一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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中等部 編

14歳、オーンの新たな一面と知らない道

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2日目の朝。
みんなでテントを片付け、出発の準備を整える。

「ここからは森の中を歩く事になるから、みんな、枝などが当たってケガをしないよう気をつけてくれ。それと、今日は俺とアリアが先頭を歩く。アリア! 地図を見ながら、先導してくれ」
「分かりました」
「馬はヤイネとモハズに頼んでいいか?」
「分かったよー! 任せてー」

サウロさんの無駄のないテキパキした指示に、それぞれが返事をする。
火の始末等、ひと通りの確認が終わると、すぐに出発する事になった。

みんなの先頭を歩く私に、サウロさんが体調を気遣う言葉を掛けてくれる。

「初めての参加だから疲れが残っているんじゃないか? 辛かったら言えよ」
「ありがとうございます。普段から、結構鍛えてるんで大丈夫です」
「そうか。その意気だ」

私の答えに、サウロさんが「あはは」と楽しそうに笑う。
エウロの家族は明るい人ばかりだな。話していると私の気持ちも明るくなってくる。

木の根や倒木等で荒れた道を30分ほど進んだところで、サウロさんがふいに話し掛けてきた。

「えーと、アリア?」
「どうしました?」
「アリアは……エウロの事を……えーと、どう思う?」

ん? エウロ?
何かを探るような言い方をしてくるから余程の事かと思ったけど、まさかのエウロ??

「仲のいい幼なじみですね」
「……そうか」

サウロさんの歯切れが悪い。もしや、そういう意味じゃなかったのかな?

「急にどうしたんですか?」
「いや、久しぶりにエウロと会ったって話しただろう?」

そういえば、サウロさんと初めて会った日にそんな事を言ってたような……。
どこか気まずそうに視線を泳がせながら、サウロさんが話しを続ける。

「エウロがアリアの話をしていたから……それで、その、例えば、例えばだぞ!?」
「はぁ……」
「幼なじみ以上の何かはあるのか? と、思ってな」

幼なじみ以上の何か……?
あっ! 言われてみると、モハズさんが昨日「弟は俺より先に結婚するかもしれない」ってサウロさんが話してたって言ってたな。

もしかして、サウロさんもモハズさんと同様、勘違いしてるんじゃ!?

「ないですよー。サウロさんもエウロにはマイヤっていう婚約者がいる事を知ってますよね?」
「えっ! 婚約者ってアリアじゃないのか!?」
「えっ! 聞いてないんですか!?」

お互いの言葉に驚き、思わず目を見張る。

「いや、婚約者ができた事は両親から聞いていたが、名前をちゃんと覚えてなくてな。エウロの話から、勝手にアリアが婚約者だと思ってた。……違ったのか」
「はい、私じゃないです」
「そうか……。アリアは、その、好きなヤツはいないのか?」

なんか昨日も聞いたような会話だな。
調査チームの人たちはみんな、恋バナが好きなのかな?

「はい、今のところ」
「そうか……」
「私も聞いていいですか?」
「ああ」

少し残念そう? なサウロさんに構わず、私からも質問してみる。

「サウロさんって、恋人とか好きな人っていますか?」
「お、俺!?」
「はい」

すごい焦ってるなぁ。自分の恋バナは苦手なのかな?

「い、いるわけないだろ」

いるわけないんだ……。やっぱり自分の恋愛話は苦手そうだな。
今のところ、モハズさんに対しても恋愛感情はなさそうだけど、好きな人も本当にいなさそううだし……。

モハズさん! チャンスはあるよ!!

「サウロさんって自分の恋愛話になるとてんでダメですね(笑)」

少しからかいながら言うと、サウロさんに「うるさい」と軽く頭を小突かれた。
私にお兄さんがいたらこんな感じなのかなぁ。

サウロさんと楽しく会話をしていると、突然、後ろから声を掛けられた。

「サウロさん!」

振り返った先にはオーンがいた。少しだけ足早に私達の元へとやってくる。

「どうした?」
「あっ、いや……いくら危険がない場所でもあまり油断して歩かない方がいいんじゃないかと思いまして……」
「あ、ああ、そうだな。悪かった」

オーンの言う通り、先頭を歩いてた私も自覚が足りてなかったな。

「そうだね。オーン、ありがとう」
「……いや」

ちょっとだけ気まずそうにオーンが目を逸らす。

どうしたんだろう? 
きつく言いすぎたとか思ってるのかな?

その後は、周りに注意を払いつつ、サウロさんとは差し障りのない程度に会話を続けた。

「そろそろ、昼休憩にしよう」

サウロさんの一声で、各自が持っていた荷物を置き、準備に取り掛かる。

「昼食の準備は俺とビアン……それとアリアもいいか?」
「はい!」
「他のやつは馬の餌やりとケアを頼む。それが終わったら休んでてくれ」

3人で作業を振り分けながら進めていると、ふいにオーンが現れ、声を掛けてきた。

「僕も手伝っていいですか?」
「ああ、助かる。そうだな……アリア、オーンと一緒に作ってくれ」
「分かりました」

パンを切る私の横に並び、「何をすればいい?」と尋ねてくる。

「そうだなぁ。今ね、サンドイッチを作ってるんだけど、トマトを切ってもらっていい?」
「分かった」

たらいに溜めてあった水でトマトを洗いながら、少しだけ言いづらそうにオーンが口を開いた。

「さっきはごめん」
「ん?」
「注意したこと」

やっぱり、きつく言い過ぎたと思ってたんだ。
全然気にしなくていいのに。

「ああ、あれは私が悪いんだから気にしなくていいよ」
「いや、本当にそう思って言ったわけじゃないんだ。自分でも無意識に行動してしまったというか、見てるのが嫌だったというか……」
「???」
「僕は結構いじわるで、独占欲が強いのかもしれない」

いきなりのカミングアウト!!
昨日の会話から、オーンに意地悪な面がある事は何となく確信してたけど……。

急にどうしたんだろう?
……って、ん!?

トマトを切るオーンの手の動き、どう見ても『初めて包丁を持ちます!』という感じでかなり危なっかしい。
そりゃ、そうか。自分で料理をする必要がないんだから、今までやった事がないのも当たり前といえば当たり前か。

「オーン……さん? 包丁は初めて使いますか?」
「どうして急に敬語(笑)? そうだよ」

包丁を動かしながら、笑顔で私の方へ顔を向ける。

「うわぁ~、危ないから! 包丁見て、包丁!!」
「えっ? ああ、痛っ!」

ああ~、私が大声出しちゃったから切っちゃったのかも。
包丁で指を切ったオーンは、冷静に傷口を眺めている。

「切ったみたいだね」
「結構、深く切ってるじゃん! 大変! 止血! 止血!!」

焦りながらオーンの手を持ち、止血に使えそうな布を探す。
ふと隣を見ると、オーンが笑っている。

「なんで笑ってるの? 指を切っておかしくなっちゃった!?」
「いや、アリアが必死だなって思って」
「…………」

なんで、必死なのがおかしいのさっ!!

私たちのやり取りを見ていたヤイネさんが「ほほえましいですね」と言いながら、オーンの元へやってくる。

そっとオーンの手を持つと、《癒しの魔法》を使った。
ヤイネさんの手がパァッと光り、傷口が跡形もなく消えていく。

「はい、これで大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」

そっか。1人であたふたと焦ってしまったけど、ヤイネさんがいたんだった。

「ごめん、私が叫んだから手を切っちゃったよね」
「いや、そんな事ないよ。……まあ、ちょっと役得だったかな? 心配してくれてありがとう、アリア」
「……うん?」

ケガが役得って……やっぱり、さっきからどこかおかしくない!?

疑問に思いながらも、オーンに包丁の使い方を教え、無事にサンドイッチを完成させた。
予想通り、覚えは早かったな。


お昼を食べ終わった後は、再び歩き始める。
1時間ほど歩いていると、途中、道が二手に分かれている事に気がついた。

……あれ? 地図が古いのかな? それとも脇道だから地図に載せていないだけなのかな?
決して大きい道じゃないけど、左側に地図には載っていない道がある。

「サウロさん、ちょっと気になるんですが……」

私の声にサウロさんが足を止めた。
それにならうように、みんなも歩くのを止め、こちらの様子をうかがっている。

「ん? どうした?」
「この道、地図には載ってないんです」

地図を広げ、気になっている箇所を指差す。
異変を察したのか、サウロさん以外の人たちも集まってきた。

「確かに……載っていないな」
「うーん。地図に載せていないだけじゃなくて?」
「いや、俺は以前もこのルートを探索したことがあるが、地図通りの道だったはずだ」

サウロさんとモハズさんが地図を見ながら話している。
ビアンさんが頷き、ヤイネさんもサウロさんに同意した。

「私も通った事がありますが、確かにこの道は記憶にありません。かといって、地形の変化で出来たような道でもありませんね。どうしますか?」
「……そうだな」

サウロさんが考え込んでいると、その間にモハズさんが《風の魔法》を使い、ふわっと宙に浮いた。

「ここは私の出番でしょ! ぱっと飛んで様子を見に行ってみるよ」
「だ、ダメだ!」

サウロさんがすぐにモハズさんを止めたが、その声が聞こえなかったのか、やけに張り切ったモハズさんがサーっと飛んで行ってしまった。

「モハズ! くそっ!!」
「どうします? 追いますか?」

ヤイネさんの言葉にサウロさんが腕を組み、何か考え込んでいる。
無言だった時間はほんの数秒程度だったけれど、待つ間の緊張感に胸が締め付けられそうになった。

みんなが強張った表情で見守る中、サウロさんが指示を出す。

「今まで通った事のある道沿いに、不自然な道ができている。誰かが魔法で作ったか、もしくは……何にせよ、危険性が高いと思った方がいい。そんな場所にオーンとアリアを連れては行けない」

私とオーン以外のメンバーが同意するようにこくりと頷く。

「……20分だ。20分待ってもモハズが戻らない場合、何らかの危険に巻き込まれたと考えて、俺とヤイネ……」

道中ずっと穏やかな顔をしていたヤイネさんが、少し怖いくらいの真剣な表情で「はい」と返事をする。

「そして、ビアン」

サウロさんが目を向けると、ビアンさんは黙ったまま頷いた。

「3人で行く。俺たちが出発したら、リーセとオーン、アリアは元の町へ戻って、追加の調査チームと……念の為、憲兵チームも派遣してくれ。戻る分には危険は少ないはずだ。リーセ頼めるか?」
「もちろんです。オーンもアリアも全く戦えないわけではないですから……大丈夫ですよ」

サウロさんの指示にリーセさんが答える。

憲兵チームとは、国の治安を守る為の警備のような仕事をしている人たちの事で、戦闘能力が高い人だけがなれる職種だ。
前の世界でいう、警察とか自衛隊みたいなものかな。

調査チームの人たちも武術や剣術に心得のある人が多いけど、それでも危険性の高い所へ行く時は必ず、憲兵チームの人たちを連れて行くと聞いた事がある。
それくらいの危険性があるかも……って事なんだろうな。

今から20分か……。
こんなに時間が長く感じるのは初めてだ。


嫌な胸騒ぎを抱えつつ、モハズさんが無事に戻ってくる事だけをただただ祈った。 
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