一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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中等部 編

カウイの強い決意と想い

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カウイ視点の話です。


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“従兄弟との事件”から1週間が経過した。

事件後、再び関係者の親たちが集まり、先生と親たちを交えて話す機会があった。
また、先生方はアリアちゃんの家に行き、アリアちゃん自身からも事情を聞いたらしい。

そして、ついにオリュンくんと友人2人の処分が決まった。

オリュンくんは一番重い処分──“退学”になった。

「カウイに攻撃されると思って、怖くなって攻撃をしてしまった。それに……こんなに強い魔法が出るとは思わなかった。わざとじゃないんです!」
「自分の命を守る為に魔法を使ったから正当防衛だ。可哀想に……むしろオリュンの方が被害者だ!」

先生方が事情を聞いた時、オリュンくんと両親は必死にそう訴えたらしい。

ただ、その訴えは通らなかった。
カフェテリアで僕が絡まれ、オリュンくんたちに連れて行かれる姿を見た人たちの証言。
実際に現場を目撃し、当事者になったアリアちゃんの証言やケガの診断結果。

そして何より、オリュンくんの友人の内の1人が全てを証言したらしい。
お医者さんから“アリアちゃんが死んでいたかもしれない”と聞き、自分のやった事が怖くなったそうだ。

新しい事実も発覚した。
オリュンくんは過去にも《火の魔法》を使い、“森林火災”を起こした事があったのだ。
その時は《水の魔法》を使うアリアちゃんのお父さん達がすぐに駆けつけ、大事には至らなかった。
魔法を使った理由を聞かれた時「こんなに強い魔法が出るとは思わなかった。わざとじゃない」と今と同じ事を訴えてたみたいだ。

当時はボヤで済んだ事と「魔法を使おうと思って、使ったわけじゃない」という訴えが認められ、処罰などはなかったらしい。
ただし1つだけ、“今後は親の管理下においてのみ魔法を使う事”という約束をしたそうだ。

今回は2回目、さらには約束を破っているという事もあり、訴えは認められず、“退学”という処分になった。

学校ではオリュンくんを扱えきれないと判断されたんだろう。

退学後は、魔法の間違った使い方をする人たちが入る“魔法更生院”という施設へ入る事になったと聞いた。
“魔法更生院”に入る人は“危険人物”という扱いになる為、更生したと判断されるまではずっと施設で過ごし、家に帰る事は許されないらしい。

オリュンくんの友人たちはというと、証言した方は2週間の停学。
アリアちゃんを突き飛ばしたもう1人は、1ヶ月の停学処分になった。

ただ、停学処分が決まってから数日後に、学校へ退学届を出したと風のうわさで聞いた。
結局は1人だけが学校に残る形になったけど、おそらくはもう何もしてこないだろう。


ケガから1週間が過ぎた頃、ようやくアリアちゃんのお見舞いへ行ける事になった。
先に会いに行ったセレスちゃんは「昨日アリアに会ってきたわ。もう普通に歩いて元気だったわよ」と嬉しそうに話していた。

セレスちゃんに先を越されてしまったけど、僕も今日、久しぶりにアリアちゃんに会いに行く。
緊張しながらアリアちゃんの家に到着すると、メイドのサラさんが部屋へ案内してくれた。

セレスちゃんは元気だったと言ってたけど……本当だろうか?
不安な気持ちを抱えたまま、アリアちゃんの部屋に入った。

すると、そこには元気に立っているアリアちゃんの姿があった。
顔のケガもすっかり治ってる!

「カウイ、いらっしゃーいー」

いつもの明るいアリアちゃんがそこにはいた。
元気なのは嬉しい。だけど……キレイな長かった髪は、肩より短くなっていた。

「アリアちゃん、髪……」
「あぁ、これね。背中をケガした時に髪もボロボロになってて……。揃えてもらったら、この長さになっちゃった」

アリアちゃんは短くなった髪を触りながら、何事もなかったかのように笑ってみせる。
女の子なのに、つらさを微塵も感じさせないアリアちゃん。
そんな性格に今まで何度も救われてきたけど、それではダメだ。

今日、僕が来た理由をちゃんとアリアちゃんに話そう。

「今日はアリアちゃんに聞いてほしい事があるんだ」

僕の様子がいつもと違う事に気がついたのか、アリアちゃんが「うん」と真剣な表情で答える。
「まずは座って」と言われ、「ふぅっ……」と一呼吸してから椅子に座った。

「いきなりこんな事を話して驚くかもしれないけど……。僕はいつも人の目、言動ばかり気にしていたんだと思う。これを言ったら相手の気分を害してしまうんじゃないか、こういう事をしたら怒らせてしまうんじゃないかと気にしすぎて、今の自分ができてしまったんだと思う。アリアちゃんはそんな僕を優しい人だって言ってくれたけど、僕はただ臆病なだけで、ずっといろんな事から逃げていたんだと思う」

緊張で少し強張る口を、懸命に動かす。
アリアちゃんは僕から決して目をそらす事なく、話を聞いてくれている。

「僕は……今のままじゃいけないと思う。僕は変わりたい。今の自分を変えたい! そしてアリアちゃんに守ってもらうんじゃなく、アリアちゃんを守れるくらい強くなりたい。そうじゃないと僕は、今の僕をずっと許せないままだと思うんだ」

意識を失ったアリアちゃんが医務室に運ばれている姿を見た時、頭が真っ白になった。

アリアちゃんがこの世からいなくなるかもしれない。
そう思ってしまうほど、ケガの状態はひどかった。

火傷は背中の広範囲に渡り、皮膚は赤く、ボロボロにただれていた。
それだけじゃない。突き飛ばされた時にできた額の傷。体のあちこちにも擦り傷や打撲の痕があった。

僕らの学校に専属のお医者さんがいなかったら、危なかったかもしれない。
治療が終わり、命に別状はないと確認できた時は安堵すると同時に、自分の無力さに愕然とした。

僕はなんて弱い人間なんだろう。
こんな弱くて何もできない僕はアリアちゃんと一緒にいる資格があるんだろうか?

今回のようにまたアリアちゃんを巻き込んでしまう可能性だってある。
そんな僕は一緒にいていいんだろうか?
迷惑を掛けない為には離れた方がいいのかもしれない。

……アリアちゃんと離れる? 本当に?
そうした方がいいと理解しつつも、離れるなんて考えられなかったし、考えたくもなかった。


──離れたくなんかない、絶対に。
アリアちゃんが寝ている間、何度も何度も自問自答を繰り返した。

医務室で目を覚ましたアリアちゃんが、僕を心配し「無事でよかったぁ」と言った瞬間、自分の中の答えが見つかった。
なぜ一緒にいるべきじゃないと思いながらも、離れるという選択ができなかったのか。

僕はアリアちゃんが好きなんだ。

いつから恋愛感情を持つようになったかは分からないけど、最初から僕の中でアリアちゃんだけは特別だった。
ただそれは、初めてできた友達だからだと思っていた。

僕が僕である事を認めてくれた、大切な友達だから、と。

だけど違った。理由は実に簡単で単純だった。
離れるって事を考えたくないほど、僕はアリアちゃんの事が好きだったんだ。

ずっとアリアちゃんの側にいたい。その為には今のままの僕じゃダメだ。
アリアちゃんの隣にいてもいいんだと、自分で思えるくらいの男にならなきゃ……!

「変わらない限り、アリアちゃんの中で僕はずっと手のかかる友達のままだと思うから……。僕は君に頼ってもらえるくらいの男になるからね」

上手く言葉にできたかは分からないけれど、僕の気持ちは全て伝えた。
目の前のアリアちゃんの表情が、真剣なものから優しいものへと変わっていく。

「カウイにはいつも助けてもらってるけどな」
「……アリアちゃんは僕に甘いなぁ」

アリアちゃんの言葉に僕が笑うと「よかった、ようやく笑った」とアリアちゃんがはにかんだ。
ほらね、アリアちゃんはいつだって僕の事を心配してくれるんだ。

僕の話が終わった後は、少しだけ他愛もない話をした。

「男の子には分からないかもしれないけど……髪が短くなって、もの凄い楽なの!」

そう言って満面の笑顔で話すアリアちゃん。
どうせなら、思い切って僕も言ってみようかな?

「僕、ちゃんと責任とるから!」

……アリアちゃんはどんな反応をするかな?
ドキドキしながら返事を待っていると、予想の斜め上をいく回答が飛んできた。

「えっ? 責任って……カウイの髪の毛くれるの? 私の髪の色はブラウンでカウイはグレーアッシュでしょ? 全然色も違うし、いらないよー」

楽しそうにアリアちゃんがケラケラと笑う。
ち、違うよ、アリアちゃん。どうしてそういう考えになったんだろう。

……でも、それ以上はあえて何も言わなかった。
正式に告げる事があるなら、それは僕が変わった時だから。

「まだ完全には治りきっていないだろうし、今日はこれで帰るね。ばいばい、アリアちゃ……アリア」
「うん、ばい……えっ! えっ!? う、うん、ばいばい」

呼び捨てされた事に驚いた後、アリアちゃんは少し照れくさそうな顔をした。
気がついてくれて良かった。ちょっとずつでいいから、僕の事を意識してほしいな。


帰り際、アリアちゃんが見送ると言って外に出ようとしたところをエレくんに見つかり、止められた。
代わりにエレくんが見送りにきてくれた。

「話す機会なかったので言えませんでしたが、婚約の話を聞きました。アリアは、カウイさんのことを“いい友人だ”って言ってますし、結婚する気はないみたいですから。いつ婚約解消してもいいですからね」

にっこりと微笑むエレくんの表情と言葉から、ある事に気がつく。

そっか。今までエレくんはお義姉さんとして、アリアちゃんの事が大好きなんだなって思ってたけど違ったんだ。
自分の気持ちが分かると周りも見えてくるもんなんだな。

「僕から婚約を解消する事は一生ないと思うよ」

笑顔で答えつつ、手を振りながらその場を後にした。
想像通り、いつもはにっこりと笑っているエレくんの顔が歪んでいたけどね。
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