荷重の逃げ、光の入り方。机に向かうのが楽しみだ——そう思えたのは、いつ以来だろう。
*
「土日は、うちに泊まりに来るんでしょう?」
甘い声が背後から絡んできた。
廊下の角で振り返ると、ハルディがため息まじりに笑っていた。
薄いショール、香り高い髪。周囲の目を気にして、トーマスは声を落とす。
「ごめん。新しい案件が入って、少し集中したいんだ。提出が続く」
「ふうん。じゃあ、私が行くわ。あなたの部屋に」
「いや——」
「集中するのはわかるけど、一日だけでもいいでしょ?ね、お願い」
彼女は指先でトーマスの袖をつまむ。
やんわり断る言葉を探す間に、彼女の下唇が震え、目が潤んだ。
「……最近、トーマスが冷たいわ。私、嫌われちゃった……?」
トーマスは反射的に首を振り、宥めるように優しく肩に触れた。
「そんなことはない。わかった、一日だけなら。明日なら良いよ」
「ほんと?!約束よ」
彼女の顔がぱっと明るくなる。
胸のどこかが小さくきしんだが、トーマスは笑って頷いた。
*
翌日の夕方。
扉を開けると、廊下に置かれた可愛らしい包みが三つ。ハルディが腕いっぱいに箱を抱えて立っていた。
「お邪魔しまーす!ねえ見て、甘い焼き菓子と、新しいお茶も持ってきたの」
部屋に招き入れるやいなや、彼女は椅子の背にショールをかけ、机の端に包みを広げ、香水瓶を窓辺にちょこんと並べた。
石鹸と木の匂いに、ふわりと濃い香りが混じる。
「この長い三角、素敵ね。何に使うの?」
「直角と勾配を取る道具だよ。触るとずれるから——」
「あっ、ごめんなさい」
軽く当たった指先で、三角定規がわずかに動く。トーマスは笑って戻し、図面を広げ直した。鉛筆を取り、今夜のノルマを頭の中で並べる。
「お茶、淹れていい?」
「ありがとう。すぐ戻る——」
湯が湧く音。次いで、菓子の箱が開く小気味よい音。甘い匂いが机へ流れ込む。
彼女は湯気の立つカップをトーマスの肘の横へ置き、椅子の背に顎をのせるようにもたれた。
「ねえ、私のこと、好き?」
「もちろん。……ただ、今は、この線を——」
「今は、何?私は置いてけぼりなの?」
ハルディはくすり、と耳元で笑い、彼の肩に頬を寄せる。体温が近い。
トーマスは定規を握りしめ、頭の中で寸法を復唱する。水平、鉛直、開口位置——。
「ねえ、今日くらい、休んでもよくない?」
「いや、提出が重なってるから。今夜はここまで進めたい」
言葉を柔らかく選ぶ。
彼女はしばらく黙っていたが、やがて椅子の背から離れ、机の縁に腰かけた。紙の端がかすかに波打つ。
「……私のこと、避けてる?」
小さな声でハルディが呟く。視線は真っ直ぐで、翳りを帯びている。トーマスは息を飲み、首を振った。
「違う。ただ、本当に集中したいんだ。君が嫌いになったとかじゃないから」
しんとした沈黙が支配した次の瞬間、彼女は笑顔を取り戻し、勢いよくトーマスの膝に腰を下ろした。
「じゃ、ここにいるわ。静かにしてるから。ほら、邪魔しない」
トーマスの膝の上で揺れる身体。鉛筆の先が紙に小さな傷を付ける。彼は慌てて鉛筆を置き、彼女の肩にそっと手を回した。
「ハルディ——」
「ん?」
顔が近い。香りが近い。彼女はトーマスの首筋に唇を寄せ、囁く。
「今日、一緒に寝たいの。あなたの部屋、初めてだもの。ね?」
理屈は、熱の前にやすやすと退いた。
気づけば図面は巻かれ、定規は元の位置に戻されていったーー。
*
「ふふふっ……愛し合うの、久しぶりね?」
トーマスの頬に両手を添え、ハルディが甘く囁いた。
さっきまで、トーマスが図面に向かっていたその椅子で、今はハルディは向かい合うように彼の膝の上に跨がっている。彼女はそのまま身を寄せ、唇を重ねてきた。
ハルディの口内を舌で舐め回しながら、トーマスは、彼女のワンピースと下着を脱がしていく。
露わになった胸の頂を吸いながら、右手はもう片方の頂を刺激する。ハルディは気持ちが良いのか甘い声で喘ぎ、身体を捩らせる。
「んんっ、あん、トーマスっ、早く挿れて。もう我慢できないの」
「ハルディ……」
固くなったトーマスの欲望を自ら秘部に当て、飲み込んでいく。
「あぁん、気持ちいい……っ、あんっ、」
ハルディはトーマスの首に両腕を絡め、激しく腰を振り続ける。
艶めかしい水音と喘ぎ声が室内を支配していく。欲望の塊と愛液で潤う秘部が絡まり合う。
彼女は快楽で瞳の焦点が合わなくなり、夢中で奥に当たるように深く腰を上下する。絶頂が近いのか、声が上擦っていく。
「はぁんっ、あん、奥、気持ちいいのっ、はぁ、はぁっ、あっダメ、んんっ」
トーマスもハルディに引きずられるように絶頂間近だった。
「ああっ、あっ、イクっ、イッちゃう!!ああ!!」
全身を震わせて強烈に膣が締まったと同時に、トーマスは吐精した。
「はぁ、はぁ、あぁ、トーマス、好き…」
彼の白濁した熱い液を受け止めたハルディはうっとりした表情で唇を寄せる。
「ああ、……ハルディ…」
彼女との口付けが終わると、快楽の余韻は引いていき、トーマスの頭の中はもう図面のことでいっぱいになっていた。
最後の寸法線に軽く指を添え、余白の埃を払う。胸の奥がすうっと軽くなった。
「よし、出そう」
巻紙を筒に収めて主任に渡す。
無駄のない視線が図面を走り、短い沈黙ののち、口角がわずかに上がった。
「よく描けている。納まりも無理がないな。——次も頼むぞ」
背後からは先輩の低い笑い声。
「やるじゃないか、トーマス。最近顔つきが変わったな」
肩を叩かれた感触が、達成感の実体になって胸に落ちる。久しく味わっていなかった、仕事の手応えだった。指先がまた線を引きたがってうずいた。
翌日から、トーマスは進んで手を挙げた、小さな仕事でも積極的に取り組んだ。
細かな修正、追加の立面、現場とのやり取りの下準備。手を動かすほど頭が澄んでいく。主任は再び図面の束を置いた。
「これも受けてくれ。期限は少し厳しいが、トーマスなら間に合うだろう」
「はい。大丈夫です。やります」
声が自然にはっきりと出た。帰路につきながら、脳裏には新しい納まりの断面が立ち上がる。石と木、荷重の逃げ、光の入り方。机に向かうのが楽しみだ——そう思えたのは、いつ以来だろう。
*
「土日は、うちに泊まりに来るんでしょう?」
甘い声が背後から絡んできた。
廊下の角で振り返ると、ハルディがため息まじりに笑っていた。
薄いショール、香り高い髪。周囲の目を気にして、トーマスは声を落とす。
「ごめん。新しい案件が入って、少し集中したいんだ。提出が続く」
「ふうん。じゃあ、私が行くわ。あなたの部屋に」
「いや——」
「集中するのはわかるけど、一日だけでもいいでしょ?ね、お願い」
彼女は指先でトーマスの袖をつまむ。
やんわり断る言葉を探す間に、彼女の下唇が震え、目が潤んだ。
「……最近、トーマスが冷たいわ。私、嫌われちゃった……?」
トーマスは反射的に首を振り、宥めるように優しく肩に触れた。
「そんなことはない。わかった、一日だけなら。明日なら良いよ」
「ほんと?!約束よ」
彼女の顔がぱっと明るくなる。
胸のどこかが小さくきしんだが、トーマスは笑って頷いた。
*
翌日の夕方。
扉を開けると、廊下に置かれた可愛らしい包みが三つ。ハルディが腕いっぱいに箱を抱えて立っていた。
「お邪魔しまーす!ねえ見て、甘い焼き菓子と、新しいお茶も持ってきたの」
部屋に招き入れるやいなや、彼女は椅子の背にショールをかけ、机の端に包みを広げ、香水瓶を窓辺にちょこんと並べた。
石鹸と木の匂いに、ふわりと濃い香りが混じる。
「この長い三角、素敵ね。何に使うの?」
「直角と勾配を取る道具だよ。触るとずれるから——」
「あっ、ごめんなさい」
軽く当たった指先で、三角定規がわずかに動く。トーマスは笑って戻し、図面を広げ直した。鉛筆を取り、今夜のノルマを頭の中で並べる。
「お茶、淹れていい?」
「ありがとう。すぐ戻る——」
湯が湧く音。次いで、菓子の箱が開く小気味よい音。甘い匂いが机へ流れ込む。
彼女は湯気の立つカップをトーマスの肘の横へ置き、椅子の背に顎をのせるようにもたれた。
「ねえ、私のこと、好き?」
「もちろん。……ただ、今は、この線を——」
「今は、何?私は置いてけぼりなの?」
ハルディはくすり、と耳元で笑い、彼の肩に頬を寄せる。体温が近い。
トーマスは定規を握りしめ、頭の中で寸法を復唱する。水平、鉛直、開口位置——。
「ねえ、今日くらい、休んでもよくない?」
「いや、提出が重なってるから。今夜はここまで進めたい」
言葉を柔らかく選ぶ。
彼女はしばらく黙っていたが、やがて椅子の背から離れ、机の縁に腰かけた。紙の端がかすかに波打つ。
「……私のこと、避けてる?」
小さな声でハルディが呟く。視線は真っ直ぐで、翳りを帯びている。トーマスは息を飲み、首を振った。
「違う。ただ、本当に集中したいんだ。君が嫌いになったとかじゃないから」
しんとした沈黙が支配した次の瞬間、彼女は笑顔を取り戻し、勢いよくトーマスの膝に腰を下ろした。
「じゃ、ここにいるわ。静かにしてるから。ほら、邪魔しない」
トーマスの膝の上で揺れる身体。鉛筆の先が紙に小さな傷を付ける。彼は慌てて鉛筆を置き、彼女の肩にそっと手を回した。
「ハルディ——」
「ん?」
顔が近い。香りが近い。彼女はトーマスの首筋に唇を寄せ、囁く。
「今日、一緒に寝たいの。あなたの部屋、初めてだもの。ね?」
理屈は、熱の前にやすやすと退いた。
気づけば図面は巻かれ、定規は元の位置に戻されていったーー。
*
「ふふふっ……愛し合うの、久しぶりね?」
トーマスの頬に両手を添え、ハルディが甘く囁いた。
さっきまで、トーマスが図面に向かっていたその椅子で、今はハルディは向かい合うように彼の膝の上に跨がっている。彼女はそのまま身を寄せ、唇を重ねてきた。
ハルディの口内を舌で舐め回しながら、トーマスは、彼女のワンピースと下着を脱がしていく。
露わになった胸の頂を吸いながら、右手はもう片方の頂を刺激する。ハルディは気持ちが良いのか甘い声で喘ぎ、身体を捩らせる。
「んんっ、あん、トーマスっ、早く挿れて。もう我慢できないの」
「ハルディ……」
固くなったトーマスの欲望を自ら秘部に当て、飲み込んでいく。
「あぁん、気持ちいい……っ、あんっ、」
ハルディはトーマスの首に両腕を絡め、激しく腰を振り続ける。
艶めかしい水音と喘ぎ声が室内を支配していく。欲望の塊と愛液で潤う秘部が絡まり合う。
彼女は快楽で瞳の焦点が合わなくなり、夢中で奥に当たるように深く腰を上下する。絶頂が近いのか、声が上擦っていく。
「はぁんっ、あん、奥、気持ちいいのっ、はぁ、はぁっ、あっダメ、んんっ」
トーマスもハルディに引きずられるように絶頂間近だった。
「ああっ、あっ、イクっ、イッちゃう!!ああ!!」
全身を震わせて強烈に膣が締まったと同時に、トーマスは吐精した。
「はぁ、はぁ、あぁ、トーマス、好き…」
彼の白濁した熱い液を受け止めたハルディはうっとりした表情で唇を寄せる。
「ああ、……ハルディ…」
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