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本編【シャーロット】
昇進祝いパーティー2
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アシュリー家の三男パトリックは勘付いていた。
カレンが虚偽の報告をしているかもしれないことに。
「うーん、どうしたものか」
彼は呑気だった。
真相は、シャーロットのパーティーの時にでも探れるだろう。
そもそも、カレンが報告を怠って学校生活を楽しんでいるのも悪くはないと考えていた。
成人するまでなら学校遊びをしていてもいいだろう、とも。
「カレンのお友達、どんな子なのかな~?」
カレンが言わないならその男友達に聞いてみよう。
パトリックはウキウキしながら、自分が着る予定の礼服の埃をチェックした。
パーティー当日、ロイとアリスはそれぞれ燕尾服と真紅のパーティードレスに着替え、ルッツ邸に向かった。
流石はルッツ邸。
息を呑むような広大な敷地面積だ。
その中に無数の人間が蠢いている。
至る所に「シャーロットおめでとう」の文字が張り出され、お祝いムード全開である。
この盛り上がりように、ロイもアリスも呆気にとられた。
しばらくすると、薄青色のドレスを纏ったカレンが合流した。
走ってきたのか、ぜいぜいと肩で息をしている。
「ロイくん、アリスちゃん、来てくれてありがとう」
「別にいいですよ」
「いいってことよ」
「あと、パトリック兄さんが……」
カレンが後ろを振り向いたその先に、「やあ」と右手を上げて会釈する青年の姿が見えた。
カレンとは違う髪色。
金髪だった。
長い金髪を後ろで束ね、軍服の礼装を身に付けている。
ロイの想像以上の甘いマスクで女性らしい優美な印象だ。
パトリックは合流すると、にこやかに右手を差し出してアリスとロイと順番に握手を交わした。
「初めまして。カレンの兄のパトリックです」
「アリスです」
「ロイです」
「うわー。二人とも美男に美女だなあ~。ねえ? カレン? うちも負けてないけどね?」
どんなことを切り出されるか警戒を怠ったつもりもないが、その呑気な一言に呆気にとられてしまった。
カレンも苦笑している。
「カレンの学校生活の様子、いろいろ聞きたいんだけど、いいかな?」
「はい。もちろん」
ロイは無難に答えた。
「こんなところで立ち話もアレだし、中に入って食べ物でも取って来よっか」
「はい」
「でもその前に、シャーロットに挨拶しないとね」
パトリックの提案に三人とも同意した。
意外と普通の青年だ、とロイもアリスも感じた。
紳士的で、何より礼儀正しい。
カレンも、そんな二人の反応を察していた。
ロイたちは、パトリックの一挙手一投足を気にしながら、ルッツ邸の建物まで足を進めたのだった。
カレンが虚偽の報告をしているかもしれないことに。
「うーん、どうしたものか」
彼は呑気だった。
真相は、シャーロットのパーティーの時にでも探れるだろう。
そもそも、カレンが報告を怠って学校生活を楽しんでいるのも悪くはないと考えていた。
成人するまでなら学校遊びをしていてもいいだろう、とも。
「カレンのお友達、どんな子なのかな~?」
カレンが言わないならその男友達に聞いてみよう。
パトリックはウキウキしながら、自分が着る予定の礼服の埃をチェックした。
パーティー当日、ロイとアリスはそれぞれ燕尾服と真紅のパーティードレスに着替え、ルッツ邸に向かった。
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息を呑むような広大な敷地面積だ。
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「ロイくん、アリスちゃん、来てくれてありがとう」
「別にいいですよ」
「いいってことよ」
「あと、パトリック兄さんが……」
カレンが後ろを振り向いたその先に、「やあ」と右手を上げて会釈する青年の姿が見えた。
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長い金髪を後ろで束ね、軍服の礼装を身に付けている。
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パトリックは合流すると、にこやかに右手を差し出してアリスとロイと順番に握手を交わした。
「初めまして。カレンの兄のパトリックです」
「アリスです」
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「こんなところで立ち話もアレだし、中に入って食べ物でも取って来よっか」
「はい」
「でもその前に、シャーロットに挨拶しないとね」
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意外と普通の青年だ、とロイもアリスも感じた。
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