【完結・R18】花のように微笑み、棘のように傷ついて

とっくり

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 石畳を二つ角曲がると、木の扉が連なる裏通りへ出る。

 裏通りは蜂蜜色の漆喰と灰色の石積みが交互に並び、ライリーの住む家は三階建ての長屋で、黒い板金の軒先と、雨で艶を帯びた木の窓枠が続いている。

 三階の踊り場で鍵が鳴り、扉が開く。ふわりと、乾いた木と石鹸の匂いがしていた。

「どうぞ。入って」
「お邪魔します」

 部屋は広くはないが、気持ちよく整っていた。
 窓際の机には地図と定規が端に揃い、小さな鉢植えが青い葉をのばす。壁の釘に掛かったキーリングから、錫の笛が微かに揺れた。

 手前は小さな居間。麻のカーテンごしに柔らかい光、床には素朴な織りのラグ。真鍮の卓上ランプと、黒い鉄脚のストーブの上では小ぶりのやかんが静かに温まっている。

 棚には背の低い本が十数冊――航路表、商会規程、地図帳、そして薄い植物図譜。額装された鉛筆スケッチが一枚、古い港町の輪郭を描いていた。

 奥の寝台は白いリネンで、端正に整えられ、灰色の毛布が一枚。玄関脇には磨かれたブーツと靴用のブラシ、木箱に道具がきっちり収まっている。

 小さな流しのそばには陶器のマグが二つ、茶葉の缶と蜂蜜の壺、紙袋のパンが一つ。

「……あたたかいお部屋ですね」
「物が少ないだけだよ。落ち着くから、ついこうなる」

 ジャンヌがスカーフを外すと、ライリーはそれを自然に受け取り、壁のフックへと掛けた。

 やかんが小さく鳴り、部屋は紙と紅茶と木の匂いで満ちていった。カップにお茶を注いで差し出す。

「熱くない?」
「大丈夫。美味しいです」

 言葉が自然に少なくなる。
 胸の奥の鼓動が、二人の間で同じ速さになっていくのがわかる。

「確認させて。今からでも、嫌だと思ったら言ってほしい」
「……ううん。嫌じゃないです。今日という特別な日に一緒に過ごしたいと思っていました」 
 ジャンヌの揺るがない態度に、彼はほっとしたように笑った。ランプの芯を一段落とし、距離が、半歩分だけ近づく。

「ジャンヌ」

 呼ばれて顔を上げると、唇がそっと触れた。一度、唇が離れてライリーが呟く。

「……もっと、しても?」
 ジャンヌの頬は赤く染まりながら、ゆっくりと頷く。彼女の反応を確かめたあと、再び、唇が重なる。今度は深い口付けだった。

 ライリーの舌がジャンヌの口内に入り、歯列をなぞったあと、舌を絡めていく。

「んっ、あ、ライリー……」
「ごめん、無理をさせたかな…」
 身体の芯が蕩けるような口付けにジャンヌは息継ぎのタイミングを逃して、瞳が潤む。

「……違うんです。キスが気持ちよくて…」

 恥ずかしそうに告げるジャンヌにライリーは「ああっ、なんて可愛いんだ」と思わず声に出してしまったあと、貪るように再び口付けを交わす。

 激しい口付けの後、ライリーの唇はジャンヌの首筋から鎖骨へゆっくりと落ちる。

 ライリーの唇の感触に、ジャンヌの身体は敏感に反応し、思わず艶めかしい声が漏れ出る。

「あ、あぁ、ん、」
「ジャンヌ、ベッドに行こう」

 ライリーは、ジャンヌを軽々と抱き上げ、そっとベッドに降ろす。

「ジャンヌ、本当に良いか?」
「はい。ライリー…」

 お互いに一糸纏わぬ姿となり、ベッドに横たわる。彼の腕がそっとまわり、額に触れた唇のあたたかさが、ゆっくりと全身へ広がっていく。

 ライリーの手がジャンヌの胸に触れたあと、指先が頂を刺激する。もう片方の胸には唇が寄せられ、頂を口に含む。緩急をつけた舌の動きにジャンヌの声が漏れ出る。

「あ、んんっ」
「ああ…ジャンヌ、可愛い」

 頂は口に含まれたまま、胸に触れていた手は揉みしだくように強さが加わっていく。ジャンヌは快感を拾っていき、下半身に熱が籠っていくのを感じていた。

「はぁ、あぁ、はぁ、っ」
 彼女は、熱を逃そうと両足を擦り合わせながら、息を吐く。

 胸の頂を刺激していた彼の手がゆっくりとジャンヌの身体を這うように下に降りていき、慎重に秘部に触れていく。

指先が秘部のひだを上下になぞる。じわりとした快感を受け、彼女の下半身が少し跳ねる。

「……大丈夫?」
 ライリーは熱が籠った眼差しでジャンヌを気遣い、声を掛けた。
彼女の眼差しも、彼と同じように熱が籠り、頬を上気させて頷いた。

 彼女の反応に安堵したライリーは、唇にキスをしながら、ゆっくりと指先を秘部に沈めていく。

 潤っている秘部はライリーの指を飲み込んだ。少しずつ律動を加える。

「あぁ、はぁ、んっ、ライリーっ、」
 ライリーの指の刺激がジャンヌの快感を大きなものとする。彼女は我慢できず、甘い声をあげた。

 ジャンヌの秘部はしとどに濡れ始め、いやらしい水音が室内に響く。

 自分の嬌声と秘部の水音が混ざり、ジャンヌは恥ずかしくなるが、次々と襲われる快楽に自制ができなくなっていた。

「ん、んっ、気持ちよくて、声が…恥ずかしい」
「…ジャンヌが感じてくれて嬉しい」
 ライリーが甘く囁くとジャンヌの頬がより一層に赤くなった。

 指で秘部の敏感なところを巧みに刺激され、ジャンヌは頭が真っ白になっていく。彼女の反応に気をよくしたライリーは、キスを少しずつ、下に移動していく。

やがて腹部にキスが落ちていき、舌でなぞるように、ジャンヌの両足の付け根に顔を埋めた。

「っ、ああんっ、そこはっ……ライリー」
 身をくねらせたジャンヌだったが、ライリーの熱い舌は肉襞を舐めたあと、舌先で蕾を転がしながら口に含んだ。

「あっ、あんっ、ダメっ、気持ちいいっ」

 秘部に沈められた指の律動が激しくなると同時に、蕾を吸われてビリビリとした快感が全身を支配する。

 ライリーは緩急をつけて、指と舌でジャンヌに快楽をもたらしていく。ジャンヌの瞳は焦点が合わなくなり、下半身が小刻みに震え始めた。

「あぁんっ、ライリーっ、あぁっ」
 絶頂間近のジャンヌの嬌声は大きくなっていく。
 ライリーは、彼女の蕾に甘噛みを繰り返し、指の律動を深めた。次の瞬間、彼の指がぎゅっと締め付けられ、彼女は弓形になって声を上げた。

「あっ、あん、はぁん、ああっ!!」
 絶頂をむかえたジャンヌは大きく跳ねた。ライリーは愛おしむようにジャンヌを抱きしめ、快楽の余韻にいる彼女にキスをする。

「はぁ、はぁ、ごめんなさい、わたしだけ…こんな、」
 少しずつ快楽の波が落ち着いたジャンヌは、息を整えながら恥ずかしそうにライリーの広い胸に顔を埋める。

「可愛いな…ジャンヌ。君が気持ちよくなってくれて嬉しい」

 ふわりと抱きしめられながら、ライリーは優しく囁いたあと、照れたように「まだ、大丈夫かな?」と呟いた。

 ジャンヌは顔を見上げて、ゆっくりと頷く。

 ふたつの鼓動が同じ拍を刻み、灯が淡く揺れて、夜は静かに深くなっていくのだった。

















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